日本IBM事件最高裁判決
本日、日本IBM(会社分割労働契約承継)事件の最高裁判決が出されました。
早速最高裁のHPに掲載されています。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100712111131.pdf
結論は地裁、高裁の判断を維持。本判決で重要なのは、リンク先の判決文で下線を引いてあるところですが、
>上記立場にある特定の労働者との関係において5条協議が全く行われなかったときには,当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるものと解するのが相当である。
また,5条協議が行われた場合であっても,その際の分割会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため,法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には,分割会社に5条協議義務の違反があったと評価してよく,当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるというべきである。
本件においては
>被上告人の5条協議が不十分であるとはいえず,上告人らのC社への労働契約承継の効力が生じないということはできない。
と、原告の訴えを退けています。
この問題、日本の会社分割労働契約承継法のもとになったEUの企業譲渡指令をなまじ知っていると、話がまるでひっくり返っているのがとても面白いところです。
本ブログでも、4年前にこういうエントリを書いたことがあり、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_1578.html(労働契約承継とEU指令)
>要するに、ジョブ中心社会を前提にして、ジョブが移るのなら人も移せ、というのを基本ルールにしつつ、行きたくない労働者はいかなくてもいいよ、しかしもとのところにいられるとは限らないよ、というのがEUのルールなんです。だから、これを、メンバーシップ社会でメンバーシップを維持しろという裁判に使えるかというと、いささか首をかしげるところはあるんですね。
この問題は、突っ込めば突っ込むほど、ジョブ型労働社会とメンバーシップ型労働社会の違いが浮き彫りになるテーマです。緻密な研究もいいですが、そういう観点からの法社会学的研究も面白いと思いますよ。若い研究者の皆さま。
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