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2010年7月12日 (月)

『現代の理論』10夏号

03299231 『現代の理論』2010年夏号を頂きました。ありがとうございます。それにしても、選挙当日の7月11日発売の雑誌で「菅新政権の戦略はこれだ」という特集を組むというのもすごいですね。

やはり、山口二郎氏の「政権交代をなぜ生かせなかったのか-民主党における『失敗』の考察」が(ある意味で彼自身に跳ね返る性質を持った批判であるだけに)読ませます。

>最後に、政権交代以後の政治の混迷と、政治学の責任について触れておきたい。この点に関しては、民主党の背後、あるいは周辺で政権交代に向けた理論を整備した学者の言説にも原因があると私は考える。特に、佐々木毅氏及び21世紀臨調が政権交代至上主義を民主党に注入したことは重大であった。政権交代によって資源配分や外交戦略をどう変えるかという問いを一切捨象し、手続き制度に関する政治改革の文脈に政権交代を封じ込めたのは、21世紀臨調の議論の最大の特徴である。

>政党に対してマニフェストをつくれという説教はするが、どういうマニフェストをつくれという議論は一切議論しない。また、北川正恭氏の悪影響で、マニフェストにおいて過度に数値目標が重視される一方、政策を統合する基本的な思想については何も語らないというきわめて歪な議論が横行した。

まったくその通りだと思いますが、しかしまさに「民主党の背後」の一番近いところにいた山口二郎氏にその責任の一端がないというわけにもいかないように思います。

ここは、なかなか難しいところではあって、社会科学者でいえば政治学者、新聞記者でいえば政治部記者というのは、経済、社会、労働、教育・・・・といった専門分野じゃないジェネラリストという面があるわけですが、だからこそそれら専門分野における考え方の違いが政治的対立として反映されてくるというその構造をきちんと理解して、各専門分野における対立構造を踏まえた形で議論をしたり記事を書いたりしてもらわないと、単なる政局を追っかけているだけの底の浅い代物になってしまうわけです。山口氏のいう「政権交代至上主義」ってのがまさにその底の浅さの典型であるわけですが、そこで「何のための政権交代?」と自らに問い返せるかどうかで、政治学者や政治部記者の値打ちが決まってくるのだろうと思います。失礼な言い方ですけど。

あと、やはり『現代の理論』といえばこの人、小林良暢さんの「最小不幸社会の雇用・年金戦略-消費税10%の内容が問われる」が正論を述べています。

>雇用における「不幸を最小にする」には、長期失業者に対して職業訓練を実施して就職・再就職に結びつけることである。長妻厚生労働大臣は「職業訓練バウチャー」制度を検討しているらしい。しかし、今公的職業訓練に必要なことはそういう小手先のものではなく、その担い手である訓練機関の強化と教育内容の拡充である。

それから、自治労の秋野純一氏の「地方分権の現在にはらむもの」が、分権原理主義の危うさを見事に摘出しています。

>社会保障の現場では、「地域主権」が前提にしているような抽象的な「市民」は存在しない。

>社会保障分野における財源の一般財源化や分権の先行事案によれば、公立保育所の実施水準や福祉事務所のケースワーカー配置など、多くの分野で実施水準が低下しているという事実があるが、地方政治におけるパワーゲームの現実のなかでは、ある意味で当然といえる。簡単に言えば、声の小さいところが削られるのである。こうした「事実」を踏まえた議論は少なく、分権原理主義的な「あるべき論」が横行している。

>道具に過ぎない「分権」の自己目的化を見直し、個々の政策決定に当たっては、常に「誰のための分権か?」を問い、政策を実現するために手段としての有効性を検証することが必要である。また、抽象的な「強い市民」による民主主義ではなく、当事者主権やステークホルダー民主主義、地域横断的な中間団体の自治を含む多様で重層的な民主主義が求められる。

>トップダウンによる分権など語義矛盾であり、政策策定過程においても民主主義が保障されなければならない

これもことごとく賛成。そして、この地方分権こそ、政治学者や政治部記者の「罪」が一番重い分野ではないかと思います。福祉や教育が切り捨てられることが分かっていて、「地域主権」などという美名でごまかしてきたのですから。

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