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2010年7月27日 (火)

JIL雑誌8月号は「健康と労働」がテーマ

New 日本労働研究雑誌の8月号は「健康と労働」が特集テーマです。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/

提言高齢者の健康と労働  (129KB)
日野原 重明(聖路加国際病院理事長)

解題健康と労働  (197KB)
編集委員会

論文中高齢者の健康状態と労働参加
濱秋 純哉(内閣府経済社会総合研究所研究官)・
野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部第二室長)

健康状態と労働生産性
湯田 道生(中京大学経済学部准教授)

安全(健康)配慮義務論の今日的な課題
和田 肇(名古屋大学大学院法学研究科教授)

健康上の問題を抱える労働者への配慮――健康配慮義務と合理的配慮の比較
長谷川 珠子(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター研究員)

座談会多様な健康状態の労働者と人事管理
大内 伸哉(神戸大学大学院法学研究科教授)・
佐野 嘉秀(法政大学経営学部准教授)・人事担当者 3名・労組役員 3名

紹介職場復帰をいかに支えるか――リワークプログラムを通じた復職支援の取り組み
有馬 秀晃(品川駅前メンタルクリニック院長)

98歳の日野原先生に「高齢者の健康と労働」を語らせるというのは、あまりにもあまりな企画なので、ちょっとスルーさせていただいて。法律関係は2本、和田先生と長谷川珠子さん。

和田先生のは安全配慮義務についての過不足のないい解説ですが、最後のところで労働者の自己保健義務論(正確には労働者が自分の健康をきちんと維持する義務を守らなければ、その範囲で使用者の安全配慮義務が免責されるという議論)に対する反論が述べられ、さらに労働者のプライバシーや自己決定との関係が論じられています。和田先生はこの問題については反自己責任派でありまして、

>労働契約関係においてその保護の重要性が増していることを否定するものではないが、それを強調しすぎると、使用者の安全配慮義務の縮減と労働者の自己責任の拡大につながることになるが、果たしてそれが正しい方向なのか。労働者の安全健康に配慮する責任は、第一次的には使用者にあることをないがしろにするような形で労働者の自己責任を強調することには、慎重でなければならない。

と明確にその立場を示されています。

この問題についてはわたくしも、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/karoushi.html(「過労死・過労自殺と個人情報」『季刊労働法』第208号)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/karoshiprivacy.html(「過労死・過労自殺とプライバシー」『時の法令』6月15日号)

などで解説したことがあります。

ただ、現時点では、危険有害業務のような古典的な安全衛生分野と、過労死過労自殺のような分野では基準を変えるべきではないかという風に考えるようになっています。前者であれば、指揮命令関係のもとで労働者を危険有害業務に従事させる以上、指揮命令する側が最大限に安全健康を配慮すべき義務があって当然でしょうが、後者の場合業務自体は危険でも有害でもなく、ただそれを限度を超えてやり過ぎた(やらせすぎた)ことが問題を発生させるのですから、安全配慮義務などという迂遠な話ではなく、本来労働時間規制が対象とすべき問題なのではないか、と考えるからです。

逆にいえば、安全配慮義務論が過労死過労自殺問題にこれだけ使われるという他国には見られない事態そのものが、「どれだけ長く働かせてもそれ自体は全然問題はない」という長時間労働カルチャーを前提にした現象なのではないかという反省も必要なのではないか、と思うのです。使用者の責任を「労働者の健康に配慮しながら長時間労働させる」義務ではなく、その前段階にそもそも「長時間労働させない」義務があるべきだろう、と。安全配慮義務論とは、「企業主義の時代」に生まれた必要悪だったのではないか、という評価もそろそろあってよいように考えるのですが。

もう一つ、長谷川珠子さん(現在、高障機構障害者職業総合センター研究員)のは、この健康配慮義務と、アメリカやEUの障害者差別法制における合理的配慮とを比較するというユニークな論文です。

長谷川さんの文体とはあえてまったく違えて皮肉ったらしく書くと、

<<日本の使用者は合理的配慮は不明確だとか負担が増えるとかいって合理的配慮に否定的だけど、日本の健康配慮義務の方がよっぽど広範かつ高度なんじゃ?要するに、健康を配慮してもらえるのは正社員だけだから、一時的なコストは長期雇用の必要経費になるけど、合理的配慮は募集採用段階から正規非正規みんなやんなきゃいけないから負担だってこと?>>

という感じでしょうか。いやこれはもしかしたらまったく趣旨に反しているかも知れません。是非雑誌論文自体をお読みください。

次の人事担当者、労組役員各3人と大内先生、佐野さんの座談会はとても面白いです。こういう問題が企業の中で収まらなくなると、個別労働紛争として噴出してきたりする。私たちの研究素材でも、メンタルヘルスに問題があるケースはとても多いのです。

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