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2010年6月 8日 (火)

連合総研『参加と連帯のセーフティネット』

Htbookcoverimage_2 連合総研より、埋橋孝文・連合総研編『参加と連帯のセーフティネット 人間らしい品格ある社会への提言』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b62993.html

>参加保障・社会連帯型社会政策の実現に向けて

いま必要なのは、生活上のリスクに直面しても、すべての人びとが必ずいずれかのセーフティネットで受け止められ、ディーセントな(品格ある)労働と生活に参加できるようなしくみではないだろうか。
本書は、参加保障・社会連帯型社会政策の実現に向けて、中長期的な視点から新たなソーシャル・セーフティネットのあり方を検討した、第一線の研究者らによる共同研究の成果。

ということですが、瞠目すべきはその対象範囲の広さです。先日、わたくしも『労働市場のセーフティネット』なる政策レポートを公表しましたが、それは雇用保険と生活保護の歴史的記述にいわゆる「第2のセーフティネット」を挟み込んだだけで、失業する前の段階も、雇用政策も年金も、医療費も住宅も捨象していましたが、こちらは社会的セーフティネットを包括的に取り上げています。

>はしがき

序 章 「参加保障・社会連帯型」社会政策を求めて(埋橋孝文)
 1)ディーセントな社会をめざして
 2)「参加保障・社会連帯型」の新しい社会政策
 3)新しく求められる制度変更の視点――3層のセーフティネットから4層のセーフティネットへ
 4)各章のあらまし

第Ⅰ部 第1層(雇用・最低賃金の保障)と第2層(社会保険の適用拡大)のセーフティネット

第1章 セーフティネットとしての最低賃金(吉村臨兵)
 1)はじめに
 2)賃金率を保障する意味
 3)最低賃金の水準と決定方式
 4)新たな最低賃金規制の可能性
 5)おわりに

第2章 雇用政策の再構築に向けて(ウー・ジョンウォン)
 1)再構築の方向――「市場化」から「制度化」へ
 2)労働市場の規制――雇用形態の適正化
 3)市場への統合の強化その1――「手を伸ばす」職業紹介
 4)市場への統合の強化その2――「実る」能力開発

第3章 参加保障型社会保険の提案(菅沼 隆)
 1)はじめに
 2)社会保険の未加入・未納者の問題の制度的背景
 3)社会保険の理論
 4)参加保障型社会保険の提案
 5)皆保険・皆年金の実質化にむけた討議を
  
第4章 参加保障型雇用保険の構想(菅沼 隆)
 1)雇用保険の適用をめぐる現状
 2)失業(雇用)保険のモラルハザード論をどう考えるか
 3)参加保障型雇用保険の概要
 4)雇用保険を通じた連帯の強化

第5章 国民年金の再構築――高齢期のセーフティネット・最低限生活保障として(齋藤立滋)
 1)参加保障型社会保険としての国民年金をめざして
 2)国民年金の歴史
 3)国民年金の現状
 4)なぜ排除されてしまうのか
 5)国民年金の再構成
 (補足資料)社会保障財政の現状

第Ⅱ部 第3層(税額控除、社会手当・社会サービス)と第4層(生活保護)のセーフティネット

第6章 3層のセーフティネットから4層のセーフティネットへ(埋橋孝文)
 1)国際比較からみた日本のセーフティネットの「形」
 2)日本のセーフティネットの際立つ特徴と改善すべき点

第7章 「求職者就労支援制度」の創設(山脇義光)
 1)なぜ長期失業者等を対象とした所得保障と就労支援のプログラムが必要なのか
 2)雇用保険の現状と課題
 3)2009年雇用保険改正とセーフティネットの拡充
 4)「求職者就労支援制度」創設の必要性と制度概要
 5)「求職者就労支援手当」にかかる費用の試算

第8章 医療費軽減制度(阿部 彩)
 1)はじめに
 2)公的医療保険の加入状況
 3)公的健康保険の保険料の滞納問題
 4)患者負担額
 5)医療費軽減制度の設計

第9章 「住宅セーフティネット」の拡充――家賃補助(室田信一)
 1)日本における住宅政策の転換
 2)先進諸国における住宅政策の傾向
 3)日本における家賃補助の可能性
 4)日本における家賃補助スキーム
 5)結論と残された課題

第10章 ワーキング・プア対策としての給付つき税額控除(阿部 彩)
 1)はじめに
 2)ワーキング・プア問題
 3)第三のセーフティネットの必要性とその性質
 4)給付つき税額控除の利点と欠点
 5)ワーキング・プア対策としての給付つき税額控除の設計
 6)日本型ワークシェアの模索

第11章 地域における「参加」の入口――相談援助機能(室田信一)
 1)「地域のセーフティネット」
 2)実践事例1――大阪府のコミュニティソーシャルワーク事業
 3)実践事例2――静岡県富士宮市の地域包括支援センター
 4)実践事例3――静岡県労働者福祉協議会のライフサポートセンター
 5)「地域のセーフティネット」の条件
 6)移行期の仕組みづくり

第12章 所得保障としての生活保護と社会福祉としての生活保護(宮寺由佳)
 1)生活保護以外の制度に規定される生活保護の機能
 2)生活保護受給者と低所得者層
 3)非稼働世帯の所得問題
 4)稼働能力のある低所得者層――雇用保険と生活保護の谷間
 5)問題のカテゴリー化と制度的分離
 6)社会福祉としての「生活保護」

終 章 ディーセントな社会への展望――提言の総括(埋橋孝文/麻生裕子)
 1)提言の内容
 2)提言を活かすために

編者あとがき
索 引

この目次を見ても分かるように、世間(ていうか連合自体)が第1層、第2層という言い方をしているのとは違って、雇用されている状態が第1層で、そのため最低賃金が真っ先にセーフティネットとして取り上げられているのですね。世間の言い方に合わせるならば、ここは第0層とでもいうところですが。

問題意識は第6章で、日本の現状が、

>法定最低賃金の水準は低く、失業保険の受給期間が短く、・・・若年失業者給付が制度化されておらず、・・・失業扶助制度も存在しない。

>社会扶助(生活保護)制度は・・・給付水準はOECDの中でもトップクラスにあるが、受給者の割合がきわめて低く、その結果、働いていても貧しいワーキング・プアが多数存在することになる。

>そうしたワーキング・プアに代表される低所得者層に対してもっとも所得の底上げを期待される「社会手当」の整備が遅れている。このことは、典型的には日本で住宅給付が存在しないことにあらわれている。

>税額控除制度が・・・日本では未だに導入されていない。

とまとめられ、それに対する処方箋として各章の政策提言が書かれているという形です。

終章でそれらがまとめられていますが、さらに「提言を生かすために」として、

>社会支出の総額を増加させる必要性

を強調しています。この点は、近年のポピュリスト的政治風潮では常に目の敵にされる傾向にあることであるだけに、何回も強調する必要があるでしょう。

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