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« 「個別労働関係紛争処理事案の内容分析」のご紹介 | トップページ | CAPACITAS: Contract Law and the Institutional Preconditions of a Market Economy »

2010年6月20日 (日)

その「解雇規制緩和」は不公正解雇の話ではないですね

自由民主党の「マニフェスト」を見ていくと、次のような一節がありました。

http://www.jimin.jp/jimin/kouyaku/22_sensan/pdf/j_file2010.pdf

>32 雇用力強化労働法制の充実

「雇用」は国民生活の基盤であり、その安定確保は国の最重要課題であります。一方、派遣切りなど、解雇が行われた際、すべての責任を企業に負わせることも問題であり、政府と企業が一体となった労働環境を整備しなければなりません。特に、「解雇規制」を緩和すると同時に、企業における「柔軟な経営」を行える環境を整備するなど、企業の持続による「雇用の安定」につなげます。また国としては、「同一労働同一賃金」「社会保障の充実」「労働環境の法整備」を前提に、失業対策として、生活の安定が保証される「手厚い失業給付」「充実した職業訓練プログラム」の再構築など、強力なセーフティネットを構築します

ちょっと意味がとりにくいところもありますが、総じて具体的な政策としては適切なものばかりです。

ただし、やや言葉が足りないため、誤解を招く恐れのあるところがあるので、一点指摘しておきたいと思います。

それは、いうまでもなく「「解雇規制」を緩和する」という表現です。その前のところに「派遣切りなど、解雇が行われた際、すべての責任を企業に負わせることも問題」とあることからも窺われるように、ここでいう「解雇」とは経済状況の悪化により労働投入量を減らさざるを得なくなったときの冗員整理(リダンダンシー)のことであって、「態度が悪いからクビ!」というような不公正解雇(アンフェア・ディスミッサル)のことではないと思われますが、そこをうかつに「解雇規制」を緩和する」と書くと、今ですら中小企業ではやり放題に近い恣意的な解雇をもっと自由にやれるようにすることかと誤解されかねません。

世の中に病理現象があるということを一切捨象してきれいだが現実離れした理論を紡いでいればいい経済学者と違って、政治家は世の中のどぶ板レベルの現実にぴたりと張り付きながら、その中で少しでも改善できるところから改善するということを目指さなければならないのですから、ここはもうすこし言葉を足す必要があるように思われます。

現実の雇用終了がどういうものであるかが知りたい場合は、下でも紹介されている最近発表したばかりの報告書をどうぞ。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-d97a.html

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