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2010年6月15日 (火)

池田勇人よりも誠実か?

今からちょうど半世紀前の1960年、池田勇人内閣の国家経済企画書として書かれた『国民所得倍増計画』は、終身雇用制、年功序列型賃金制度が労働力の流動性を阻害しているという認識に立ち、次のように、労務管理制度の近代化を訴えていました。

>労務管理制度も年功序列的な制度から職能に応じた労務管理制度へと進化して行くであろう。それは年功序列制度がややもすると若くして能力のある者の不満意識を生み出す面があるとともに、大過なく企業に勤めれば俸給も上昇してゆくことから創意に欠ける労働力を生み出す面があるが、技術革新時代の経済発展を担う基幹的労働力として総合的判断に富む労働力が要求されるようになるからである。企業のこのような労務管理体制の近代化は、学校教育や職業訓練の充実による高質労働力の供給を十分活用しうる条件となろう。労務管理体制の変化は、賃金、雇用の企業別封鎖性をこえて、同一労働同一賃金原則の浸透、労働移動の円滑化をもたらし、労働組合の組織も産業別あるいは地域別のものとなる一つの条件が生まれてくるであろう。(第4部「国民生活の将来」 第1章「雇用の近代化」)

池田首相が、そして所得倍増計画の策定に携わった当時の学者や官僚たちが、近ごろ都に流行る一知半解の連中と違うところは、こういう労務管理制度の近代化が、公共政策としていかなる政策制度を要請することになるのか、ということをきちんと認識し、それを計画の中にしっかりと盛り込んでいたことです。

>広域職業紹介の機能を持つ職業安定機構の確立を図り、横断的な労働市場を形成して行かなくてはならない。

>労働力の可能性の障害となっている住宅問題の改善が急がれる。・・・従来、一部の大企業においては従業員に対する社宅の提供を行っていたが、大部分の労働者特に中小企業の労働者にはそのような便宜は与えられてこなかった。労働者が独力で住宅を得ることは現在の賃金水準のもとでは困難であり、民間の賃貸住宅の賃貸料の負担も容易ではない。したがって、政府施策による勤労者用住宅の充実を図ることが緊要となる。

>年功序列型賃金制度の是正を促進し、これによって労働生産性を高めるためには、すべての世帯に一律に児童手当を支給する制度の確立を検討する要があろう。

>学校教育と並んで職業訓練の重要性と緊急性は増大している。しかし、職業訓練は国民の理解が不十分な点を考慮して、これを社会的慣行として確立する必要がある。

もし、民間企業の労務管理制度について終身雇用制や年功賃金制を否定する論者が、その舌の根も乾かぬうちに、職安は民営化してOKとか、公的な住宅政策なんて無駄だとか、子ども手当なんてバラマキはやめろとか、訓練校なんて全部潰してOKとか、そういうたぐいの公共政策破壊ポピュリズムを喚き散らしているとしたら、そういうインチキ論者は、池田勇人首相の誠実さをかけらももたない輩であると考えていいと思われます。

こうした公共政策の社会的位置づけがとりわけ1970年代以来西欧諸国と比較して著しく低くなってきたのは、まさにかれらが否定すると称する民間企業の終身雇用制や年功賃金制度が、それら公共政策を代替する機能を果たしてきたからで、それは半世紀前の国民所得倍増計画が示した日本経済の将来像とはまったく異なる方向であったわけです。「そういうことは企業が全部やるから国は余計なことをするな」というのであれば、それはそれなりに筋の通った議論になります。しかし、企業福祉も破壊せよ、国も福祉も破壊せよ、というのは、つまり日本を焼け野が原にしたいということなのでしょうね。

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