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2010年6月11日 (金)

内々定取消損害賠償判決

福岡のコーセーアールイー社が新卒学生の内々定を取り消したことに対する(労働審判を経た)裁判の判決が2件、去る6月2日に出たということは報道されているとおりですが、その判決文がさっそく最高裁のHPにアップされています。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100611155526.pdf(平成21(ワ)1737)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100611161824.pdf(平成21(ワ)2166)

「内々定」の法的性質について、

>本件内々定は,正式な内定(労働契約に関する確定的な意思の合致)とは明らかにその性質をことにするものであって,正式な内定までの間,企業が新卒者をできるだけ囲い込んで,他の企業に流れることを防ごうとする事実上の活動の域を出るものではないというべきであり,原告及びも,そのこと自体は十分に認識しD ていたのであるから,本件内々定によって,原告主張のような始期付解約権留保付労働契約が成立したとはいえず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

と、労働契約の成立を前提とした主張は退けていますが、

しかし内々定であっても、

>原告が,被告から採用内定を得られること,ひいては被告に就労できることについて,強い期待を抱いていたことはむしろ当然のことであり,特に,採用内定通知書交付の日程が定まり,そのわずか数日前に至った段階では,被告と原告との間で労働契約が確実に締結されるであろうとの原告の期待は,法的保護に十分に値する程度に高まっていたというべきである。
それにもかかわらず,被告は,同月30日ころ,突然,本件取消通知を原告に送付して本件内定取消しを行っているところ,本件取消通知の内容は,建築基準法改正やサブプライムローン問題等という複合要因によって被告の経営環境は急速に悪化し,事業計画の見直しにより,来年度の新規学卒者の採用計画を取り止めるなどという極めて簡単なものである。また,原告からメールによる抗議を受けながら,原告に対して本件内定取消しの具体的理由の説明を行うことはなかった。以上のように,被告が内々定を取り消した相手である原告に対し,誠実な態度で対応したとは到底いい難い。
加えて,被告は,経営状態や経営環境の悪化を十分認識しながらも,なお被告は新卒者である原告及びの採用D を推し進めてきたのであるところ,その採用内定の直前に至って,上記方針を突然変更した具体的理由は,本件全証拠によっても,なお明らかとはいい難い。特に,被告における取締役報酬のカット幅や株主への配当状況等に照らせば,被告が,当時,いわゆるリーマン・ショック等によって緊急かつ直接的な影響が被告にあると認識していたのかは疑わしく,むしろ,経済状況がさらに悪化するという一般的危惧感のみから,原告及びDへの現実的な影響を十分考慮することなく,採用内定となる直前に急いで原告及びDの本件内々定取消しを行ったものと評価せざるを得ない。そして,本件全証拠によっても,当時,原告について被告との労働契約が成立していたと仮定しても,直ちに原告に対する整理解雇が認められるべき事情を基礎付ける証拠はない。
そうすると,被告の本件内々定取消しは,労働契約締結過程における信義則に反し,原告の上記期待利益を侵害するものとして不法行為を構成するから,被告は,原告が被告への採用を信頼したために被った損害について,これを賠償すべき責任を負うというべきである。

と、信義則に基づいて損害賠償責任を認めています。

ただし、損害賠償としても、その対象は「被告への採用を信頼したために原告が被った損害に限られ,原告が被告に採用されれば得られたであろう利益を損害として請求することはできない」とし、賃金相当の逸失利益は認めず、

>上記認定の本件内々定から本件内々定取消しに至る経緯,特に,本件内々定取消しの時期及び方法,その後の被告の説明及び対応状況,原告の就職活動の状況及び現在も就職先が決まっていないことなど,本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,原告が本件内々定取消しによって被った精神的損害を填補するための慰謝料は,100万円と認めるのが相当である

と、なぜだかよくわからないけどひっくるめて100万円というよくある慰謝料の算定になっています。

なんにせよ、内々定の取消に慰謝料請求を認めた初めての判決です。

最高裁が異様に素早くアップしたのも、その意義を認識しているからでしょう。

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