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個別労働関係紛争処理事案の内容分析―雇用終了、いじめ・嫌がらせ、労働条件引下げ及び三者間労務提供関係―

Kobetu 本日、労働政策研究・研修機構の報告書123号として、わたくしを含む労使関係・労使コミュニケーション部門の4人で行ってきた研究報告書『個別労働関係紛争処理事案の内容分析―雇用終了、いじめ・嫌がらせ、労働条件引下げ及び三者間労務提供関係―』が完成し、JILPTのHPにアップされております。

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2010/0123.htm

HP上の宣伝文句を引用しておきます。

>研究の目的と方法

今日、労働組合組織率は2割を下回り、従業員100人未満の中小企業ではわずか1.1%に過ぎない。また、非正規労働者を組合員としない日本の企業別組合の慣習の下で、組合のある企業においても組織されない非正規労働者が増大してきた。このような中で2001年10月から個別労働関係紛争解決法が施行され、全国の労働局において、個別労働紛争に関する相談、助言指導及びあっせんが行われている。しかしながら、これら個別紛争処理の内容については、1年に1回、厚生労働省から「個別労働紛争解決制度施行状況」として、大まかな統計的データが公表されるのみで、その具体的な紛争や紛争処理の姿は明らかになっていない。

そこで、2008年度に4労働局で取り扱ったあっせん事案(1,144件)を包括的に分析の対象とし、現代日本の労働社会において現に職場に生起している紛争とその処理の実態を、統計的かつ内容的に分析することによって、その全体像を明らかにした。また、個別労働関係紛争の大部分を占める解雇その他の雇用終了事案、いじめ・嫌がらせ事案、労働条件の不利益変更事案、派遣その他の三者間労務提供関係事案などは、今日の労働法政策において注目を集める大きな課題となっており、こういった分野における今後の政策論議において、現実の労働社会の実態は極めて有益な情報を提供することになろう。

主な事実発見

分析対象1,144件の3分の2を占める雇用終了事案のうち、件数が最も多いのは経営上の理由によるもの(218件)であるが、この中には同一企業に勤務する労働者からほぼ同時にあっせん申請が出された集団的性格の事案がかなり含まれている。労働者個人の行為や属性に基づく雇用終了では態度を理由とする雇用終了が167件と圧倒的に多く、以下能力を理由とするもの70件、傷病を理由とするもの48件、非行を理由とするもの39件と続く。

態度や能力を理由とする雇用終了の内容をさらに立ち入ってみると、具体的な業務命令拒否や具体的な職務能力不足を理由とするものはあまり多くなく、態度で言えば、職場のトラブルや顧客とのトラブル、能力で言えば具体的な能力やミスや成果不足を示さない一般的能力不足を理由とするものが多い。さらに、態度で言えば「相性」、能力で言えば「不向き」といった抽象的かつ曖昧な理由による雇用終了も少なくない。

一方、労働条件変更拒否を理由とする雇用終了や変更解約告知など労働条件変更と関連するものもかなりの数に上る。また、労働法上の権利行使やその他の発言を理由とした類型的に客観的合理性に乏しいと思われる雇用終了も決して少なくない。

なお、全事案中合意に至った346件の解決金額を見ると、下表の通り、10万円台を中心に、5万円から40万円までに約3分の2が分布している。

政策的含意

労働法学で主流の判例研究では、裁判所に訴える力や余裕のない多くの労働者に係る紛争が視野に入ってこない。また、労働経済学等の理論研究では、現実の労働社会におけるどろどろした実態を掬い取ることができない。一方で、ジャーナリストによる職場の実態の告発では、たまたま報道された事案がエピソード的に語られるにとどまる。本研究は判例研究と経済理論と告発ジャーナリズムの隙間を埋め、今日の職場で発生している紛争の全体像を示すことを目指している。

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