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2010年6月22日 (火)

デンマークの雇用政策@社会政策学会

先週土曜日は経営法曹会議に呼ばれていたのですが、ちょうどその日に、社会政策学会の第120回大会が開かれていて、そのテーマ別分科会として「デンマークの雇用政策」というのが行われていたのですね。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/sssp/120taikaiprogram.pdf

><テーマ別分科会・第3> 【7 号館209 教室】
デンマークの雇用政策-フレクシキュリティの歴史的前提と到達点
座 長・コーディネーター:菅沼 隆(立教大学経済学部)
1.デンマーク福祉国家の歴史的変遷とシティズンシップ
嶋内 健(立命館大学大学院社会学研究科院生)
2.デンマークの労働市場改革論争-1992年ツァイテン委員会報告の分析
菅沼 隆(立教大学経済学部)
3.デンマーク雇用政策のパフォーマンス評価
岩田克彦(職業能力開発総合大学校専門基礎学科)

昨日、岩田さんからこれらの報告ペーパーをいただきました。岩田さんのは、既に同じ内容の論文を読んでいましたが、島内さんと菅沼さんのはなかなか興味深く、いまだ日本では数少ないデンマーク労働事情について貴重な知見が積み重ねられてきていると感じます。

OECDの「ゴールデントライアングル」というやや一面的なフレクシキュリティの紹介を、さらに労働者の権利を敵視する偏見に満ちた目で曲解することによって、あたかも好き放題に首斬りを自由にして、はした金をばらまいておけばフレクシキュリティになるかの如き誤解が蔓延しかかっているだけに、こういうアカデミックな着実な研究が積み重ねられていくことは重要です。

もちろん、いうまでもなく、マスコミ諸氏も少しは勉強して、フレクシキュリティについて報じる際には、いかがわしい一知半解の徒輩ではなく、こういう篤実な研究者に聴きに行くようにしていただきたいところです。

>第3分科会 デンマークの雇用政策-フレクシキュリティの歴史的前提と到達点
座 長・コーディネーター:菅沼 隆(立教大学経済学部)
<分科会設立の趣旨>
デンマークの雇用政策が世界的に注目されている。その一つの特徴であるフレクシキュリティについては、他のEU諸国や日本への適用可能性について議論されている。フレクシキュリティの経験が他国の雇用政策にとって重要な示唆を与えていることは間違いがなく、モデルとして検討することは有意義である。だが、デンマークの雇用政策はデンマークの歴史的土壌のもとに形成されたものであることを自覚する必要がある。この国に独特の労使関係、雇用法制、労働市場、政治制度などの関係性の中に雇用政策も位置づけられている。まずは、デンマーク雇用政策の歴史的な固有性を確認する必要があるであろう。その固有性の分析を前提として、モデルの一般性について考察をすることが求められている。この分科会では、デンマーク福祉国家の歴史的展開の中で「アクティベーション」をとらえるとともに、1990 年代の労働市場改革の意味を確認し、現在のフレクシキュリティの達成状況とモデルの有効性について評価してみたい。

嶋内 健(立命館大学大学院社会学研究科院生)
「デンマーク福祉国家の歴史的変遷とシティズンシップ」
本報告の目的は、近年着目されてきたデンマークの社会政策「アクティベーション」をデンマーク福祉国家のより長期的な歴史的観点から理解することである。具体的にはデンマーク福祉国家を1890年代から1920 年代の「萌芽期」、1930 年代から1950 年代の「形成期」、1950 年代から1970 年代前半の「黄金期」、1970 年代後半から1980 年代の「危機の時代」、1990 年代以降の「再編期」に区別することで議論を展開していく。そのような歴史的脈絡のなかで、T. H. マーシャルの「ソーシャル・シティズンシップ」概念を一つのメルクマールとして、どのようにデンマーク福祉国家は変容していったのか、変容の過程で福祉の受給資格を与えられるべき市民像はどのように変化したのかを理解する。そして最後に、そのような観点から現在のアクティベーションを含めた「フレキシキュリティ・モデル」がどのように解釈できるのかを検討したい。

菅沼 隆(立教大学経済学部)
「デンマークの労働市場改革論争-1992 年ツァイテン委員会報告の分析」
「フレクシキュリティ」と呼ばれるデンマークの雇用政策のあり方は、1993 年から着手された一連の労働市場改革によってもたらされた。この労働市場改革の基本構想は、1992 年に答申された「労働市場の構造問題対策委員会(通称ツァイテン委員会)」報告で提唱された。1990 年代初頭のデンマーク経済は停滞しており、その重要な原因の一つが労働市場にあると見なされていた。ツァイテン委員会は、デンマーク労働市場の構造問題を分析し、労働市場改革の方向性について様々な角度から検討を加えた。全5巻800 頁近い膨大な報告書の内容を分析することをここでの課題とする。当時のデンマークが労働市場のどのような点を問題とみなし、どのような議論を積み重ねて、どのような改革構想をまとめあげ、労働市場改革を達成したのかを明らかにしたい。

岩田克彦(職業能力開発総合大学校専門基礎学科)
「デンマーク雇用政策のパフォーマンス評価」
労働市場の柔軟性・弾力性(フレクシビリティ)と雇用・生活保障(セキュリティ)の両立をめざすフレクシキュリティを、近年EU は推進しており、オランダと並びデンマークがそのモデル国とされている。デンマーク・モデルは、①柔軟な労働市場(解雇規制が緩い)、②手厚いセーフティネット(失業給付等が充実)、③積極的な雇用政策(次の仕事に移るための職業教育プログラムが充実)、の3 本柱とそれを支える労使の政策決定、実施への積極的参加から成り立っている。近年、デンマークの雇用政策のパフォーマンスは非常に良好な状況が続いているが、現在の経済不況の下、失業者が急速に増加する等従来とは異なる様相も一部見られるようになった。本報告では、職業教育訓練、ジョブセンターの就職支援などデンマークの雇用政策をフレクシキュリティの観点から評価するとともに、デンマークやオランダを参考に「新たな日本型フレクシキュリティ」を構築するためにはどうしたらいいか、政策提言を行う。
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