フォト
2024年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ

« 58年前の賃金制度改善指導 | トップページ | 同一労働力同一賃金原則@俗流マルクス主義 »

2010年6月16日 (水)

だからリタイアメントエイジを定年と訳してはいけないと何遍言ったら・・・

読売新聞が「フランス、「60歳定年」廃止へ」という記事を書いていますが、

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100615-OYT1T00967.htm

>【パリ=林路郎】フランスが欧米では珍しい60歳定年制を見直し、段階的に62~63歳に引き上げる。労働者の福祉向上のためミッテラン社会党政権が導入した制度も、30年近くを経て、市場が迫る財政赤字削減の圧力に抗しきれなくなった。

ここで言ってるリタイアメントエイジ(引退年齢)とは、公的年金制度における支給開始年齢のことであって、企業における強制退職年齢のことではありません。

いやがる労働者をむりやり「定年だから」といって社外におっぽり出す年齢のことではなく、早く年金が欲しいと思っている労働者が安心して会社を辞められる年齢のことです。

というようなことは、今まで何遍・・・どころか何百遍繰り返してきたかと思いますが、それでもやっぱり「定年」と書くんですねえ。

>仏政府は15日夜(日本時間16日未明)にも、定年の引き上げを盛り込む年金制度改革案を公表する。大統領の与党・民衆運動連合(UMP)は、定年と年金支給開始を2020年に62歳に引き上げる案と、30年をめどに63歳に引き上げる二つの案を検討しており、政府の改革案もこれに沿った内容となりそうだ。

 欧州諸国では65歳定年制が主流だが、フランスは1981年に発足したミッテラン政権下で法律で定める定年を65歳から60歳に引き下げた。一部の職種には57歳での早期退職すら認めている。

 だが高福祉の社会保障制度では財政負担が重くのしかかり、政権は「もっと働かなくては制度がもたない」と国民に率直に訴えている。

 09年の政府債務は国内総生産(GDP)の約78%。財政赤字への市場の不信がギリシャ危機の引き金となっており、フィヨン首相は「国の借金が増え過ぎれば(財政運営での)主権すら脅かされかねない」と繰り返してきた。

 問題は最大野党・社会党の対応。マルティヌ・オブリ第1書記は、12年の大統領選で政権を奪還すれば「定年引き上げを撤回する」と断言。年金改革を選挙の争点に据える構えを見せる。

 年金改革案はシラク前政権下で国民の反発を買い、3週間以上に及ぶゼネストの末に廃案になった経緯がある。

この問題はとりわけフランス政府にとっては鬼門でして、働きたくない高齢労働者をいかに長く働かせればいいのか、というのがフランス労働政策担当者の最大の難問であります。

で、かれらにとっては、極東の神秘の国、高齢労働者がもっと長く働かせろといって定年の引き上げを要求し、それに押されて政府の政策が進められてきた不思議の国、ニッポンが興味津々となるわけでありまして、近々お呼びがかかるようであります。

475032325x (参考)

先進諸国の高齢者雇用政策については、OECDの報告書をわたくしが翻訳した『世界の高齢化と雇用政策』(明石書店)があります。

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/475032325X.html

ちなみにこの報告書、原題は「Live Longer, Work Longer」で、「長生きすんだから、もっと長く働けよ」ってなかんじですかね。

(追記)

と思ったら、さっそく労務屋さんから「愚痴」が届きました。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20100617

>欧米でいう「リタイアメントエイジ」が日本の「定年」とは異なる、というご指摘はまあそうだろうと思うのですが、それにしても日本の「定年」は「いやがる労働者をむりやり「定年だから」といって社外におっぽり出す年齢のこと」なんですかそうですか。

ま、それも間違いなく一面の真実ですし、労働官僚であるhamachan先生がこのように述べられることも無理はないと思います。

ただ、企業の人事屋にしてみれば、定年というのは「技能が陳腐化してしまった労働者に再教育を実施したり、体力や健康が衰えてしまった労働者をそれに応じた仕事に配置転換したりして、なんとしてもそこまでは雇い続ける年齢」のことでもあるんですよ。

ここはまさに、わたくしがかつて高齢者雇用安定法の改正作業に携わったときに法制局との間で何回も議論した点で、厳密に法律上からは、「定年」とは期間の定めのない雇用契約を年齢を理由に終了すること以外ではなく、定年が存在することによってそこまで雇用が保障されるという法的効果がもたらされるとはいえない、というのが、現実のとりわけ大企業や中堅企業における人事労務管理の実務感覚とは異なりますが、法的な結論ということになっております。

ただ、本エントリの趣旨はそんな放屁じゃない法匪的理屈にあるのではなくって、そもそも日本では労働者側が、労働組合側が「もっと高齢まで働かせろ」と要求して法政策が動いてきたという、われわれにとっては何とも思わないようなことが、何が何でも年金もらって早く引退したいフランス人の目には極東の神秘と映るということにあるわけなので、そこのところはご理解を。

なお、日本における定年制とそれに関わる法政策の歴史については、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/teinentaishoku.html(『季刊労働法』第215号「労働法の立法学」シリーズ第12回 定年・退職・年金の法政策」)

を参照のこと。

« 58年前の賃金制度改善指導 | トップページ | 同一労働力同一賃金原則@俗流マルクス主義 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

» 愚痴 [労務屋ブログ(旧「吐息の日々」)]
きのうのエントリを書いたあと、そういえばお元気だろうかとhamachan先生のブログを拝見したところ、相変わらずお元気というか進行の速いこと。ちなみに私の職場ではhamachan先生と大内先生のブログがおおいに参照されているようです。勉強になりますものね。 ただ、きのう... [続きを読む]

« 58年前の賃金制度改善指導 | トップページ | 同一労働力同一賃金原則@俗流マルクス主義 »