『ヨーロッパ政治ハンドブック[第2版]』東大出版会
網谷龍介先生より、先生も共著者となっている馬場康雄・平島健司編『ヨーロッパ政治ハンドブック[第2版]』東大出版会をお送りいただきました。いつもお心にかけていただき、ありがとうございます。本書は、
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-032214-0.html
>ヨーロッパの歴史といまを知るための,格好のテキスト第2版.各国の20世紀の歴史と現勢をコンパクトにまとめ,今後の課題を解説,ヨーロッパの未来を展望する.あらたにEU,ルーマニア,ポーランドを加え,さらにバージョンアップした決定版.
でありまして、内容と執筆陣は次の通りです。
1 アイルランド、北アイルランド(池田真紀)
2 イギリス(成廣 孝)
3 イタリア(伊藤 武)
4 オーストリア(網谷龍介)
5 オランダ(水島治郎)
6 スイス(飯田芳弘)
7 スペイン(野上和裕)
8 チェコとスロヴァキア(中田瑞穂)
9 ドイツ(安井宏樹)
10 ハンガリー(平田 武)
11 フランス(中山洋平)
12 ベルギー(津田由美子)
13 ポーランド(中西俊一)
14 北欧諸国(小川有美)
15 ポルトガル(横田正顕)
16 旧ユーゴ連邦の後継諸国(月村太郎)
17 ルーマニア(藤嶋 亮)
18 EU(佐藤俊輔)
やはり、英独仏といった大国じゃないけど小粒でもぴりりとするユニークな小国に関する記述が有用です。
お送りいただいた網谷先生はオーストリアですが、はじめの「歴史的文脈」のところで、労使を中核とした利益団体間の制度化された協調(社会的パートナーシップ)によって支えられてネオ・コーポラティズムを概観し、「政治の現勢」のところでとりわけシュッセル政権のもとで進んだ「社会パートナーシップの終焉」について説明しており、現代日本の動向に照らし合わせて大変興味深い記述になっています。
>同政権は政策形成に当たって、審議会を通じて団体の専門知識を利用する従来の手法から離れ、独立の専門家(の委員会)に依拠する傾向を強めた。また非公式のレベルでも、労働者代表の影響力行使を拒む姿勢を示した。その結果、2003年には異例の広範なストライキが行われるなど、政権と利益団体の関係は、協調を基本線とした交渉から、政府が主導権を握る抗争含みの関係へと変化しつつある。内容的にも、労働法制や年金改革などの立法は、社会パートナー間の合意ではなく、政府原案に近い形で行われることとなっている。
水島治郎先生のオランダでも、三者構成の社会経済協議会や労使による労働協会を通じたコーポラティズム的な政策過程が、
>政労使による協議体制(マクロ・コーポラティズム)自体は維持されているものの、メゾレベルのコーポラティズムは90年代以降、さまざまな変化を被った。
と、やはりその変容を述べています。
こういった動きが、ハイダーの自由党やフォルタイン党といったある種の政治的ポピュリズムと揆を一にして出てきているというのも、やはり興味深いところです。
ところで、第2版では新たにポーランドとルーマニアも入り、多くの欧州諸国をカバーしているはずなんですが、70年代から立派にEC加盟国であったはずのギリシャは入っていません。
ふむ、やはりギリシャはヨーロッパではなかったか・・・。(もちろん冗談です)
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