政労使三者構成の政策検討に係る制度・慣行に関する調査
労働政策研究・研修機構の資料シリーズの一環として、『政労使三者構成の政策検討に係る制度・慣行に関する調査 ―I LO・仏・独・蘭・英・E U 調査―』が発表されました。
http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2010/10-067.htm
これは、本ブログでも何回かトピックとして取り上げてきた労働政策に関する政労使三者構成原則について、先進国と国際機関の制度や動向をとりまとめたものです。派遣法改正をめぐっても三者構成原則が話題になったことは記憶に新しいところですが、ややもすると言葉だけが飛び交いがちになるテーマであるだけに、きちんとした調査研究が求められていたところです。
>研究の目的と方法
厚生労働省の要請を受け、労働立法過程における三者構成原則のあり方を確認することを目的として、フランス、ドイツ、オランダ、イギリスの4カ国とILO、EUの2国際機関について調査を行った。
調査では、ILOにおいて三者構成主義がすべての場面に適用される根本原理であることを確認した上で、各国の政(公)労使三者構成制度の有無について調べるとともに、三者構成による協議機関の設置や労使からの意見聴取を義務づけているILO第26号条約(最低賃金決定制度条約)、第88号条約(職業安定組織構成条約)、第144号条約(国際労働基準の実現促進のための三者間協議条約)などを取り上げ、これら条約の批准状況、批准国における「協議機関の設置」や「労使からの意見聴取」の実態を把握することに努めた。
主な事実発見
具体的な実施方法は異なるものの、いずれの国においてもILO条約の規定にしたがって、何らかの形で協議機関の設置や、労使からの意見聴取を実施していることが明らかになった。
政策的含意
近年三者構成原則に対してその正当性に疑問を呈する議論が提起されてきたため、改めてその正当性の根拠をきちんと整理し、規範的理論として再確認する必要が高まっている中で欧州諸外国や国際機関の三者構成主義の在り方を調査してその実態を明らかにした意義は大きい。
今後、労働政策決定のあり方について、とりわけ三者構成原則の評価について議論がなされる際には、本報告が明らかにした諸知見を踏まえた上でなされることが期待できる。
政策への貢献
労働分野における立法システムの在り方についての議論に貢献。
執筆は、まずわたくしが序章で、日本において三者構成原則をめぐる議論が近年どのように展開してきたかを概説し、
第1章は吾郷眞一先生がILOについて解説され、
第2章から第5章までは、フランス、ドイツ、オランダ、イギリスの説明ですが、ここで特に注目して読んでいただきたいのが、第4章のオランダです。千葉大学でオランダ政治史を専門とされる水島治郎先生が執筆されていて、今日の日本に対して示唆的です。
最後の第6章はわたくしがEUレベルについて概説しています。
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