58年前の賃金制度改善指導
今から58年前の1952年、当時の労働省労働基準局は「賃金制度改善について」(昭和27年8月4日基発第571号)と題する通達を発出し、これに基づき都道府県労働基準局が主体となって賃金制度改善運動を行ったと、『労働行政史』第2巻に書かれています。
そこに、この時の賃金制度合理化運動の実施に当たっての重点項目と考え方が『労働行政史』第2巻に掲載されているので、一部引用しましょう。当時の労働行政の近代主義的なものの考え方が窺われます。
>1 基本給の確立
戦後の経済混乱期に著しく生活給化したわが国の賃金体系は、その後生産の回復、経済書情勢の安定化とともに、職務に重点を置く考え方に基づく諸手当を加え、きわめて複雑なものとなっている例が多い。しかも基本給そのものも職務の内容、労働の質量とに直接関係のない身分的な色彩の濃いものが少なくない。既に存在意義の希薄となった諸手当、支給目的の重複する諸手当等を整理統合し、同一価値労働同一賃金の原則にのっとった基本給を確立することは賃金制度合理化の根本となるものである。
合理的な基本給を確立するに当たって前提となるのは職務内容、責任の程度、その他の労働条件を明確化することである。我が国においては職務の標準化が行われておらず、また責任の所在も不明確なものが多いが、職務の内容等を明確化するに当たっては、職務分析、職務評価等、職務給制度に用いられる技術を導入することが有効である・・・。
2 昇給昇格制度の運用
昇格制度は労働力の経済的価値の向上面を賃金で調節し、絶えず同一価値労働同一賃金の原則による適正な賃金を維持する方途に用いられ、本来固定的な時間給制賃金の動的な一面を形成するものであり、また時間給制の賃金を受ける労働者に対し好ましい刺激を与える機能を持つものである。それ故、基本給の増額方式として科学的人事考課制度を利用し、合理的に作成された俸給表を用いる昇給昇格制度を導入確立することは、戦後の経済混乱期に一般化した一律ベース・アップに比し、労使間の無用な紛争の回避、経営効率の上昇、労働生産性の向上等に格段の好影響をもたらす・・・。
4 業績給制度の導入
業績給制度は労働の成果に結びつけて賃金が支払われる賃金支払形態であり、適当な条件の下にこの制度を導入するならば、同一価値労働同一賃金の原則に即応するのみならず刺激的賃金制度として、生産の増大、労働生産性の向上、生産費の引下げ等の効果を期待しうるものである。しかるに我が国においては、業績給制度を導入するための基盤となる諸条件を充足していない業種または職種にこの制度を適用したり、あるいは単価、標準作業量等の設定に科学性を欠いているために、この制度のもつ本来の効果を減殺しているのみならず、かえって労使間の紛争を引き起こしたり、生産に逆効果を与えている例も少なくない。この制度の導入に当たっての前提としては、あらかじめ良好な労使関係が成立していること、賃金水準も相当高いこと、労働者代表がその設定改廃に参加する機会が与えられていること、企業経営の見透しが立ち、標準作業量等の科学的測定が可能であること、作業及び原材料が持続的に提供されること等、労働者の自由に基づかない要因が生産量に影響を及ぼさないこと、および可能な限り簡潔であり、かつ、理解しやすい方式の導入が出来ること等が必要である・・・。
もちろん、時代の違いを感じさせる記述もありますが、なんだか、今読んでも身につまされるような気がするのは気のせいでしょうか。
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