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自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめ

昨日、厚生労働省が「誰もが安心して生きられる、温かい社会づくりを目指して」と題する自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめを公表しました。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/dl/torimatome_2.pdf

このプロジェクトチームは、

主査 障害保健福祉部長
副主査 安全衛生部長
幹事 精神・障害保健課長 労働衛生課長
メンバー 健康局
職業安定局
社会・援護局
政策統括官

という構成で、労働政策も大きな柱になっています。

自殺予防のための対策の5本柱は、

柱1 普及啓発の重点的実施
~当事者の気持ちに寄り添ったメッセージを発信する~
柱2 ゲートキーパー機能の充実と地域連携体制の構築
~悩みのある人を、早く的確に必要な支援につなぐ~
柱3 職場におけるメンタルヘルス対策・職場復帰支援の充実
~一人一人を大切にする職場づくりを進める~
柱4 アウトリーチ(訪問支援)の充実
~一人一人の身近な生活の場に支援を届ける~
柱5 精神保健医療改革の推進
~質の高い医療提供体制づくりを進める~

となっていて、柱3が労働安全衛生政策ですが、柱1と柱2にも失業者の自殺予防の観点からハローワークの役割が出てきます。以下、労働政策に関わるところを抜き出しておきます。

まず、柱1ですが、

>(6)ハローワークにおける失業者への情報提供方法の充実
失業後、時期を追って変化する失業者の心理状況にあわせた情報の提供を図る。特に、再就職が決まらないストレスから就職意欲が大きく低下した段階や経済的困窮、あるいは雇用保険の受給終了に伴い支援情報とのつながりが希薄になること等から失業者が孤立に陥らないように、地域の様々な相談機関の連絡先や関係制度等をまとめたリーフレット等を住居と生活にお困りの方に対する相談窓口で配付するなど、必要な対象者に対する的確な周知を図る。

柱2では、

(3)ハローワーク職員の相談支援力の向上
ハローワーク職員への職業相談技能の研修において実施しているメンタルヘルスに関する研修やキャリア・コンサルティング研修等の内容の充実、工夫を行うこと等により、職員一人ひとりの相談支援力の向上を図る。これにより、求職者の言動からうつのサインを読み取り、適切な対応ができるようにする。

(4)都道府県等が行う心の健康相談等へのハローワークの協力
都道府県等が地域自殺対策緊急強化事業等により、求職者に対し心の健康相談等を行う場合に、ハローワークにおいて、相談場所の提供、求職者に対する周知等の協力を引き続き実施する。

(5)求職者のストレスチェック及びメール相談事業の実施
ハローワークに来所する求職者自らがストレスチェックを行い、高いストレスがある場合に、メールで相談を行う「求職者のストレスチェック及びメール相談事業」の周知の強化を図ること等により、高いストレスを持つ求職者の専門的支援機関への誘導等を引き続き実施する。

(6)生活福祉・就労支援協議会の活用
住居・生活支援アドバイザーがハローワークにおける住居と生活にお困りの方に対する総合相談窓口として機能し、心の健康や多重債務等に関する地域の相談機関や関係制度と円滑に連携を図れるように、生活福祉・就労支援協議会の活用を図る。

柱3はまるごと安全衛生関係です。

>近年、有職者全般の自殺死亡率が高まっているとの実態分析を踏まえ、職場におけるメンタルヘルス対策及びうつ病等による休職者の職場復帰の支援の充実を図ることが急務である。

という観点から、

(1) 管理職に対する教育の促進
日常的に部下と接している職場の管理職は、部下のメンタルヘルス不調の早期発見、早期対応や、職場のストレス要因の把握や改善に重要な役割を持つことから、中小規模事業場等の職場の管理職に対する教育を促進する。

(2)職場のメンタルヘルス対策に関する情報提供の充実
中小規模事業場の担当者等、職場のメンタルヘルス対策を実施する者が、メンタルヘルスに関する様々な知識を容易に習得することができるようにするため、メンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」にeラーニングの機能を付加する等、内容の充実を図る。

(3)職場におけるメンタルヘルス不調者の把握及び対応
労働安全衛生法に基づく定期健康診断において、労働者が不利益を被らないよう配慮しつつ、効果的にメンタルヘルス不調者を把握する方法について検討する
また、メンタルヘルス不調者の把握後、事業者による労働時間の短縮、作業転換、休業、職場復帰等の対応が適切に行われるよう、メンタルヘルスの専門家と産業医を有する外部機関の活用、産業医の選任義務のない中小規模事業場における医師の確保に関する制度等について検討する。また、外部機関の質を確保するための措置についても検討する。特に、メンタルヘルス不調者の把握及び対応においては、実施基盤の整備が必要であることから、これらについて十分な検討を行う。

(4)メンタルヘルス不調者に適切に対応できる産業保健スタッフの養成
メンタルヘルス不調者への対応が適切に行われるよう、産業医、中小規模事業場において対応する医師等に対するメンタルヘルスに関する研修を実施する。

(5)長時間労働の抑制等に向けた働き方の見直しの促進
今後の景気回復期も含め、長時間労働を抑制し、年次有給休暇の取得促進を図るため、労働時間等の設定改善に向けた環境整備を推進する。
また、パワハラの防止等職場における良好な人間関係の実現に向けた労使の取組を支援する。

(6)配置転換後等のハイリスク期における取組の強化
民間団体が行っている自殺の実態調査から、配置転換や転職等による「職場環境の変化」がきっかけとなってうつになり自殺する人が少なくないことが分かっている。そうした実態を踏まえて、配置転換後等のハイリスク期におけるメンタルヘルスに関する取組を強化し、問題が悪化する前に支援へとつなげる。

(7)職場環境に関するモニタリングの実施
デンマークの「労働環境法」を参考にしながら、事業場の労働環境評価についてのガイドラインを策定し、労働者の健康を守るという観点で、心理社会的職場環境についてモニタリングを行う。(例えば、まずは「月80時間以上の時間外労働を許容している事業場」や「過重な労働等による業務上の疾病を発症させた事業場」等についてサンプル調査を行う。)
また、環境保全への取組のように、心理社会的職場環境を整えることが企業イメージの向上につながるよう優れた取組を行っている事業場の公表等を実施する。

(8)労災申請に対する支給決定手続の迅速化
業務上のストレスによりうつ病等を発症した労働者が的確な治療及び円滑な職場復帰等に向けた支援を受けられるよう労災申請に対する、支給決定手続の迅速化を進める。

(9) うつ病等による休職者の職場復帰のための支援の実施
全国の地域障害者職業センターにおいてうつ病等による休職者の職場復帰支援を引き続き実施し、休職者本人、事業主、主治医の3者の合意のもと、生活リズムの立直し、体調の自己管理・ストレス対処等適応力の向上、職場の受入体制の整備に関する助言等を行い、うつ病等による休職者の円滑な職場復帰を支援する。
このほか、医療機関と職場の十分な連携の下、休業者の回復状況に的確に対応した職場復帰支援プランの策定、実施等の取組を広く普及するため、事業者の取組に対する支援を行う。

(10)地域・職域の連携の推進
休職や離職をした方に対し継続的に相談支援を提供できるよう、中小民間企業等を対象とした相談支援や地域づくり、人材育成など、地域(市町村・保健所・病院及び診療所の医師等)と職域との連携の強化等について検討する。

以上のうち、(3)が労働安全衛生法の改正につながる事項ですが、これは「労働者が不利益を被らないよう配慮しつつ」と書かれているように、労働者の安全への配慮とプライバシーへの配慮が下手をすると真っ向からぶつかる可能性のある領域です。

これは、ちょうど19日(水)の労働法政策の講義で取り上げたばかりなんですが、一方で過労死、過労自殺の予防ということで、使用者が労働者の身体や精神の健康状態を事細かに把握するようにするということは、裏返すとそういう労働者個人のセンシティブな情報を使用者の前にさらけ出さなければならないということでもあるわけで、なかなか判断のむづかしいところでなのですね。

(参考)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/karoshiprivacy.html(『時の法令』6月15日号「そのみちのコラム」「過労死・過労自殺とプライバシー」)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/karoushi.html(『季刊労働法』第208号「労働法の立法学」「過労死・過労自殺と個人情報」)

もうひとつ、(5)のパワハラ予防への労使への支援というのは、とりあえずは間接的な政策ですが、個別労働紛争の2割を占めるに至っている職場のいじめ問題に対する。労働政策としての初めてのアプローチとして注目されます。

(参考)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/jisatsuken.html(自殺問題弁護士医師等研究会講演「職場のいじめに対する各国立法の動き」(2006年7月6日))

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roujunijime.html(『労働法律旬報』2010年3月下旬号「海外労働事情-EU職場のいじめ・暴力協約」)

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