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2010年5月11日 (火)

労働契約法の意義と課題@日本労働法学会誌

日本労働法学会の119回大会@名古屋大学を目前にして、学会誌が送られてきました。特集は「労働契約法の意義と課題」です。

http://www.hou-bun.co.jp/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03263-8

このシンポジウム記録の中で、わたくしが質問しているところ(正確には西谷先生がわたくしの質問票を読み上げているところと、わたくしの追加的発言)がありますので、そこだけ引用しておきます。

テーマは、合意原則をめぐってです。

西谷(司会) ・・・濱口会員からの質問は、少し視点が違います。「労働契約法の合意原則は、個別労使の合意という理解で立法されていることは確かだが、その沿革は、労基法2条1項(労使対等決定原則)に由来するならば、集団的労使の合意という概念に基づくのではないか。労働基準法制定時において、実質的立法者であった労務法制審議会も、法を審議した国会も、制定直後の裁判所の裁判例も、いずれも労基法2条1項を集団的労使合意と解釈している。」そこで、これは労働契約法の解釈の論点だと思いますが、「集団的合意を原則としつつ、その例外として個別合意を優先させるべき場合の補充的規範として合理性を位置付けるほうが、労働法体系全体との整合性ある理解ができるのではないか。この例外を判断する基準として、ワーク・ライフ・バランス等の公共政策的配慮が位置付けられるのではないか」という質問です。
 この質問に対して土田会員に答えてもらい、不足な点は、さらに質問者から補足で話してもらいます。

土田(同志社大学)・・・・・

西谷(司会) 今の点について、濱口会員、発言をお願いします。

濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構) 解釈論としては、労働契約法がそういう趣旨で作られたことは当然承知しています。やや立法論的に、そういう作り方でよかったのかという問題提起をしたつもりです。
 合意原則や自主的な交渉が、個別の労働者だけの話として想定されているのであれば、労働法は100年をさかのぼった昔の民法に戻るだけではないでしょうか。そこをきちんと区分けした議論をしないと、何の議論をしているのかわかりません。労働法と言いながら、実は民法で議論していることになり、それでは意味がありません。
 これは、労働法の存在根拠は労使間の情報格差だけの問題なのか、それとも交渉力格差も問題なのかという判断にかかわると思います。スタート時点における交渉力格差も問題だと考えれば、個別合意だけではだめだから、交渉力格差を補うために集団的合意というものが位置付けられたのだと思います。ところが、逆に集団的な合意だけでやると、そこから個別的な利害がこぼれ落ちてきます。その個別的利害を、いかなる場合に集団的合意に優先させるべきかという判断基準として、一般的には「合理性」判断ということになるのでしょうが、とりわけ均衡処遇やワーク・ライフ・バランスといった一般条項が用いられるべきではないか。つまり、原則としての集団的合意と例外としての個別的異議をどのように組み合わせるべきかという観点が必要ではないか。
 それを、「みんなで合意したからこれでやっているが、俺は嫌だよ」という話を、「個別労働者の合意があったかなかったか」という枠組みでいきなり議論すると、本来複数の層で議論しなければいけないものが、非常に単層的になるのではないでしょうか。形式的意味における労働契約法を前提とした議論をここですべきだとすると、趣旨が違う質問だったかもしれませんが趣旨を説明させていただきました。

土田(同志社大学)・・・・・

これは、わたくしの書いたものや喋ったものを読まれている方はおわかりのように、労働契約法制定に向けた議論の当時から、わたくしが結構繰り返し述べてきている話ですし、拙著『新しい労働社会』の第4章の大きなテーマでもありますし、最近では『月刊労委労協』に載せた講演でも取り上げたテーマなのですが、あまりアカデミックな学会ベースでは議論にならないのは不思議な感じがします。

あと、個別報告では、所浩代さんの「精神障害に基づく雇用差別と規制法理」が興味深いです。というのは、実は『季刊労働法』連載の「労働法の立法学」の次の回に障害者雇用を取り上げることもあり、特にわたくしがよくわからず一知半解気味の精神障害とか発達障害とかという分野の本(といっても新書ですが)をかなり立て続けに読んで、頭の中が精神医学化しているという事情もあったりしますが。

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