「欧州全域でブルカ禁止を!」
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-3ad7.html(ベルギーでブルカは禁止!)
の続きです。
http://euobserver.com/9/29991(Top German Liberal in EU parliament wants Europe-wide burqa ban)
例によってEUobserver紙によりますと、欧州議会副議長の一人で、ドイツ自由民主党のシルヴァナ・コッホ・メーリン議員が、
> "I would like to see the wearing of all forms of the burqa banned in Germany and in all of Europe."
「どんなものであれブルカをかぶった姿はドイツで、いや欧州全域で禁止されるべきです」
と述べています。
既にベルギーでブルカ着用禁止法が成立し、フランスもそれに続こうとしている今、それをドイツ、そして欧州全域に広げようと主張しているわけです。
>"The burqa is an enormous attack on the rights of women. It is a mobile prison."
「ブルカは女性の権利への全面的攻撃です。動く牢獄です。」
ドイツ自由民主党は経済的自由とともに個人の自由を信ずる政党ですが、彼女によれば、
>there are limits to this freedom and the EU should decide on behalf of Muslim women the limits of what clothing they can wear.
この自由にも限度があり、EUはムスリム女性の信仰について彼女らが何を着ることができるかの限度を決めるべきです。
「自由」を政党名に掲げる政党が、その自由を擁護するために、ブルカをかぶる自由を否定するという一見パラドクシカルな、しかしきわめて本質的な問題といえるのでしょう。
« 野川忍『新訂労働法』(商事法務) | トップページ | 阿Qさんの拙著への深い書評 »
「EUの労働法政策」カテゴリの記事
- EU自営業者の団体交渉規則へのロードマップ(2021.01.07)
- EU離脱寸前のイギリスで、ギグワーカーはEU安全衛生指令上の労働者だという判決(2020.12.22)
- EU最低賃金指令案(2020.11.01)
- EU新産業戦略にプラットフォーム労働者対策を予告(2020.03.14)
- EUが最低賃金について労使団体に第一次協議(2020.01.16)
以下、毎日新聞の報道からの引用です。
http://mainichi.jp/select/world/news/20100430k0000e030020000c.html
>ベルギー(人口約1075万人)のイスラム教徒約40万~50万人のうち
>ブルカまたはニカブを着用している女性は数十~数百人と推定されている。
>人権保護団体や一部のイスラム教徒は着用禁止の法制化について「表現や宗教の自由の侵害だ」と反発している。
これを見ると、少なくとも、ベルギーのイスラム教徒においては、ブルカ着用派はイスラム教徒中でも1%未満の明らかな少数派であり、ブルカ着用を強制されているとは考え難いと思います。
おそらくは、ベルギー固有の事情ではなく、他の欧州諸国でも傾向は一致するでしょう。
大多数が着用していないと言うことは、その人達には強制が無いと言うことであり、仮に、宗教的には強制されているが従がっていないのであるなら、強制力の極めて乏しい弱い規範レベルの話でしか無い訳です。
結局、この問題は、自由の名の下に、マイノリティに対する抑圧を強行してしまった愚行であるとしか思われません。
そもそも、こんな極少数派のマイノリティの風俗をシンボリックに取り上げて叩くのは、根底には、移民に対する反感を利用したナショナリズムをオブラートで包んだだけのものとしか思えないですね。
自由主義を標榜する欧州諸国の情勢としては、気持ち悪いです。
投稿: とおる | 2010年5月 4日 (火) 06時37分