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2010年5月27日 (木)

野田知彦『雇用保障の経済分析』の「あとがき」から

68df2ec726868debfa2414ae127b64e49bd 野田知彦先生より、近著『雇用保障の経済分析 企業パネルデータによる労使関係』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。高度な経済学手法を駆使した書物であり、わたくしの評論する能力を超える面も多々あるのですが、じっくりと読ませていただきたいと思います。

>労使関係や労働組合は日本の雇用にどのような影響を与えたのか。雇用保障が日本の企業経営や労働市場にもたらす影響を、労使関係や労働組合が与える効果という観点から、企業パネルデータに基づき実証的に分析する

じっくり読ませていただく前に、「あとがき」だけをご紹介するというのはあまり適切ではないかも知れませんが、この「あとがき」は是非多くの方々に熟読玩味していただきたい中身になっておりますので、あえて引用させていただきます。

>・・・最後に世相について語りたい。今の日本では「世論」が猛威を振るっている。そして、世論は何よりも「わかりやすさ」を求めている。わかりやすいスローガンを叫ぶ者、またおもしろおかしい政治ショーを披露する者が、世論の圧倒的支持を受ける。しかし、このような事態が続けばそれが何をもたらすのかは、ローマ帝国の行く末を見れば一目瞭然である。我々は、繁栄を誇ったローマ帝国が、「パンとサーカス」によって滅びたことを肝に銘ずる必要がある。重要な事柄が、その時々の空気で決定される風潮は、そろそろ終わりにしなければ取り返しがつかないことになるだろう

>雇用問題についても同じである。派遣村が取り上げられ、その悲惨さが過剰にクローズアップされると、これを目の当たりにした世論は、「派遣の規制」という方向への誘導されるといった具合である。そこに見えるのは気分や感情の支配であって、責任ある議論では決してない。

>そして問題なのは、世論に迎合する輩が後を絶たないということである。世論に反対する者に「抵抗勢力」というレッテルを貼って叩けば、世論はそれに対して拍手喝采を送る。しかし考えてみると、彼らの掲げるスローガンは実は何の中身も伴っておらず、あとから取り返しのつかない事態になることも往々にしてある。あとからそれに気づいて、世論は彼らが支持した者を引きずり下ろすに至るのであるが、自分たちの振る舞いについては決して省みることはないのである。思えばこの数年間、わが国ではそのような出来事の繰り返しだったのではないだろうか。

>我が国民は愚昧ではない。マスコミや知識人、そして為政者が果たすべき責任を回避して安易に世論を形成し、そしてそれに迎合しているのが最大の問題であろう。今必要なのは、情緒に支配された世論ではなく、責任ある輿論を形成することである

>口幅ったいが、学問とは、そして学者とは、このような世論の支配に対して一石を投じ、責任ある輿論の形成に関わることがその存在意義ではないだろうか。その存在意義が発揮されなければ、学問、文化、芸術は世論によって根絶やしにされてしまい、その果てに社会は解体し、国は滅ぶ。我々は、世論の風潮に流されることなく、もっと根底にある物事の本質を真摯な態度で見据えなければならない。日本が滅びの一途をたどらないことを祈るばかりである。

本文が冷静な経済分析に徹しているだけに、あとがきにおけるこの「魂からの叫び」は読む者の心を揺り動かします。

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