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アスペルガー症候群が生きにくいメンバーシップ型社会

拙著の書評というわけではないのですが、拙著の枠組みを引いて、アスペルガー症候群の人の生きにくさを説明しているブログがありました。「自閉症・親(家族)・地域・武蔵野東学園」の「東風blog」から、本日のエントリ

http://tongpoo-blog.air-nifty.com/jose/2010/05/post-5e11.html(”ギフテッド”を読んで考えた事)

>”EU 労働法政策雑記帳”ブログを書かれているhamachan先生こと濱口桂一郎氏の著書”新しい労働社会”では、「(特に大企業を中心に)日本型雇用システムの特徴は、職務と言う概念が希薄」であり「日本型雇用システムにおける雇用とは、職務ではなくメンバーシップ(その会社の構成員となることを許可すること)」であることが指摘されています。私はこの事もASの方の生き難さに繋がっているのではないか、と思ったりしています。
hamachan先生によると、日本以外の国(主に欧州と思われる)では「具体的な職務を特定して雇用契約を締結する」ジョブ契約型が主流なのだそうです。これであれば雇用契約で契約したジョブ(職務)さえ責任もって行っていれば、職場の人間関係を気にする事は(全くとは言いませんが)ありません。

しかし、日本はメンバーシップ契約ですから、採用の基準は終身雇用を前提としたメンバーシップをその人と結ぶか(要は仲間に入れるか)と言うことになり、他人とのコミュニケーションが苦手なASの方に不利に働いているように思います。

”新しい労働社会”では(我々は当たり前だと思っているが実は世界的に見るとかなり異質な)日本的雇用システムや慣行の根底にあるメンバーシップの考え方が、逆にメンバーシップに入れなかった非正規労働者等の問題の根本にあることが指摘されていますが、ASの方の場合はそれが増幅されて降りかかってきているのではないか、と思われてなりませんでした。

9784344981423_1l 正直言って、わたくしの議論の枠組みがこういうところにまで使われるとは想像していませんでしたが、でも確かに、岡田尊司さんの『アスペルガー症候群』などを読むと、「社会性の障害」とか「コミュニケーションの障害」といった症状が指摘されていて、メンバーシップ型の社会では生きにくいであろうと思われます。

I4396111908l あるいはまた、アスペルガー症候群を含む発達障害について書かれた本に、「発達障害者が持っている才能を活かすには」「専門的な知識や技能を活かす」と書かれていますが、それもジョブ型社会の方がやりやすいでしょうね。

このあたりはわたくし自身必ずしもよく分からないところも多い分野ですが、それこそ大野正和さんの議論とどこまで切り結ぶことができるのかも含めて、自分なりにもう少し考えていってみたいと思います。

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新しい労働社会」カテゴリの記事

コメント

大野@過労死です。
こういうエントリを待望していました。
発達障害や精神障害、パーソナリティ障害といった特殊な「能力」がメンバーシップ型では活躍しにくいのは、わたしもつねづね感じてきています。
ノーベル経済学賞のナッシュは統合失調症でした。
日本で「障害者」は保護か差別の対象です。彼らの仕事を「ジョブ」として評価するシステムがほとんどありません。
ちなみに「障害学」の一部では、「周辺的職務」で障害者を差別するのは違法だが、「本質的職務」において欠陥があれば解雇もありうる、というように読める議論もあります。つまり、障害者といえども仕事そのものの能力は厳しく問うよ、というものでしょう。
そのあたり、わたしは、障害特性のもつ独特の「ギフテッド」な天賦の才能を生かすべきだという立場ですが。

投稿: ohmasakun | 2010年5月 5日 (水) 00時35分

「空気が読めない」「話題についていけない」といった経験が多くある自分もASの方の気持ちは少し察することが出来る気がします。
幼少時より流行やTVとは無縁の生活、また個人の性格の問題などが背景にあるのですが、仕事をする上でコミュニケーションが「重要」であるとされ、そのためには既存の社会の諸価値観を模倣しないといけないというのはかなり苦痛です。とはいえ、メンバーシップ制がコミュニケーションを行う上での共通項を縮約することにより円滑なコミュニケーションと業務遂行を可能としているのも事実でしょうから難しいところです。
職務と職能の選択肢がたくさんある複合的な雇用社会というのが理想的だと思います。
多元的で複合的な労働社会というのが多分現実的にも合っているのだと思います。そのような多元的で複合的な労働者においていかに労働者の健康と人権を保障していくかが労働法の課題だと思います。とくに後者の視点はまだまだ弱いような気がします。
最後にASの問題や発達障害、そしてその他の精神的な疾患や障害と職業の問題でいえば、それ以前にもっと人生を積極的に前向きに本人が切りひらくためのサポートなり支援なりが決定的に不足しているように思われます。福祉か個人責任かという紋切り型の制度と議論からまだまだ脱していないと思います。
人権を尊重しつつ個人の力をいかに強めるかという視点が必要だと思うゆえんです。

投稿: 赤いたぬき | 2010年5月 5日 (水) 13時34分

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