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2010年5月18日 (火)

エルダー5月号について

高齢障害者雇用支援機構の『エルダー』5月号が、「これからの雇用社会の新たなルールとは何か」という特集で、大内伸哉先生や久本憲夫先生の論考を載せています。

http://www.jeed.or.jp/data/elderly/elder/201005.html

いろいろと論点はあるのですが、ごく簡単に一点ずつ。

まず大内先生の「高齢者雇用について法的に考える─今後の雇用政策の目標」ですが、

http://www.jeed.or.jp/data/elderly/elder/download/2010_05-05.pdf

法的には解雇の自由化などではなく、賃金のフレクシビリティを高めることだというのはいいのですが、

>賃金のフレキシビリティとは、労働条件の変更は、個々の労使の合意によって決められるという合意原則(これは、労働契約法の基本となる原則である)に立ち返ることによって実現していくべきである。就業規則によって一方的な変更をするのは最後の手段とすべきであり、あくまで不利益を受ける従業員のニーズを考慮しながら、粘り強く説得して、その納得を得られるようにするということが、彼らのモチベーションの維持という観点からも重要と思われる。

というところについては、「個々の労使の合意」に基づく労働契約変更ではなく、「集団的な労使の合意」に基づく就業規則(または労働協約)変更の方が本筋だと、ここはあえて(現在の個別合意優先の主流に逆らって)言いたいと思っています。

賃金のフレクシビリティを前提とする以上、「個々の合意」が大事だという理屈は、結局、個々の合意が成り立たなければ契約を終了するしかないという変更解約告知のロジックと裏腹なのであって、どちらを選ぶかということなのではないかと思うのです。「粘り強く説得」云々は当然のことですが、それはたとえば政治家が「粘り強く説得」というのと同じであって、その先どうするかというのがないままではいけないでしょう。

久本先生の「多様な正社員のモデルについて」は、

http://www.jeed.or.jp/data/elderly/elder/download/2010_05-06.pdf

実は、先週土曜日、都内某所で某組織の某プロジェクトで久本先生とご一緒していたときの話そのままなのですが、

>ところが、日本の裁判所、とくに最高裁は「片稼ぎモデル」を前提としている。そのため、「生活上の不利益が転勤に通常伴う程度のものであれば、業務上の必要性は、『欠員補充で本人に適格性あり』、ないしは、『人事異動のルーティーンとして通常のコース』などの通常の必要性でよい。子どもの教育、持ち家、配偶者の仕事などで単身赴任を余儀なくさせるといった事情は、『通常の必要性』と考えられている」3)。この最高裁判決が出たのが一九八六年である。共稼ぎ正社員は夫婦別居を甘受すべきというのが現在の日本の判例である4)。
残業についても、三六協定が結ばれている限り個人は拒否できないというのが日本の裁判所の判断である5)。そのため、子育て共稼ぎ正社員モデルを実現するには、少なくとも一方には「残業なし正社員」あるいは「残業を拒否できる正社員」という範疇が必要となる。さらには「短時間正社員」もありうる。

最高裁が想定する雇用モデルは「幹部正社員・片稼ぎモデル」であり、こうした裁判例が、日本の雇用システムを過度に窮屈なものにしてきた。こうした最高裁の判断によって「正社員の働き方」は法的に画一化していくことになる。これは全国転勤する裁判官自身の職業生活意識を反映しているのかもしれない。そこで、共稼ぎ正社員モデルを実践するには、雇用契約における包括性、より正確には使用者の指揮命令権に制約を課す一方で、賃金水準や賃金決定方式、さらには雇用保障度などに格差をつけるということが必要となるのである。ここでいう「正社員」の基準は「期限の定めのない雇用」と月給制(月給日給制以上)である。安定した雇用と賃金である。これにキャリア展望があれば十分である。

判例の正社員モデルは、実は裁判官自身の人事管理モデルじゃないかという話題で盛り上がりました。

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