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2010年5月25日 (火)

海老原嗣生『課長になったらクビにはならない』

11560 海老原嗣生さんから、新著『課長になったらクビにはならない』(朝日新聞出版)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=11560

>「リストラ、格差、企業は鬼だ!」と騒ぐから、弱った人たちがさらに傷ついていく。「自分の足で生きていけるようになりなさい」という無責任な自律論が、ますます世の中の人々を苦しめるのだ。30歳からのキャリアの正解を、データと理論と実話で語りかける。 転職請負漫画『エンゼルバンク ドラゴン桜 外伝』のモデルとなった人事&雇用のカリスマが暴く〔キャリア幻想論第二弾〕

「30歳からのキャリアの正解」というのは、もちろんある程度以上の規模の会社の総合職正社員にとってのキャリアの正解です。海老原さんの語ることは、その限りできわめて正しいのですが、あとがきで書かれているように「正社員=全員幹部候補」という建前に無理があることも事実で、そこが次作のテーマになるとのことなので、期待して待ちたいと思います。

さて、海老原さんの日本型雇用についての記述はきわめて正確なのですが、表現に若干注文があります。まず何よりタイトルの「課長になったらクビにはならない」。いささかミスリーディングではないでしょうか。海老原さん自身、49頁で、

>要は倒産の危機に瀕している会社でなければ、めったやたらに正社員をリストラすることはない。

一時的な不況で今後回復余地があるのに行われる正社員のリストラは、組織衛生が主目的であり、その対象は、長年のローパフォーマーのみとなる。その数、せいぜい1割。

つまり大多数の人はその対象にならない。

だからたぶん、あなたは会社に残れる。

1割というのは、会社規模をどれくらいで見るかにもよりますが、やや過大のような気がしますが、それにしてもリストラの対象になる側から見ればかなりの可能性であって、それで「だからたぶん、あなたは会社に残れる」というのは、読者を絞りすぎているような気がしないでもありません。

それより、大企業や中堅企業が「めったやたらに正社員をリストラすることはない」というのは、別に課長以上に限ったわけではないのですから、「大多数」「たぶん」ということであれば、「課長になってもならなくても(たぶん)クビにならない」という方が正確でしょう。

逆になまじ課長になってしまったローパフォーマーは、組合が守ってくれないので、そう簡単に「クビにならない」と安心できるとは限らないようにも思われます。

いずれにしても、ワンマン社長が「ワシに逆らう奴はクビじゃ」と喚いている中小零細企業(含むベンチャー企業)ではまた違う世界が広がっているわけなので、あまり一般化しない方がいいかもしれません。

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コメント

浜口さん。おっしゃる通りです。これ、ある程度以上の規模の大卒総合職男子を指してます。これが一つ目。
そして、ローパフォーマー1割(こんなにない、という指摘もその通り!)にしろ、けっこうな数ではあると思います。
この行きすぎたタイトル。目的は二つでした。
1.まずは、課長を目指して、日々目の前の仕事をがんばればそれでいいんですよ、という道筋を示したかった。だから、あえて「課長」をフィーチャーしました。部長、とか、係長だと、距離感的に成立しないので課長とあえてミスリード覚悟で書きました。
2.リストラの実数をこの書では入れておりませんが、次回作では入れてます。大卒正社員で勧奨退職にあう人数は労働力調査ベースだと約3万人。この数自体もずいぶん小さい(企業調査ではなく、本人回答調査なので、「隠している」わけでもないと思われます)。この後は、掛け合わせ推定値なのですが、うち、40代は5000人程度。圧倒的に、20・30代が多いようです。つまり、社長に気に入られないヤツなら、課長になる前にクビになる確率が高いという傍証かと思いました。そうした「早期自然淘汰」により、40代の離職率は抑えられている、という立場です。本書1章にて、40代の低離職率が出ている通りなのです。
いずれにしろ、誤解を招くタイトリングは、気をつけます。ご批評・ご示唆ありがとうございました。今後もよろしくお願い申し上げます。

海老原さん、いつもありがとうございます。

最近、中小零細企業のクビだのいじめだのの分析に頭を突っ込んでいるもので(もうすぐ報告書が出ます)、なかなか頭が切り替わらない面もありますが。

上場してる中堅企業では新卒に対するパワハラとかが横行していますね。

私の友人もそれで体を壊して会社を辞めざるを得なくなりました。

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