『経営法曹研究会報』63号
経営法曹会議より『経営法曹研究会報』63号をお送りいただきました。ありがとうございます。
今号の特集は「非正規労働者の実務対応」です。
設例1は有期契約労働者の雇い止め、
設例2は短時間労働者の均衡待遇、
設例3、4,5は偽装請負、安全配慮義務、個人請負、
設例6は派遣労働者の派遣先に対しての団体交渉
設例7は労働者派遣法改正の行方
といったラインナップですが、このうち派遣先の団交応諾義務の問題をちょっとみますと、
まず、派遣先から中途解約された派遣労働者が派遣元で解雇、労働組合に加入後、派遣先に対し、団体交渉を求めた場合については、派遣先に応諾義務はないとしています。
これに対して派遣先の職場環境に問題がある場合、たとえば、派遣労働者からセクハラ、パワハラの問題で団体交渉を求められた場合は、応じる義務があるとしています。ここまでは大方そういう結論になると思われますが、
問題は派遣法第40条の4の申込義務についての団体交渉です。派遣先企業が申込をしない場合に、組合から申込をしろと団体交渉を申し入れられたらどうするかという問題で、報告者の土方弁護士は「非常に難しいところですが、私としては、団体交渉に応じる必要はないと考えています」と述べ、その理由は「派遣先とは労働契約に基づく使用関係がない。そして派遣労働者に対する雇い入れ義務そのものを負っているわけではない。この申込義務は、私法上ではなく、公法上の義務に過ぎない」ということですが、ここはそう簡単に割り切れるか、なかなか難しいところです。本当に私法上の義務がないのかも問題ですが、団体交渉応諾義務があるかどうかは私法上の権利義務に限られるというわけでもないような気もします。
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