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RIETIの『労働時間改革』

05263 経済産業研究所(RIETI)の『労働時間改革-日本の働き方をいかに変えるか』(日本評論社)をお送りいただきました。ありがとうございます。編者は、鶴 光太郎 , 樋口 美雄 , 水町 勇一郎の3人の方々です。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/10030008.html

目次は

第1章 日本の労働時間改革
第2章 経済学からみた労働時間政策
第3章 日本人の労働時間
第4章 常勤者の過剰就業とワーク・ファミリー・コンフリクト
第5章 労働時間、企業経営、そして働く人
第6章 ホワイトカラー・エクゼンプションの働き方への影響
第7章 ワークシェアリングは機能するか
第8章 労働時間法制の課題と改革の方向性
第9章 ホワイトカラーの労働時間制度の立法的課題
第10章 現場からみた労働時間制度改革

ですが、実は、本書を読みながら、「いやあ、ここまできたか!」としばし感慨にふける思いでありました。

本ブログの長い読者であればご承知の通り、本ブログを始めた2006年から2007年にかけて、ホワイトカラーエグゼンプションが話題になりましたが、世間ではとかく「残業代ゼロ法案」などというフレームアップがまかり通る中で、その中で、「ゼニカネが問題なんじゃない」「物理的労働時間こそが問題なのだ」と何回となく主張しながらも、なかなかそれが通じない実情に、「一人荒野に呼ばわる」思いであったものでありました。

当時、その声を聞きつけて、『世界』や『エコノミスト』、あるいは日経ビジネスオンラインなどが私の主張を載せてくれましたが、なおしばらくは、「ゼニカネよりも時間そのものだ」という主張は、いささか奇異なものでもあるかのように見られていたように思います。

しかし、それから3年以上が過ぎ、世の中の感覚は確実にわたくしが主張していた方向に近づいてきたのだ、と、この本を読みながら感じた次第です。

第1章でRIETIの鶴光太郎氏は、

>第2の柱は、政府が規制を行う場合でも、実労働時間、賃金制度への直接的な規制よりも、肉体的・精神的健康維持・確保の観点からの労働解放時間(休息・休日)への規制を重視することである。労働時間に対する政府の規制・介入のあり方を考えると、健康確保目的の規制は理論的考察や現実的ニーズという視点からももっともよく正当化しうるし、また、EU指令が労働者の健康・安全を労働時間規制の主要な目的として位置づけていることは再度強調されるべき点であろう。

と、まさにわたくしの意を100%表現し、

さらに、これを雇用システムとの関係から次のように正社員の働き方の見直しを提起しています。

>例えば、90年代以降顕著になった(比較的労働時間の短い)非正規雇用の増大については、実は、先行きの不確実性と並んで、「バッファー確保」のための常態的長時間労働をさらに増加させたことは否めない。このように正規・非正規の二極化が進行する裏側で、長時間労働が進行してきた面もあろう。そうであれば、いかなる業務、転勤でも受け入れることが期待されているという意味で「無限定社員」とも揶揄される正規労働者の働き方全般にメスを入れる必要がある。

>例えば、正規労働者の働き方について柔軟性を損ねないようにしながらも何らかの「限定」をつけていくことである。具体的には、職務(ジョブ・ディスクリプション)の明確化である。職務が明確化されていけば、綿密な事後的コーディネーションが必要な「すり合わせ型」の働き方から、そのようなコーディネーションを必要としないように事前に業務をうまく切り分け、自律的な働き方を可能にする「モジュール型」の働き方への転換も可能となる。「モジュール型」の働き方導入は、企業レベルで行うべき労働時間改革の重要な柱となる。

わたくしの言い方に微修正すると、「メンバーシップ型」の無限定正社員から「ジョブ型」の限定正社員に転換することで、ゼニカネではない物理的時間の意味での労働時間を限定することが可能になるということなのでしょう。

本書の各章で、わたくしの著書や論文が何回もリファーされている点から見ても、この領域については、わたくしの議論はもはや孤立した「荒野に呼ばわる」ものではなくなってきていることを感じます。

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受信: 2010年4月24日 (土) 21時43分

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