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2010年4月27日 (火)

駒村康平編『最低所得保障』

0230310 駒村康平先生編の『最低所得保障』(岩波書店)を、生活経済政策研究所よりお送りいただきました。というのは、この本は、あとがきにあるように、生活経済政策研究所の共同研究プロジェクト「最低所得保障のあり方に関する研究会」の成果としてまとめられたものなのです。

http://www.iwanami.co.jp/shinkan/index.html

>貧困問題が深刻化する今,現状に即した所得保障制度の再考が喫緊の課題である.生活保護,児童扶養手当,老齢・障害・遺族基礎年金,最低賃金,雇用保険の失業手当,課税最低限を取り上げ,社会保険,公的扶助,社会手当,最低賃金,税制の組合せによって最低限の所得保障をおこなう制度全体の実態と,これからのあり方を検討・提言する.

ということで、次の目次のような広範な領域をカバーして最低限の所得保障のあり方を論じています。

序章 なぜ,最低所得保障なのか   駒村康平
 1 はじめに
 2 日本の所得保障制度
 3 最低所得保障制度への視座
 4 最低所得保障の国際比較
 5 本書の課題

第1章 最低生活保障実現に向けた生活保護   岩永理恵
 1 複雑化した生活保護
 2 生活保護のしくみと議論の焦点
 3 生活保護の展開
 4 これからの課題

第2章 高齢者の最低所得保障――国民年金と生活保護について   四方理人
 1 はじめに
 2 国民年金の給付水準と生活保護制度との整合性
 3 国民年金と生活保護の受給状況――最低所得保障の包括性について
 4 最低保障年金についての考察

第3章 母子世帯の最低所得保障   田宮遊子
 1 はじめに
 2 母子世帯を対象とした所得保障制度の概要
 3 制度の変遷
 4 児童扶養手当と遺族基礎年金の包括性
 5 母子世帯の直面する固有のリスクを支えるしくみ

第4章 障害のある人に最低所得保障を   百瀬 優
 1 はじめに
 2 障害者に対する所得保障制度
 3 障害年金と,ほかの制度との関連性
 4 障害年金の制度設計
 5 新たな所得保障の構築に向けて

第5章 雇用保険制度における包括性――非正規労働者のセーフティネット  金井 郁
 1 はじめに
 2 包括性からみた雇用保険制度
 3 失業時の最低所得保障の観点から

第6章 最低賃金と生活保護の整合性の再検討   四方理人,金井 郁
 1 はじめに
 2 最低賃金制度の成立と地域別最低賃金・目安制度の確立
 3 最低賃金と生活保護の比較
 4 最低賃金と生活保護の整合性に関する課題
 5 最低賃金と生活保護のあり方について

第7章 課税最低限と社会保障――その役割分担   田中聡一郎
 1 なぜ課税最低限か
 2 復興期・高度成長期――1950年代~70年代
 3 安定成長期――1970年代~80年代
 4 課税最低限をどう考えるか――1990年代~2000年代

第8章 最低生活保障の理念を問う――「残余」の視点から   冨江直子
 1 はじめに
 2 「残余」の制度
 3 生活保護への排除
 4 生活保護からの排除
 5 「最低」であることをめぐって
 6 最低生活保障の「包括性」をめぐって
 7 包摂の制度の構想

終章 最低所得保障制度の確立   駒村康平

補論 生活扶助基準における「世帯規模の経済性」の検討   渡辺久里子

 あとがき

最近『労働市場のセーフティネット』という政策レポートを上梓したばかりのわたくしとしては、金井郁さんの書かれた第5章「雇用保険制度における包括性――非正規労働者のセーフティネット」が、まさに問題意識がぴたりと一致する論文になっています。

http://www.jil.go.jp/institute/rodo/2010/007.htm

「臨時内職的」とみなされたパートタイム労働者が適用除外され続けたことについて、金井さんは特に80年代における高梨昌氏の

>好きな時間帯に働きたいというのが圧倒的多数ですから、果たして好きな時間帯に休んでいる人を失業者と認定できるのかできないのか、これも大変問題があります。

>パートの場合は、離職者を直ちに失業者とみなして給付を行うべきかどうか問題があります。これは派遣労働者の場合にも言えることで、登録型の派遣労働者の場合には派遣期間に9か月の上限が法律上設けられていますが、9ヶ月間被保険者であった後離職した者に失業給付を行うと、9か月働いて3か月給付を受け、また9か月働いて、というような雇用保険法の目的から外れた給付を受ける者が出てくることが十分に予想されます

のような議論を引用し、

>あくまで「家計補助的」であり、通常労働者と同じ「労働者性」「失業者性」を与えることには大きな反発があったと捉えられる。

と評価しています。

その他の章も、最近のわたくしの関心に対応するものが多く、大変興味深く読みました。

たとえば、第3章「母子世帯の最低所得保障」では、最後のこの言葉がまさにその通りですし、

>ただ、危惧されるのは、母子加算の復活をもって低所得母子世帯への給付の重点化が十分行われたと位置づけられることである。母子世帯の大多数が受給している児童扶養手当の拡充が図られなければ、母子世帯の生活水準の底上げは期待できないことは、この章の分析で示したとおりである。

あと、ベーシックインカムについては駒村先生が終章で触れていますが、わたくしが『日本の論点2010』で指摘した「血のナショナリズムを増幅させる危険性」について、第8章の富江直子さんが生活保護と他の社会保障制度の違いに関わって次のように述べていることが大変示唆的です。

>保険料の拠出に対する対価としての給付という意味を持つ社会保険制度は、その仕組みに内在するものとして法の適用対象が限定される論理をもっている。しかし、現に困窮していることだけを基準として給付される公的扶助は、その仕組みに内在的なものとして適用対象を限定する論理をもっていない。そのため、保護の責任を負う国家は、保護への権利を持つものが「無制限に」膨らまないための、いわば歯止めとして、国籍要件を必要とするのである。困窮する誰もが入りうる「最後のセーフティネット」であるがゆえに、”最後の砦”としての国籍要件を必要とするという、逆説的な排除の論理がここにある。

今日ただいま大騒ぎになっている外国人の養子への子ども手当をめぐる問題も、ある意味ではこの普遍的給付であるがゆえに「血」が問題になるという構造を示していると言えるでしょう。

『ベーシックインカム』でわたくしを手厳しく批判された齊藤拓さんがいう「BI論壇で」「真摯に追求されている」「グローバルジャスティス」が、この(次元が低いと斬って捨てたいかも知れませんが、政治力学的には極めて重要な)「血の論理」を(論壇ではなく政治のアリーナで)克服することができるのだろうか、というのが、まさにわたくしが提起した問題であったわけです。

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