使用者責任の性質
京都の塾講師の教え子殺人事件の民事損害賠償訴訟の地裁判決が最高裁のHPにアップされました。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100423104043.pdf
平成22年03月16日京都地方裁判所判決
>学習塾の教室内で,アスペルガー障害と幻覚妄想等の精神病様症状の影響により心神耗弱の状態にあった塾講師により,計画的に殺害された12歳の小学生の両親が,塾講師の使用者であった被告会社に損害賠償を求めた事件において,故意による犯罪行為を犯した塾講師の責任と,塾講師の選任・監督の過失に根拠がある被告会社の責任とは,別途に算定されるべきであるとの被告会社の主張を排斥して,使用者責任が代位責任であることを根拠に,塾講師と同額の責任が認められた事例。
原告の主張、被告の主張、裁判所の判断はそれぞれ次の通りです。
>原告らの主張
本件事件は,被告の経営する本件塾の教室内において,講師と生徒という関係の下で行われたものであるから,被告は使用者責任を負う。また,被告は,Jを漫然と雇用して小学生の指導担当とした上,JのCに対する異常な対応等があったにもかかわらずJの犯罪歴やアスペルガー障害について調査しないなど,本件を未然に防止できる機会を逸したのであり,単なる使用者責任にとどまらず,被告自身の過失責任も重大である。
>被告の主張
被告は,被告に法的責任があることについては争わない。ただし,被告が事前にJの殺害計画に気付くのは困難であったから,本件事件を未然に阻止できなくても,被告の責任が重大であったとはいえない。
被告は,被用者の過失による不法行為につき,使用者が被用者と同等の責任を負う場合があることを否定するものではないが,本件事件は,被用者の故意行為によるものであるという特殊性があるから,使用者の責任を考えるに当たっては,故意による犯罪行為を侵したJ(被用者)と,被用者に対する選任・監督を怠ったという過失に責任の根拠がある被告(使用者)では,その責任の根拠が異なること,被告においては,Cの死亡の結果までは予見可能性があるとしても,Jによる残忍悪質な行為までは予見不可能であることといった点を考慮する必要があり,行為態様の悪質性を殊更に強調して慰謝料を増額することは,予見可能性・法的安定性を害するものである。
>当裁判所の判断
なお,被告は,被用者の故意行為により使用者責任が生じる場合には,使用者が負うべき損害賠償額は,被用者と使用者の責任原因の違いや,使用者の予見可能性が限られることを考慮して別途算定されるべきであると主張するが,使用者責任の性質は,被用者の選任・監督につき帰責性のないことを免責事由とする代位責任と解することが相当であり,使用者は,被用者が負うべき損害賠償額と同額の責任を負うことはやむを得ないというべきであるから,被告の主張は採用できない。
12歳で殺された堀本紗也乃さんのご両親のお気持ちとしては、大変よく理解できるのですが、下手に精神障害者を雇ってしまったら、とんでもない責任を負わされるかも知れないというメッセージを企業側に与えることになるとすると、これは一方で精神障害者の雇用機会をますます狭めてしまうことになるとも言え、なかなか難しいところです。
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アスペルガー=人格障害だなんて…
私はアスペルガーですが、人格障害と一緒にされて困ってます。
こんな偏見に満ちた人たちがいるから、アスペルガーの人たちが働くことが出来ずに路頭に迷っているんでしょうね
実際、発達障害は精神障害と無理矢理診断書を書いて貰うケースも少なくないようです。
私は正真正銘の精神障害も併発しちゃいましたが
映画
投稿: なでしこ | 2010年5月15日 (土) 10時53分
精神障害者がいかに社会で差別
されているか、申し上げましょう







精神障害者はハローワークの障害者雇用では、身体、知的には職がありますが、精神・発達(アスペルガー)には、まず職はありません
健常者と一緒ですが、すぐ馘首されるのがオチです
バイトしている私や友人は、ことごとく馘首→落ち込む→申し込む→仕事をする→馘首の繰り返しで、すぐに履歴書が汚れて仕事が無くなって行きます
しかも、鉄道、航空、バス、高速は、ほとんど身体、知的は半額や無料に割り引いてますが、精神は1/3のみです
仕事がない上に、割引がない…
どうやって生きていけばいいのでしょうか
その上、偏見の目で見られている…。
自殺まで考えてましたよ。本当に
投稿: なでしこ | 2010年5月15日 (土) 11時06分