「協同労働の協同組合法案」への反対論
労働運動関係の旬刊誌『RJ 労働情報』の最新号(790+791号)に、白鴎大学の樋口兼次さんという方が、「「協同労働の協同組合法(仮称)」(ワーコレ法)案に反対!偽装法人、ワーキングプアの温床の危惧「地域主権」で脅かされる労働者の権利」という、かなり厳しい批判を書かれています。
批判点は3つあり、第1の「既存の企業組合でもできるではないか」、第2の「脱税組合が横行する」というのも重要な論点でしょうが、やはり労働関係者としては、第3の「新しい働き方が劣悪労働の温床に」という批判が、最も重要でしょう。
ここでは、わたくしの判断は交えずに、樋口さんの批判を引用しておきます。この批判が正鵠を得ているのか、的外れなのか、正々堂々と議論されることが望ましいと思います。
>第3の問題は、協同労働に従事する組合員の地位が曖昧なことである。新法は労災や失業保険などでは労働者として全面適用させることを要求するのであるが、一方で組合員は経営者でもあるので労組法や最低賃金は適用されず、劣悪な労働環境の温床となりかねない。・・・は、新法は雇用以下の労働条件で働く根拠法となりかねない、と懸念を表明し、同時に労協内部で「雇われ者根性の克服」と称して、労協労働者の経営者的側面を過大に強調していることを指摘して、効率経営への奉仕の強要が行われているようだと労協法へ危惧を表明している。・・・
>ワーコレグループが主張する「新しい働き方」は賃労働を克服する理想としてデザインされているが、今日の社会において十分に検討されているとは言えない。それがフィクションのまま現実化されれば、労働者の味方のはずのワーコレ・労協が働き手に対し労働者以下の劣悪な労働環境を強制して労働搾取してはばからない愚行を演じることになる。議員立法による不十分な検討でこのような法律が成立することに嘆かざるを得ない。
ちなみに、この樋口さんは『労働資本とワーカーズコレクティブ』という本も出されているこの分野の研究者で、いい加減な批判というわけではないように思われます。
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