フォト
2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

« 「協同労働の協同組合法案」への反対論 | トップページ | ナチス観の大転換 »

2010年4月30日 (金)

高井・宮里・千種『労使の視点で読む 最高裁重要労働判例』

Efa64cbbb21d6adcd811afa3045a86ac644 高井伸夫・宮里邦雄・千種秀夫3氏の『労使の視点で読む最高裁重要労働判例』(経営書院)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.e-sanro.net/sri/books/syoin/syj10/syj10_16.html

まえがきで、経営法曹の高井伸夫さんがこの本の由来が書かれていますので、そのまま引用します。

>本書は、「労働判例」916号(2006年9月1日号)~951号(2008年4月1日号)に隔号掲載された連載「最高裁労働判例の歩みと展望」がもとになっている。この度の単行本化のために、当時の原稿に大幅な加筆補正を施し、さらに昨2009年末に出された「パナソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件」最高裁判決(最二小平21.12.18判決、本書159頁参照)も加えて、1冊に取りまとめたものである。

この連載の企画は、私が千種秀夫先生と宮里邦雄先生に予め構想をご相談し、ご快諾頂いたうえで、2005年9月に「労働判例」飯田穣一郎編集長(当時)に提案の手紙をお出ししたことから実現し、飯田氏の定年退職後は、現在の石田克平編集長に引き継がれた。

私がなぜこうした構想を得たかといえば、最高裁労働判例が十分に蓄積され総点検すべき時期にきていると日頃から感じ、それらを労使でともに見直す作業を行うことによって、学者の解説とは別の角度から、労働法実務に些かなりとも裨益するのではないかと考えたからである。

・・・社会の様々な事象のひとつである労働事件が、労働側と使用者側からどのようにとらえられ、労働法の発展にどのように寄与してきたか、そして今後の労働判例の展望はどうなのか、労使の視点を念頭に、生きた勉強の材料を読者に提供できれば幸いである。

取り上げられている判例は、次の21判例です。

[1]労働基準法上の労働者 藤沢労基署長事件
[2]労働時間概念 三菱重工業長崎造船所事件
[3]時間外労働義務 日立製作所武蔵工場事件
[4]過労自殺 電通事件
[5]配転 東亜ペイント事件
[6]出向 新日本製鐵事件
[7]私傷病休職者の職場配置 片山組事件
[8]産後休業等と賞与算定の際の出勤率 東朋学園事件
[9]長期年次有給休暇の指定と時季変更権 時事通信社事件
[10]整理解雇 あさひ保育園事件
[11]有期労働契約の雇止め 日立メディコ事件
[12]偽装請負と黙示の雇用契約の成否 パナソニックプラズマディスプレイ事件
[13]懲戒事由の追加 山口観光事件
[14]就業規則の周知義務 フジ興産事件
[15]就業規則による労働条件の不利益変更 みちのく銀行事件
[16]労働組合法上の使用者 朝日放送事件
[17]労働組合法上の労働者 中日放送管弦楽団事件
[18]組合併存下の中立保持義務 日産自動車事件
[19]労働協約の書面性要件 都南自動車教習所事件
[20]労働協約の規範的効力 朝日火災海上保険事件
[21]労働委員会による救済命令制度の意義 第二鳩タクシー事件

最後のあとがきで、宮里邦雄さんが、

>判例の評価や意義付けについて、期せずして(?)一致していることもあるが、労働側弁護士、使用者側弁護士の立場の違いが現れていることも少なくない。

と述べておられますが、その「期せずして(?)一致」しているようなしていないようなところを一つ紹介しておきましょう。

有期労働契約の雇い止めに関する日立メディコ事件について、宮里さんが労働側からの視点で、

>本判決は、・・・本校の希望退職者募集に先立って臨時員の雇い止めが行われてもやむを得ないとして、雇い止めを有効と判断した。  しかしながら、このような差異が有期労働契約の雇い止めについて当然に許容されるかはきわめて疑問である。

と述べたのに対し、高井さんがひと言で、

>均等待遇になると、雇用関係の解消の場面でも同様に「均等待遇」が取り入れられるから、パートタイマー等の非正規社員であるがゆえに容易に雇い止めできるという構図は否定されることはいうまでもない。  また、正社員の解雇についてもしかるべき理由があれば解雇できる方向に行かざるを得なくなるだろう。

と述べ、また高井さんが使用者側からの視点で、

>現在では、基幹的労働を担う非正規社員がきわめて多く、雇用の安全弁としての性格は希薄化しているから、本判決の論理は、こうした今日的な有期労働契約の労働者には、そのままは妥当しないであろう。彼らには「同一労働同一処遇」の要請が働く結果、当初から雇用期間を限定する趣旨の契約でない限り、業績悪化による雇い止めの合理性は容易には認められないという方向に向かうのではないだろうか。・・・正規か非正規かという雇用の身分にとらわれず仕事の能力・成果で判断することは、「同一労働同一処遇」の理念に基本的に合致する。・・・そのような現代的視点から見ると、本判決の結論は、今となっては、社会的な納得観および適正さの面で大いに疑問があるといわざるを得ない。

と述べるのに対して、宮里さんがひと言で、

>「同一労働同一処遇」の考え方が今後強まるであろうとの指摘、さらに、本判決の結論に疑問を呈し、近い将来、見直されることが予想されるとの指摘には賛同したい。

と賛同しています。

« 「協同労働の協同組合法案」への反対論 | トップページ | ナチス観の大転換 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 高井・宮里・千種『労使の視点で読む 最高裁重要労働判例』:

« 「協同労働の協同組合法案」への反対論 | トップページ | ナチス観の大転換 »