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久本憲夫『日本の社会政策』

84dbef4d108ef146416f22affbc0decd50b 久本憲夫先生の新著『日本の社会政策』(ナカニシヤ出版)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.nakanishiya.co.jp/modules/myalbum/photo.php?lid=646

>失業・非正規雇用・貧困問題から、年金・医療・介護・少子化まで、わが国の直面する社会問題と政策の現状を包括的に解説。社会問題を考える人必携の一冊。

久本先生とは、連合総研の労働者参加の研究会と請負労働の研究会でお世話になって以来、最近でも日本学術会議の大学と職業との接続検討分科会でも、また現在進行中の連合の公正・公平な処遇プロジェクトでもご一緒させていただいており、この間ずっと学ばせていただいております。

本書は、最近の「社会政策」と銘打った書物としては、かなり労働中心の構成になっています。

序 章 社会政策とは何か
     1 社会政策のテーマ
     2 本書の構成

第1章 雇用関係と労働ルール
     1 雇用関係とは何か
     2 労働市場論
     3 公正な労働市場と差別
     小括

第2章 日本的雇用システム
     1 基本要素
     2 雇用関係からみたコーポレイトガバナンス
     3 長期安定雇用システムとは何か
     4 歴史
     小括

第3章 雇用形態の多様化
     1 国際比較
     2 正規雇用の画一化と非正規雇用の多様化
     3 主たる生計のための労働と家計補助労働
     4 派遣労働
     5 請負労働
     6 独立自営業
     小括

第4章 雇用政策
     1 量的雇用政策
     2 雇用平等政策
     3 職業能力開発
     4 外国人労働政策
     小括

第5章 労働時間
     1 労働時間の状況
     2 最低(最長)基準が最高(最短)基準?
     3 残業
     4 その他の労働時間法制
     5 労働時間の現状
     6 年次有給休暇
     小括

第6章 主要国の労働時間
     1 労働協約中心のドイツ
     2 法律による一律規制のフランス
     3 ほとんど規制のないアメリカ・イギリス
     小括

第7章 賃金決定
     1 賃金支払い形態
     2 標準的賃金決定
     3 最低基準=最低賃金
     小括

第8章 企業内賃金決定
     1 春闘
     2 企業内賃金決定の意味
     3 生活賃金
     4 年功賃金と職能給
     5 成果主義化とは何か
     小括

第9章 社会保障
     1 社会保障の種類
     2 社会保障の実際の区分
     3 日本の社会保障の特徴
     4 格差と貧困
     5 福祉国家の類型
     小括

第10章 公的年金
     1 公的老齢年金の歩み
     2 現状――国民基礎年金を中心に
     3 受給年齢引き上げと定年延長
     4 公的年金の課題
     5 主要国との比較
     小括

第11章 医療と介護
     1 公的医療制度の歴史
     2 公的医療制度の種類
     3 わが国の公的医療保険の種類
     4 公的医療制度の負担と社会的公正
     5 介護保険
     小括

第12章 社会福祉と生活保護
     1 障害者の雇用と福祉
     2 一人親の雇用と福祉
     3 生活保護
     小括

第13章 少子化対策とワーク・ライフ・バランス
     1 少子化の現状
     2 家族政策・少子化対策
     3 働き方への対応――ワーク・ライフ・バランス
     小括

おわりに

1章から8章までが労働市場における労働力取引ルールについて、9章から12章までが社会保障・福祉システムを扱い、最後の13章が社会保障から再び働き方の問題に戻るという、円環的構成になっています。

その最後の章の最後の節(ワーク・ライフ・バランス)の最後の項が「多様な正社員の実現」と題されて、

>ワーク・ライフ・バランスは、非正社員をベースに考えられていない。非正社員的働き方とは、雇用の不安定性と職務の限定性を基準としている。夫婦とも非正社員という働き方では、「仕事」による収入の不安定性や水準の低さが通例だからである。

夫婦とも正社員であるとすれば、「職務の包括性」に何らかの制約を課すことが必要である。残業の拒否権・転勤の拒否権などの実体的付与が必要である。現状ではこうした働き方は「非正規雇用」でしか成り立たなくなっている。しかし、こうした拒否権なくして「仕事と生活の両立」は成り立たない。もちろん、こうした実体的な拒否権を従業員に認めるとすれば、賃金水準がある程度低くなるのはやむを得ない。そうした選択肢を作ることは、企業にとっても決して悪いことではない。

>・・・こうして考えると、雇用関係において必要なことは、、多様な正社員像の獲得であることが分かる。ワーク・ライフ・バランスを実現するには、「限定的な正社員」の獲得による夫婦対等の共稼ぎモデルの主流化が必要である。・・・

このあたりの問題意識を、わたくしなりに書いたのが、先日の「ジョブ型正社員の構想」であるわけですが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo0225.html

現在、連合の公正・公平プロジェクトで議論されているのも、まさにこのあたりの問題であるわけです。

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