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2010年4月 9日 (金)

『JP総研Research』9号

Jp 日本郵政グループ労働組合のJP総合研究所から『JP総研Research』3月号(第9号)をお送りいただきました。

http://www.jprouso.or.jp/activity/lab/publish/index.html

特集●国民が求める郵政改革

3 標準化と地域特化の複合型金融サービスを― 人間は利己心のみでは行動しない、人間はコミュニティを求める(ピーター・ドラッカー) ―東京国際大学(TIU)学長 田尻 嗣夫

16 引き返せない「国策の蹉跌」― 市町村合併と地域社会 ―福島大学 行政政策学類 教授 今井 照

22 郵便局と自治体の連携・協働立正大学 法学部 教授 山口 道昭

28 郵便局を活用した地域コミュニティの再生― 郵政見直し後の郵便局の事業戦略 ―学習院大学 経済学部 講師 武井 孝介

という特集でして、わたくしはこの分野には詳しくないので郵政改革自体については特段のコメントはする能力はないのですが、最初の田尻さんの論文の中に「金融排除」(ファイナンシャル・エクスクルージョン)という言葉が出てきて、社会的排除の問題とつながってくるところがあり、いささか興味を惹かれました。

この田尻さんの論文は、リンク先に全文アップされていますので、読めます。

http://www.jprouso.or.jp/activity/lab/publish/pdf/09_1.pdf

その中で「欧米で広がる「金融排除」は日本も例外ではない」と述べ、

>世界的な市場経済化のなかで起きているこうした金融排除は、所得格差や教育格差の拡大などとともに社会的疎外を加速する重大な問題とみなされつつある。イギリスの国際金融学者A.ウオルターは、金融の市場経済化とそれによる金融革新が特定のグループ・階層にのみ利益を与える形で進行し、①小口預金者よりも洗練された金融資本に、②米国ではリテールバンキングを本業とする商業銀行よりも証券会社・投資銀行に、③国内定着型の企業・地場産業よりも国際的に移動可能な大企業・産業に、④製造業では、移動しない労働者よりも知的に熟練したホワイトカラーに――より大きな利益をもたらしていると分析している。

郵便と小口・個人の金融機会は、現代の経済社会において人間的な暮らしを営むことを可能にする必要不可欠のパスポートである。また、こうしたリテールバンキングをめぐる国際的な情勢からも、郵政三事業は国家の権力的な介入を排除し個人の自由を保障する「自由権」概念からではなく、生存権や勤労の権利、教育を受ける権利等と同じく国家が国民に保障すべき「社会権」概念に基づくナショナル・ミニマムとして制度設計されるべきは当然である。

と論じています。実際、EUの社会的排除の議論では金融排除が大きく取り上げられてきていますし、「小口・個人の金融機会」が「生存権や勤労の権利、教育を受ける権利等と同じく国家が国民に保障すべき「社会権」概念に基づくナショナル・ミニマムとして制度設計されるべき」というのはもっともだと思うのですが、それが郵便局でなければならないかどうかは、また別の議論のような気もします。

このあたり、協同金融をどう考えるかとか、金融のセーフティネットはどう張り巡らされるべきか、といった議論とつながると思うのですが、現時点ではわたくしに論ずるだけの素養がないので、とりあえず紹介にとどめておきます。

欧州委員会の金融排除に関する政策文書では、マイクロファイナンスなどのオルタナティブな商業金融機関や非営利金融機関の役割を強調するとともに、すべての市民が銀行口座を持てるようにする法規制(「ベーシック銀行口座」)などが取り上げられていて、郵便局を金融セーフティネットに使おうという考え方は出てこないのですが、これは両国の風土の違いなのかも知れません。

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