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2010年4月 5日 (月)

CIETTの厚労相宛書簡

国際人材派遣協会連合(CIETT)が、日本国厚生労働大臣および副大臣宛に、労働者派遣法改正案への懸念を表明する書簡を送っています。

http://www.ciett.org/index.php?id=110&tx_ttnews[tt_news]=107&tx_ttnews[backPid]=1&cHash=2bb9ab0e39(Ciett President writes to the Japanese government on its plan to reform TAW regulation)

>In his letter sent to the Japanese Minister of Labour and three other high governmental officials, Horacio De Martini states that Ciett is very much concerned with potential amendments of the Worker Dispatch Law that the Japanese Government is willing to put forward. Indeed, some measures being discussed at the moment might be counterproductive and might not reach the objective of the reform to improve the functioning of the labour market in Japan and to ensure a better protection of temporary agency workers.

「非常に憂慮しています」と、日本人材派遣協会HPに掲載された邦訳では訳しています。

ここから先は、この邦訳版で見ていきますが、基本的に、CIETTの本拠であるヨーロッパ諸国における派遣事業を前提に書かれているので、読んでいくと違和感を感じられるかも知れません。

http://www.jassa.jp/admin/info/upload_image/100331letter(j).pdf

>派遣契約の利用は正社員契約の代用ではないので、製造部門における派遣の禁止は、より多くの正社員雇用には結びつかないでしょう。
派遣先が派遣を使う理由は、季節的な要因や予定外の繁忙期による生産活動のコントロール及び病欠や退職に対する労働力の充足や欠員補充としての受け入れ、新製品や新企画への対応のためです。

じゃあいよぎん事件は何なんだよ、という突っ込みがすぐに入りそうですが、逆にそういう使い方があるがゆえに派遣を全否定すべきでないのも明らかであるわけで、きちんとした仕分けと、派遣という働き方を適切な場合に向けていく政策こそが求められるのだと思いますが、なかなかそういう風には物事が動いていかないのですね。

>派遣会社は失業から雇用に至るまでを助ける仲介者です。多くの国で、失業者が派遣で働くことによって、雇用に結びつきました。派遣で12 ヵ月働いたあとの就職率はフランスでは6%→75%、ベルギーでは44%→77%です。

このあたりも、日本における派遣事業の使い方が適切でなかった点なのでしょう。

さらに、これは本ブログで繰り返し強調してきたことですが、

>日本の労働市場のためにしなければならない主なことは、労働側の要望する派遣労働者保護の必要性と使用者側の要望する労働力の柔軟性を調整することです。世界の多くの地域で、政府は派遣に関する重要な規制を定義するために、ソーシャルパートナー(労働組合)と協働しました。

ソーシャル・パートナーとは労働組合だけじゃなく、使用者団体、つまり人材派遣協会自らのことでもあるんですけど・・・。というか、まさに派遣に関わる労使協議がいまようやく始まったところであるという点に、このCIETTの書簡がまことに正しいことを言っていながら日本で読むとなんだか嘘くさく見えてしまう理由であるわけです。

>EU では、派遣労働指令が2008 年に採用されて、現在、EU 加盟国レベルで実行されています。指令の序文では、「(中略) 労働市場において雇用創出と、労働市場への参加と統合に貢献します。」という一文にある通り、労働市場がより良く機能するためには派遣が有用な役割を果たすことを認めています。
指令はフレキシビリティ(加盟国は派遣の使用に不正な制限(例えばある分野での禁止)があれば取り上げる義務がある)を提供することと、セキュリティ(一部分を除き同一賃金に基づく賃金水準を派遣労働者に保証する)のバランスを取りました。

これは、わたくし自身がいくつかの論文で紹介してきたとおりです。(ちなみに「不正な制限」というのは意味不明ですね。”unjustified restrictions”は「正当化できない制限」です。)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/ooharahaken.html(『大原社会問題研究所雑誌』2009年2月号「EU労働者派遣指令と日本の労働者派遣法」)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/euhaken.html(『季刊労働法』225号「EU派遣労働指令の成立過程とEU諸国の派遣法制」)

>Ciett は、日本政府から派遣労働者のためにフレキシビリティとセキュリティのバランスをうまくとった国の事例等を提供し、そして、相談を受けることを光栄に思うことでしょう。また、そのことで、労働市場における正社員雇用と派遣労働者間の否定的な分裂を避けることができます。

そう、わたくしもそれができるはずだと思います。そのためにも、こういうCIETTの主張が嘘くさく見えてしまう日本の今までの現状への反省と、それを踏まえた望ましい派遣労働市場の確立への決意表明が求められるのでしょう。

しつこいようですが、派遣業界を代表して規制改革会議や労働政策審議会に出ていた方が、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_e152.html(雇用融解または奥谷禮子氏インタビュー完全再現版)

>-社長は審議会の席上でもILO(国際労働機構)に対して、かなり厳しいご見解をおっしゃっていますね。

>あれは後進国が入っているところで、ドイツにしてもアメリカにしても、先進国はほとんど脱退しているわけですよ。。何で労働側はILO、ILOと金科玉条の如くILOを出してくるかというと、それしかよりどころがないわけです。先進国は先進国なりのオリジナルなものを作っていくべきですよ。

というようなことを言っておいて、今になって、

>日本が批准した ILO181 号条約で規定されているように、労働市場でうまく機能していると思われる派遣労働については、認めるべきであり、そして、法による規制は以下の諸点を考慮に入れるべきです。

という文字通り100%正しいことを言ってみてもなあ、という感情的次元を拭い去るには、やはりそれ相応の行動が必要になるのであろうということでしょう。

(4月7日追記)

本ブログをご覧頂いた人材派遣協会の方が、早速「不正な制限」を

http://www.jassa.jp/admin/info/upload_image/100331letter(j).pdf

>指令はフレキシビリティ(加盟国は派遣の使用に正当化できない制限(例えばある分野での禁止)があれば取り上げる義務がある)を提供することと、セキュリティ(一部分を除き同一賃金に基づく賃金水準を派遣労働者に保証する)のバランスを取りました。

と修正されたのですが、それだったらもっとちゃんと言っておいた方が良かったな、と思いました。

http://www.ciett.org/fileadmin/templates/ciett/docs/Public_Affairs/Letter_to_Japanese_Government_-_March_2010.pdf

>The Directive has reached the right balance between, on the one hand, the need to provide flexibility (with an obligation for Member States to lift unjustified restrictions to the use of TAW, like sectoral bans) and, on the other hand, security (by guaranteeing agency workers a wage level based on equal pay but with a certain number of derogations).

「lift」は「取り上げる」じゃなくて、「撤廃する」です。正当化できないような派遣事業に対する制限は撤廃せよ、という、まさに人材派遣協会としては最も重要な、政治家やマスコミに対してもっとも強調すべき点を表現する最重要のキーワードでありますので、ここはちゃんと修正しておいた方が宜しいかと思います。

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