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« 『進歩と改革』に拙著書評 | トップページ | この法律で定める労働条件の基準は最高のものであるから・・・ »

2010年3月14日 (日)

労働の消費者は使用者です、もちろん。

mojix氏のこのエントリ、云ってることはおおむね正しい。というか、おおむね賛成。

http://mojix.org/2010/03/14/shouhisha_dokusai(日本は「消費者独裁国家」である)

>日本ではつねに「消費者が善」だ。

学校に文句を言う「モンスターペアレント」。
企業にわがままを言う「モンスター顧客」。
病院に世話をやかせる「モンスター患者」。

サービスを受ける消費者は「絶対善」であり、
サービスを提供する側は、そのコストとリスクをかぶる。

全くその通り!そこに日本社会の病理の相当部分があるのは確か。

本ブログでも、結構取り上げてきましたね。

ところが、この的確な認識が、こと「労働」に関わると、突如としてひっくり返ってしまうところが、mojix氏の奇妙なところです。

>雇用であれば労働者が「善」、会社が「悪」。

経済学の初等教科書を引くまでもなく、労働の供給者が労働者であり、労働の消費者が使用者であります。

そして、労働分野においても、他の分野と同様、「お客様は神様です」という消費者独裁主義がまかり通り、無制限労働供給が正義として強要されるところにこそ、もろもろの歪みの原因があるわけで、このあたりをいささか斜め後ろから冷笑的に批評しているのが、本ブログでも何回か取り上げてきた

http://kusoshigoto.blog121.fc2.com/ニートの海外就職日記

だったりするわけですが、たとえばここに現れているような「大変申し訳ありませんが、今度の金曜日にお休みをいただいてもよろしいでしょうかw?」という労働の供給者がえらく申し訳なさそうで、労働の消費者が大変偉そうな姿こそが、

>サービスを受ける消費者は「絶対善」であり、
サービスを提供する側は、そのコストとリスクをかぶる

のいい典型例じゃないか、と言う風に、素直に話が進まずに、なぜか労働供給者と労働消費者が入れ替わってしまって、

>雇用であれば労働者が「善」、会社が「悪」。

なのがけしからんという論調に転調してしまうあたりが、mojix氏の不思議なところです。

実際、

>学校に文句を言う「モンスターペアレント」。

に現実に悩まされているのは、教育労働サービスを提供している教師という名の労働供給者であり、

>企業にわがままを言う「モンスター顧客」。

に現実に悩まされているのは、当該企業の財やサービスを生産している当該企業に雇用されている労働者であり、

>病院に世話をやかせる「モンスター患者」。

に現実に悩まされているのは、医療サービスを提供している医師や看護婦といった労働供給者であるわけなんですが、

そして、地方公務員であるマシナリさんの指摘されるように、

http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-376.html会計検査院とオンブズマンが作る世界

>オンブズマンや会計検査院の指摘によって役所がブラック企業化していく状況が想像していただけるのではないかと思います。たとえば、だいぶ前に当時の上司と勤務時間を巡って口論になったことがありまして、こちらからは労基法の規定とか判例とかを持ち出して「そういうのって、法律や判例で認められた労働者の権利を一切認めないっていうことなんですかね」と聞いたところ、「お前になんて言われようと、俺はオンブズマンに申し開きの立たないことはしない! 訴えたいなら訴えろ!」といわれたことがあります。その上司曰く、「オンブズマンに訴えられたら自分の役人生命は終わりだが、部下からだったら訴えられても痛くも痒くもない」んだそうです。すばらしきブラック企業ですね。

と、こういう労働消費者側のモンスター症候群によって労働供給者がブラック状態に追い込まれていくという事態は公私を問わず進んでいるようもありますが、

ま、いずれにせよ、「絶対善」とされる消費者のモンスター化によって供給者がブラック状態に追い込まれるという事態を的確に指摘されているはずのmojix氏が、こと「労働」という二文字を見たとたんに論理が反転してしまい、突如モンスター側に与してしまうというのは、なかなか常人には理解しがたいところというべきでありましょう。

mojix氏のロジックをまったくそのまま一点の変更もなく労働力の供給者と労働力の消費者に適用すると、mojix氏の言葉は次のようにならなければなりません。もし一点でも違いがあれば、それは論理矛盾となります。すなわち、

>日本は「使用者独裁国家」である

>日本ではつねに「使用者が善」だ。

部下に文句を言う「モンスター上司」。
労働者にわがままを言う「モンスター経営者」。
社員に世話をやかせる「モンスター社長」。

サービスを受ける使用者は「絶対善」であり、
サービスを提供する労働者は、そのコストとリスクをかぶる。

実のところ、私自身は日本がそこまでひどい社会だとは思っていませんが、とはいえ特に最近なにがしかそういう傾向があるのは確かでしょう。でも、あそこまで大見得切ったmojix氏は、そういう中途半端じゃだめですよ。「使用者独裁国家」と云わないと自己矛盾で爆裂してしまいますよ。

ついでに一言付け加えれば、こういうモンスター使用者から労働力供給者が自己防衛するために労働組合という名のギルド組織は必要なんです。

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