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登録型派遣で事前面接をしてはいけない本当の理由

小倉弁護士から下の記事に、事前面接禁止の理由が容姿差別であるという趣旨のコメントがつきましたが、もしそうならそれは直接雇用の面接にも言えるはずだと解答しておきました。

では、労働者派遣に事前面接を禁止する理由はないのかというと、ちゃんとあります。それは労働者派遣という仕組みそのものに内在する問題です。

これについては、昨年神戸大学で開かれるはずだった日本労働法学会で発表するはずだった報告の中で簡単に触れていますので、その部分を引用しておきます。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/gakkaishi114.html(請負・労働者供給・労働者派遣の再検討)

>2 登録型派遣の本質

今日問題となっている登録型派遣とは、そもそもいかなるビジネスモデルなのだろうか。

実をいうと、登録型派遣事業が労働者派遣法でいう「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」という労働者派遣の定義に該当するかどうかは疑問の余地がある。登録型派遣事業の場合、少なくとも派遣の注文を受けた段階では「自己の雇用する労働者」ではない。その労働者が「自己の雇用する労働者」になるのは労働者派遣が開始される時点だからである。ところが、そこから過去に遡って、まだ「自己の雇用する労働者」ではなかったはずの者を「自己の雇用する労働者」であったかのように見なして、その配置行為として派遣が行われるという法的構成をとっている。このような法的構成が可能なのは、派遣の注文を受けて適当な派遣労働者を登録されている者の中から選び、その者を労働者派遣するという意思決定をして、実際にその者が派遣先に行って就労を開始するという一連の流れを、時系列に沿って発生する事象ととらえずに、すべて同時に発生するものと見なしているからであろう。極めてアクロバティックな論理であるが、そのような構成をとらなければ、登録型という労働者派遣形態が労働者派遣法に定める「労働者派遣」ではなくなってしまう。

 しかしながら、このようなアクロバティックな法的構成に基づいた法律上の概念規定は世間的には決して一般的なものではない。むしろ、登録型派遣とは使用者責任を派遣元が負ってくれるというサービス付きの職業紹介であるという認識のほうが一般的であるように見える。このような認識は、2007年末に規制改革会議が公表した規制改革要望の中で、全国地方銀行協会が事前面接の解禁を求めた際に、「事前面接を解禁することで、雇用のミスマッチが解消され、求職者・求人企業の双方の利益につながる」と述べていることからも明らかであろう。経営側にとっても、派遣先は「求人企業」であり、派遣労働者は「求職者」なのである

世間の常識からすれば、このほうが働くということの道理にかなっている。派遣先で働く生身の人間に会ってはならないなどというのは、いかにも非人間的である。しかしながら、この規制は派遣先と派遣労働者の間に雇用関係を成立させないための人為的な規制である。現実に派遣先で働く生身の人間に、にもかかわらず派遣先とは一切雇用関係がないと突っぱねるための法的装置であり、現実には派遣先が当該職務に適格な労働者を雇い入れようとする行為であるにもかかわらず、それを唯一の使用者である派遣元の配置転換に過ぎないという法的仮構を貫くための防波堤なのである。

 常用型派遣事業であれば、派遣の注文を受ける前から既に派遣元の「自己の雇用する労働者」なのであるから理屈は立つ。しかしながら登録型派遣事業の場合、まだ派遣元の「自己の雇用する労働者」になっていない者を派遣先が面接して就労を決定してしまった後で、派遣開始と共に派遣元が雇い入れたから過去に遡って面接の時点でも派遣元の「自己の雇用する労働者」であったことにするのは困難であろう。登録型派遣事業において事前面接を解禁することは登録型がよって立つ論理的基盤そのものを失わせてしまうことになる

つまり、まだ派遣元と雇用関係のない登録者と派遣先が事前面接して「この人!」と決めてしまったら、それが採用行為ではないというのは難しいからなんですね。「登録型派遣事業において事前面接を解禁することは登録型がよって立つ論理的基盤そのものを失わせてしまう」のです。

逆に常用型の場合、形は出向と同じで、自分の雇用している人を派遣先に会わせて、「この人!」と決めてもらっても、自分の雇用している人であることに変わりはないのですから、登録型の規制におつきあいして禁止しなければならない理由は、少なくとも派遣法内在的にはありません。

容姿による差別がけしからんという論点はそれとして議論すべきですが、その際には直接雇用における容姿差別も含めて議論がされるべきでしょう。

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