『人材ビジネス研究-6年間を振り返って』
東京大学社会科学研究所人材ビジネス研究寄付研究部門のパンフレット『人材ビジネス研究-6年間を振り返って』をお送りいただきました。
3月10日のエントリで紹介した『実証研究日本の人材ビジネス』(日本経済新聞社)がアカデミックな研究成果のとりまとめとすれば、こちらは一般向けの雑誌記事をあつめたポピュラー版でしょうか。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-c8e2.html
アデコの雑誌に載った佐藤博樹先生の記事から始まって、『ものづくりサービス』に連載された佐野嘉秀、高橋康二、木村琢磨さんらの記事、コールセンター関係の雑誌に載った仁田道夫先生の記事、『月刊人材ビジネス』に載った高橋康二、堀田聡子さんらの記事、最後は文部科学省の雑誌?に載った佐藤先生の記事、という具合で、一通り読むと、この人材ビジネス研究の全体像が浮かび上がってくるようになっています。
最初のアデコの雑誌の佐藤先生のインタビュー記事から、とても大事なことを述べているところをピンポイント的に。
>そもそも、正社員と非正規社員の違いとは何でしょうか。
正社員の働き方の本質は「無限定」雇用が基本です。仕事の内容、働く場所、労働時間が基本的に無限定です。・・・
一方、派遣スタッフを含めた非正規社員の本質は「限定」雇用にあります。業務内容、働く場所、労働時間、さらに雇用期間などが限定されています。・・・
>自ら非正規社員という働き方を積極的に選んでいる人が多くいると思うのですが。
その通りです。正社員が良いというのは、先ほどの「無限定」という働き方がよい、望ましいと主張しているに過ぎないことを認識すべきです。では、「限定」という働き方を選ぶことが間違っているのでしょうか。・・・
問題は、
>非正規社員の雇用は不安定だと言われます。しかし、通常、企業は職場限定や仕事限定で、雇用期間を無期で雇用することができません。「この事業所の経理として定年まで雇います」といった雇用は、「その仕事がなくなった場合は雇用契約を解除できる」という社会的な条件がないと実現は困難です。日本では実態としてそれが難しいのです。
というところなのでしょうが、実は、法制的にはそういうジョブ限定、場所限定の無期契約というのはできないわけではありません。ただ、日本社会で「正社員」というと「無限定」がデフォルトなので、わざわざ限定するよ、と明示しないと、無限定と見なされてしまいます。ここから「ジョブ型正社員」の構想という話が必要になってくるわけです。
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