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2010年3月11日 (木)

政策レジーム論によるNIRA報告書「「市場か、福祉か」を問い直す」

総合研究開発機構(NIRA)から公表された報告書「「市場か、福祉か」を問い直す-日本経済の展望は「リスクの社会化」で開く-」は、エスピン・アンデルセン流の福祉レジーム論を駆使して、日本の経済社会のあり方を大胆に提言した骨太の報告書で、是非とも多くの政策に関わる方々に読まれる値打ちがあります。

http://www.nira.or.jp/outgoing/report/entry/n100305_426.html

サマリーは:

http://www.nira.or.jp/pdf/0906summary.pdf

本文は:

http://www.nira.or.jp/pdf/0906report.pdf

一言で言うと、

>20 年近くほぼ一貫して続く日本経済の長期停滞は、少なくとも「生活水準の低下」、「生活、雇用、老後などに対する不安・リスクの増大」、「所得格差の拡大」という点で家計に悪影響を及ぼしてきた。このうち、多くの経済学者、政策担当者などは所得格差の拡大に着目するが、本研究会では、家計や個々人が抱える不安・リスクの増大に着目する。その上で、「個人」が過重なリスクを負担する社会から、「社会」が公平にリスクを負担する社会へシフトするための制度設計、つまり「リスクの社会化」を柱とした政策体系へのシフトを提言する。

ということなのですが、それをレジーム論を用いて、こう説明するんですね。

>日本の政策レジームは、政府による所得再分配機能が弱い点では自由主義レジームの特徴を、また、家族や企業などの組織による共同扶助を重視している点では保守主義レジームの特徴を有している。

これは社会学や政治学の議論でもよく指摘されることですね。

>日本の政策の欠陥は、以下に示すレジームとしての未完結性である。すなわち、自由主義レジームとしてみたときは、市場メカニズムを活用したリスク・シェアの整備が不十分であり、また、保守主義レジームとしてみたときは所得再分配が不十分である。その結果、リスク・シェルターの機能を果たす「共同体(=家庭や企業など)」から外れた一部の個人にリスクがしわ寄せされている。

つまり、自由主義レジームと保守主義レジームの「いいとこ取り」どころか「悪いとこ取り」になっていると。

このあたりの具体的な描写は本文をお読みください。

で、この報告書は

>日本の目指すべき方向性-社会民主主義レジームと自由主義レジームの折衷案に移行すべき

と、別の組み合わせの「いいとこ取り」にしようというわけです。具体的には、

>① 保守主義レジームからは脱却すべき-「共同体」によるリスク・シェアは限界
企業間の国際競争が激化する中で、強い雇用規制を課すことで国内企業に過度な雇用コストを担わせることには限界がある。これは、経済のグローバル化に対して背を向けずに、成長の機会として取り入れていくことでもある。

② 社会民主主義レジームから参考にすべき点 -公平性の重視
社会のリスクを一部の弱者にしわ寄せするのではなく、男性・女性、正規・非正規社員、青年・壮年・老年がともに公平にリスクを分かち合う社会を構築することが重要である。

③ 自由主義レジームから参考にすべき点 -効率性の重視
企業に対してリスク・シェルターとしての過度な役割を期待するのではなく、規制緩和に伴う競争力の強化により、経済成長によるリスク軽減の達成に軸足を置くべきである。

「社会民主主義レジームと自由主義レジームの折衷」という言い方をしていますが、そもそも資本主義社会である限り、自由主義的要素がないなどということはあり得ないし、社会民主主義レジームの典型とされる北欧諸国にしたって、まさに「市場メカニズムを最大限に重視した政策を実現する。と同時に、市場での競争を支えるインフラ整備を行」ってきているわけで、その意味では「折衷」でない社会民主主義なんて現実には存在しないと思います。

政府の再分配機能が弱いという点に関する限り、明確に自由主義レジームからの脱却を主張しているわけですから、少なくとも、今までの自由主義レジームを残しながら残りの保守主義レジームを社会民主主義レジームに置き換えようなどという話ではないことは明らかです。むしろ、政府の再分配機能が弱いという側面の自由主義レジームからは明確に脱却し、企業共同体に依存することによって生じていた自由主義的要素の弱さをむしろ強化しようという趣旨でしょう。

結局、この報告書の提言は、企業共同体によるリスクシェアから政府による公平なリスクの社会化へ、ということに尽きるわけで、その観点からは一貫した主張だと言えます。

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