日本経団連の「産業構造の将来像」
少し前ですが、日本経団連が「産業構造の将来像-新しい時代を「つくる」戦略」という提言を、1月19日付で発表していました。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2010/005.pdf
題名だけ見ると直接労働問題に関係なさそうなのでそのときはきちんと見ていなかったのですが、よく読むと48ページから「ものづくりを支える労働市場の整備」という一節があり、労働政策のあり方についても述べていたんですね。
なかなかいいことを言っていますので、ここに引用して、多くのみなさんに読んでいただきたいと思います。
>雇用問題などが原因となり将来不安が高まることのないようセーフティネットの確保などを進めていくことが肝要である。例えば北欧などの国々では労働市場の柔軟性を維持する一方で、失業者に対し技能や技術を磨くための職業訓練の機会を提供し、手に職をつける施策を展開している。雇用のセーフティネットの強化を通じて社会全体で雇用の安定を実現し、将来不安を払拭していくことも欠かせない。そのためには諸外国の政策を研究し、それをベンチマークとしてわが国に相応しい政策を構築していくことが必要である。また、公的な職業訓練プログラムの充実など能力開発施策の拡充や、求人開拓・キャリア・カウンセリング機能の強化・サービスのワンストップ化といった職業紹介機能の整備などを進め、雇用のミスマッチの解消と労働移動の円滑化を図っていくことも有用となる。労働市場の柔軟化という点では、年金をはじめ現在の社会保障制度は長期雇用を前提とした枠組みになっている向きもあり、今後はこうした点も見直していかなければならない。
日本経団連はこういう事がちゃんと分かっているのに、そのお筆先みたいな顔をしながら、全然職業訓練機能や職業紹介機能をはじめとした労働市場のセーフティネットの重要性が分かってない連中が多すぎるのが困ったことなんですが。
>一方で、多様化する労働者のニーズを踏まえる形で、幅広い就労機会を拡大していくことも必要となる。これまで、労働者派遣制度や有期労働契約などは、労働者ニーズに対応した働き方の選択肢を増やし、就労機会の拡大に寄与してきた面もある。現在、派遣制度を巡っては、大幅な規制強化が行われようとしているが、制度に問題点があれば必要に応じ見直すとしても、その方策としては、優良な派遣事業者が活躍できるような環境整備を行い、派遣制度をより健全なものに育てていく視点が肝要である。こうした取り組みは、労働者の就労機会の拡大を通じた雇用の安定にも寄与することになる。
ここは、ある意味で実に正しいことを言っているのですが、今まで日本経団連をはじめとする経営側が「派遣制度をより健全なものに育てていく」方向で一生懸命やってきたのか、規制緩和さえすれば、労働者保護なんて余計なものはなくてもいいじゃないか、みたいな連中をはびこらせてこなかったのか、という点を、きちんと反省する必要があることもたしかでしょう。
今後ますます市場のフラクチュエーションが大きく激しくなる中で、その時々の労働需要の変動に即応して労働力を供給できるメカニズムの必要性は高まることはあってもなくなることはありません。問題は、そういう需要に応じて供給される労働者が、不当な不利益を被ることなく安心して働き続けることが出来るような社会的仕組みをきちんと造り上げていくことで、それが出来ないままだったからこそ、「派遣村」というフレームアップも行われたし、今現在進みつつある登録型派遣の原則禁止というような法政策も生み出されてきてしまっているわけです。
一番いけないのは、労働者保護や労働組合を敵視するようなたぐいの連中に、経営側のイデオローグのような顔でしゃしゃり出るのを許してしまうことで、そういう徒輩を経営側自らがきちんと叩いておかないと、日本経団連もそういう連中と同じ輩だと思われかねません。
労働者派遣事業をはじめとする労働市場サービス事業がそこで働く労働者にとっても望ましい将来性ある業界として発展していくためには何が必要なのか、この文書を見る限り、日本経団連はちゃんと分かっているようです。あとはそれを行動に移していくことだと思います。
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