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« 『POSSE』第6号でhamachanも槍玉に!? | トップページ | 松井保彦『合同労組運動の検証-その歴史と論理』 »

2010年2月27日 (土)

「死ぬ気で仕事をしろ」と「葬式はいやだなあ」の間

yellowbellさんの「背後からハミング」に、その昔労使懇談会のときに実際に遭遇した話が載っています。そのやりとりがあまりにもリアルなので、思わず全文引用してしまいます。

http://d.hatena.ne.jp/yellowbell/20100225死ぬ気と擬音と二つの葬式

>営業部長「上半期スタートは極めて低調で、来月までに取り返しておかないと夏のボーナスは出ない」

書記長「巻き返しのための具体的方策はあるのか」

営業部長「それは君たちが死ぬ気になってもらうしかない」

委員長「前期の追い込みで現場の疲労はたまっている。死ぬ気と言うが、本当に従業員が過労死すれば企業にとってダメージになる」

総務部長「大げさだ。あの程度の働きで死ぬことはない。まず死ぬ気を出してから、死にそうだと言ってもらいたい」

書記長「話が抽象論になっているが、再度聞きたい。巻き返しのための方策はあるのか」

常務「それは、とにかくドンドンやればいい」

書記長「? 何をやるのか」

常務「だから、仕事をドンドンやるんだ」

書記長「?? 具体的にどうやるのかという話だが」

常務「具体的には、ガンガンやるんだよ」

書記長「それがどのようなものであるのかを聞いている。営業部長に聞くが、ガンガンやるとは具体的にどういう方策なのか」

営業部長「死ぬ気で仕事をしろということに尽きる」

委員長「埒が明かない。全力で仕事をするにしても、どこに向かって力を出せばいいのか」

常務「だから、そこをガンガンやればいいんだ」

書記長「??? そことは、どこ?」

常務「方策をだよ!」

社長「…葬式はいやだなあ」

一同「は?」

社長「前の会社のときにね、従業員が亡くなったんだよね。キャンペーンの後だったからね、過労だって話も出てさ」

社長「労基署は入らなかったんだけど、自宅で突然死だったから労災にもしてなくてね。お葬式行ったんだけど、小さな子がいてさ。奥さんは泣きっぱなしで、ご両親も逆にご迷惑かけてって頭を下げるくらいだったんだけどねえ」

社長「ところが直属の上司が焼香に上がったら、奥さんがものすごい剣幕で『出ぇてけえぇ!』ってねえ…」

社長「それがさ。すごい声でねえ。美しい奥さんだったんだけど、そりゃあすごい声だったよ」

社長「それからしばらくしてさ。その上司の人が辞表を出してね。あのとき、受け取っとけばよかったんだけどね。受け取らなかった。お前のせいじゃないんだからって。そしたら、死んじゃったんだよ。これが、自殺でねえ」

社長「うわあまた葬式だ、と思ったら、今度はご家族が来てくれるなと言うんだね。そういうわけにもいかないから、大げさにならないように個人でっていうことで伺ったんだ」

社長「いざ、会場になってる自宅に行ったら、うちの花輪が放り出されててねえ。参列の人も、気にせずにそれを踏みつけてて、ああ、これは本当に来ちゃいけなかったんだって、門前で手を合わせて帰ったよ」

社長「そんとき思ったね。従業員が死ぬようじゃだめだよーって。死ぬような働かせ方は、その時の関係者に一生祟るんだ。僕はあれ以来、会社関係の葬式に出るのが怖いもん」

社長「だからねえ。組合員が死なないように、頼みますよ委員長」

委員長「…こちらこそ、従業員の健康に配慮をした人員配置をお願いします」

社長「それは追々。とりあえず、死ぬ気でやるのはない方向で行ってください。発破をかけるなら、ドンドンとかガンガンの方がいいね。真に受けてもうるさいだけで人は死なないだろうし」

委員長「では、今の段階では、ドンドンとガンガンで納得しておくことにします」

書記長「…本労懇は団交前でもあるので報告書に書く必要があるが、ドンドンとガンガンはひらがなで?」

常務「カタカナにしておいて。あくまでも状況は厳しいんだから」

もちろん、状況は厳しいので、「ドンドン」「ガンガン」と発破をかけるのは仕方がないけど、「死ぬ気でやれ」と云って、本当に死なれてしまうと、目覚めが悪いだけでは済まないこともあるわけで。

もちろん、必ずしも「死ぬ気で働くと本当に死ぬ」とは限らないけれど、

http://d.hatena.ne.jp/skicco/20100220/p2(死ぬ気で働くと本当に死ぬから)

労務指揮権を有する使用者がその雇用する労働者に向かって言うべき言葉ではない、ということでしょう。

ちなみに「今の段階では、ドンドンとガンガンで納得しておく」という労組委員長の言葉が一品。

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コメント

職場にも事情があるので、ドンドンなりガンガンも仕方が無い時期があるのは認めるところなのですが、人間やはり限界はあるのですから、身も心も疲弊した際に素直に「ギブアップ」が出来る環境は大事かと思います。
葬式という事態はもちろん最悪ですが、実のところその前に精神的にダウンするケースの方が多いと感じます。
実際に遭遇したケースで「うつ病なんか誰でもやってる、あれは病気の内に入らない」と平然と放言した人間知ってますが、そのうつ病が高じて以前妻子残し失踪したケースを知るだけに、度が過ぎればもはや個人の責任では対処できない事態が発生する危険が軽視されているのはどうかなと思うところです。
最後に能力以上に奮戦する現場と、最悪の事態は避けたいと思いつつ、現場の惨状を状況を打開する手立てを何一つ決断出来ず放置する上層部という構図は戦時中の日本軍と正に瓜二つだなと考えます。
それが「日本的」と言うかは無学な私には知る良しもありませんが、一つ確かのはそんな状況を強いる職場は御免こうむりたいと言ったところでしょうか。

いつもすみません。
過労ということですが、熊沢誠さんの『働きすぎに斃れて』なんかは、どう評価されるのでしょうか。
なんか、あまり熊沢さんなんかとは絡みがないブログのように思うのですが。
もともと、過労死研究でデビューしたのでとても気になります。
ちなみに、拙論では過労死=長時間労働原因説とどう向き合うかに心を砕いています。

過労死は長時間労働かける労働密度で相当程度説明できるにしても、過労自殺は職場の人間関係の問題が大きく、そもそも単純に「過労自殺」という言い方をするのが適当かどうかも問題があるのだろうとは思っています。
ただ、そこはどこをどうすればいいという言い方が難しい所なんですね。
いじめ・嫌がらせやメンタルヘルスの問題なども含め、私のあまり得意でない領域についてもきちんと勉強しないといけないなという感じはずっと持っているのですが、さてどうアプローチするかというとこれがなかなか・・・。

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