『社会保障と経済2 財政と所得保障』(東大出版会)
東大出版会から刊行されている『社会保障と経済』というシリーズの第2巻『財政と生活保障』が送られてきました。
http://www.utp.or.jp/bd/4-13-054132-9.html
このシリーズの第1巻にわたくしが「雇用戦略」という論文を寄せていることは、前に本ブログでご紹介したとおりです。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-39de.html(『社会保障と経済1 企業と労働』(東大出版会))
この第2巻はわたしは執筆していませんが、下記の通り、錚々たる面々による論文が並んでおります。東大出版会から言われたわけではありませんが、是非お買い求めいただきますようお願い申し上げます。第2巻の編者は宮島洋先生です。
内容紹介
少子高齢化の急速な進展により医療や年金制度への不安がひろがり,また景気変動や雇用環境の変化により人びとの生活のセーフティネットもおびやかされている.給付・負担のバランスを保ちながら社会保障を維持していくためには何が必要なのか.経済・財政の視点から社会保障の現在とこれからを分析する.
主要目次
はじめに
I 社会保障の経済分析
1章 マクロ経済学から見た社会保障(小西秀樹)
2章 社会保障のミクロ経済学(駒村康平)
3章 地域経済と社会保障(山重慎二)
4章 公的年金・企業年金と年金資金運用(米澤康博)
II 社会保障と財政・税制
5章 社会保障と財政・税制(宮島 洋)
6章 社会保障の役割と国民負担率(田中 滋)
7章 社会保障と地方財政(林 宜嗣)
8章 OECD諸国の社会保障政策と社会支出(金子能宏)
III 所得保障と国民生活
9章 公的扶助と最低生活保障(阿部 彩)
10章 少子高齢社会の公的年金(小塩隆士)
11章 高齢期の世帯変動と経済格差(白波瀬佐和子)
12章 雇用保険制度改革(樋口美雄)
第1章の小西秀樹さんの「マクロ経済学から見た社会保障」の冒頭と末尾の言葉がなかなか皮肉が効いていますので、そこだけ引用しておきます。
>・・・このような心配にマクロ経済学はどう答えているだろうか。名だたる内外のマクロ経済学の教科書をひもといてみよう。社会保障について割かれたページが、あったとしてもホンのわずかであることに気づくだろう。これは決してマクロ経済学者が社会保障に関心がないからではない。教科書に書けるほどの通説、定説が社会保障に関するマクロ経済分析にはほとんどないのである。通説や定説の不在は、思い込み、誤謬、俗説がまかり通りやすいということでもあろう。
>社会保障のマクロ経済効果については定説と呼べるものがない代わりに、理論的な根拠が薄弱で、思い込みに近いような議論がまかり通っており、社会保障のメリットについて十分に認識することなく公的な負担の軽減ばかりに議論が集中する傾向がある。制度の詳細に注意を払った分析が不可欠であることを改めて強調して本章を締めくくりたい。
わたくし個人としては、やはり阿部彩さんの「公的扶助と最低生活保障」の章が興味深いものでした。とても共感するところ、ちょっと違うかな、というところなど、突っ込むと面白いと思います。
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