ホリエモン氏のコメント
ご本人のコメント
http://twitter.com/takapon_jp/status/7501328812
>どうやったら、「労働基準法守るなんて馬鹿馬鹿しい」って読めるんだろうね?今の労働基準法が馬鹿馬鹿しいんであって法令順守は当たり前。でも改正の必要ありといってるんだよ」
だそうな。
なるほど、何の憂いもなく、俺が雇った奴である限りいくらでも夜遅くまで働かせられるようにしろというわけだ。
実に皮肉なことに、今の労働基準法は事実上そうなっている。36協定結んで残業代さえ払えばね。
そういう労働基準法を、物理的労働時間そのものをまっとうに規制する力あるものにしなければいけないというのが、拙著『新しい労働社会』で力説したことであるわけだが、もちろん、このホリエモン氏に、そういうまっとうな労働法感覚を要求するのは無理だろうし、言っても無駄だろうと思ったから「特にコメントはしません」ということ。
そしたら見事に、労働時間感覚の欠如したコメントがかえってきた。
物理的労働時間を規制する力のきわめて乏しい今の労働基準法ですら、「ベンチャー企業の従業員の多くは好きで夜遅くまで働いている」のが「できなくなる」から「馬鹿馬鹿しい」というのだ。
今の労働基準法の問題点は全く逆であって、物理的労働時間の規制力は弱いくせに、残業代規制だけは不均衡に厳しいという点にあるわけで、その点の適切な理解が出来ないから、ホワイトカラーエグゼンプションも馬鹿馬鹿しい失敗劇に終わったわけだが、しかし、経営側の心ある人々が「いや、ホワエグは際限なく働かせる過労死促進法なんかじゃなくて、労働時間と賃金のリンクを外そうというだけなんです」といくらまっとうなことを語ったとしても、ホリエモンみたいな人がこういうことを口走っている限り、「ホワエグは悪辣な経営者の過労死促進法だ」という本当は的はずれだったはずの批判が、意外や意外、やっぱり経営者の本音は労働者を何の制限もなく夜遅くまで働かせ続けることだった、という真実を言い当てていたことになってしまうわけ。
わたしが『新しい労働社会』で、あれだけ一生懸命、経営側のホワエグ論の本当の意図を説明してあげたことが、こういう愚かなベンチャー経営者の一言で、がらがらと崩れていくわけ。
本ブログをいつもお読みのみなさんは、こういう感覚の人々が私たちを取り巻いているということをよく念頭に置いておく必要がありますよ。
(追記)
考えてみると、こういうキャラって、あの奥谷禮子氏もそうでしたね。
経営側が、「いや、われわれはそんなこと考えていませんよ」「それはあなた方の邪推ですよ」と一生懸命言ってるまさにそのものずばりを何のてらいもなく平然と口走って、しかもそれが労使関係においてどういう意味合いを持つかが全然理解できないタイプの人。
日本経団連や経営法曹会議の皆様、ホリエモン氏がこういう発言をおおっぴらにしている限り、ホワイトカラーエグゼンプションの議論を改めてまっとうな形で再開することは絶望的でしょう。悲しいけれど、これが日本の現実です。
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コメント
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公務では、法律も裁判所も関係なく権力関係だけを前面に出して同様の感覚を公言される竹原阿久根市長というのがいますね。それに正面から喧嘩できているのが、自治労鹿児島と市議員という「抵抗勢力」しかない社会の力の弱さ。
ホリエモンも奥谷禮子も、自分の妄言を是正してくれる人がたくさんいるということは幸いです。
投稿: きょうも歩く | 2010年1月 8日 (金) 23時41分
このコメント読んで思い出すのは、湯浅氏がかつて働いていた「偽装請負」の社長が"路上系"として一つのヒーローだったってことですよね。ホリエモンや奥谷に限らず、日本で一から創業して功成り遂げた方々って、労働者というのか正規雇用の身分に対して何か僻目と言うのか恵まれている人間のくせにとばかりに攻撃対象にしているきらいがある様にも思えるんですよ。苦労して成り上がった自分の境遇が全て正義で、それより恵まれているのは全て悪。その結果恵まれていない側の地位向上ではなく、「不幸の平等化」に向かってしまうのですけど
ところで、
>>実に皮肉なことに、今の労働基準法は事実上そうなっている。36協定結んで残業代さえ払えばね。
今の公開会社法で監査役の一人を労働者代表にしようという動き、下手したら形を変えた36協定になるんじゃないかって危惧を抱きますね。繰り返しになりますけど、企業別組合が中心の日本で欧州流の直輸入は副作用の方が大きいのでは?
投稿: 杉山真大 | 2010年1月 9日 (土) 01時46分