日本の労働法制の秘部に触れるセンター試験問題
既に大内伸哉先生もブログで取り上げておられますが、
http://souchi.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-ae12.html(いろいろ)
大学入試センター試験の公民(政治経済)の問題に、労働法制を問う問題が出ました。
http://sokuhou.toshin.com/q/s-keizai.pdf(20頁)
間違いはどれか?という問題で、
①労働者は失業した場合、一定の要件の下で保険給付として金銭を受けることができる。
②労働者は、選挙権などの公民権を行使する場合、それに必要な時間を使用者に申し出て、仕事から離れることができる。
③労働者の1日の労働時間の上限を8時間と定める規定が存在する。
④労働者の1週間当たりの最低の休日数を2日と定める規定が存在する。
いや、もちろん、模範解答は④ですよ。でもね。大内先生もいうように、
>自分の親が,たとえば1日9時間働いているというのが法律違反とは思っていない受験生は,これを誤りの内容の選択肢と判断する可能性もありますが,それを受験生の法的知識不足とするのは少し気の毒な気もします。
「上限」という言葉を、本当に日本の労働社会における法規範では1日の労働時間はそれ以上に伸ばしてはいけないという意味の物理的労働時間の上限が8時間となっているという風に考えれば、そんな「上限」はないですからね。むしろ、正社員には残業する義務がある。拒否したら解雇すらあり得る。じゃあ、1日8時間って何?と聞かれれば、そこから残業割増がつくはずの時間としかいいようがない。
ある意味で、日本の労働法制の秘部に、それと気づかず触れてしまっている問題というべきでしょうか。
まさか、受験生が拙著『新しい労働社会』を読んでいるとも思えませんが。
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