労働強度の問題
日経BizPlus連載の丸尾拓養さんの「法的視点から考える人事の現場の問題点」の最新記事が、「業務スピードのアップと労働時間のリスク」を取り上げています。
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/jinji/rensai/maruo2.cfm
>990年ころからのパソコンや携帯電話などの普及により、ホワイトカラーの業務遂行のあり方が大きく変革しました。特に電子メールやインターネットの導入により、業務のスピードが急激に上がるとともに、情報を上手に処理できる人に仕事が集まるようになりました。これらの変化とほぼ同時期に精神疾患や過労死の増加が社会問題化しましたが、長時間労働という側面からだけで対処することで足りるのでしょうか。
>現実に事件となるのは、「仕事が速い人」に仕事が集まりすぎて逃げ出せなくなっていたり、そうでない人が不相当な量の仕事を抱え込んでいるようなケースです。これが一時的ではなく恒常的になっているときに、大きな問題としてあらわれます。
そもそも今回の労働基準法改正の目的は、管理職年代の仕事のあり方を見直すということにあったようにも思われます。しかし、結論としては、割増賃金が支払われる若年層に対する部分での改正となりました。真のリスクには手が付けられていません。
法改正の内容が現実に合っていないために、必要とされる最低限の手続きをとるだけという対処方法もあり得ます。しかし、それでは現場の諸問題を放置することになりかねません。正社員の働き方を整備することこそが、企業組織の競争力を高めるといえるでしょう。法を遵守するにとどまることなく、進取的な対応の検討が求められます。
この指摘はまさに正鵠を得ていると思います。わたしは、残業代しか目に入らないような低レベルの議論に対してそうじゃないだろ、と説明するためには、物理的労働時間こそが重要であるとあえてやや単純化した議論を展開してきていますが(これが政策的意図による戦略的言説という奴)、それだけで問題が解決するわけではなく、ここで指摘されている仕事の密度というか労働強度の問題もとても重要だと考えています。
EUでは、まだ具体的な政策の形にはなっていませんが、外郭団体の欧州生活労働条件改善財団(日本のJILPTに相当)ではこの問題に関する研究報告をいくつか出しています。
http://www.eurofound.europa.eu/pubdocs/2009/27/en/1/EF0927EN.pdf(Working conditions in the European Union: Working time and work intensity)
http://www.eurofound.europa.eu/pubdocs/2002/48/en/1/ef0248en.pdf(Time and work: work intensity)
そろそろこういう問題意識をもって取り組む必要がありそうです。
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コメント
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お久しぶりです。
先生と、「長時間労働の制度と心」という議論ができる日を、心待ちにしております。
投稿: 大野正和 | 2010年1月24日 (日) 21時00分