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2010年1月14日 (木)

本田一成『主婦パート 最大の非正規雇用』

08720528 本田一成先生より、新著『主婦パート 最大の非正規雇用』(集英社新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。本田先生は現在國學院大学教授ですが、かつてJILの研究員をされていた方です。

この本のメッセージは題名その通りです。最近、非正規労働問題というと派遣労働者が中心で、フリーターなど若者問題ばかりが取り上げられますが、主婦パートという最大勢力を忘れるなよ、そこに最大の問題点が潜んでいるんだよ、というメッセージでしょう。「はじめに」に曰く、

>主婦パートは、家庭では、親子関係と夫婦関係の結節点にいるキーパーソンである。そして、自ら働く傍ら、ほとんどの家事を引き受け、夫や子どもを有為な人材として社会に送り出していくという「良妻賢母」であった。また、企業にとっては、文句も言わず、決して手抜きをしない生真面目で丁寧な仕事ぶりを見せる貴重な労働者であった。主婦パートという存在を介して、日本の家庭も企業も社会も実にうまく回っていたのだ。つまり、、我慢強く日本社会を支えてきた存在といってよい。

>しかし、主婦パートの献身的ながんばりもそろそろ限界を迎えつつあり、社会を支えてきた主婦パートという在り方がほころび始めている。主婦パートは日本全域に散在する大規模な集団だから、このほころびの影響はとても大きい。

>職場と家庭の双方から限度を超える圧迫を受けることで、主婦パートが家庭と企業という二つの領域のキーパーソンとしての役割を放棄してしまったり、病んでしまったらどうなるか。低い待遇で正社員並みの働きを求めるパートの「基幹化」が、最後の引き金を引いてしまうかも知れない。

本文の最後のところでは、とりわけ労働組合に対して強い期待を示しています。

>主婦パートは日本の家庭と企業の双方を下支えしてきた。だからこそ、主婦パートを見捨てないことが、家庭と雇用の現場の歪みを修正し、この閉塞した社会を打破するきっかけになるはずだ。

>政労使が真剣に取り組むことを期待する。

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コメント

Lisa Dodson の The Moral Underground を読み、今一度米国の貧困問題を考えています。今、主婦パートの問題を検証しておくことは日本の将来にとって大切なことだと思っています。

 奈良の5歳児餓死事件が起きる直前にこの本を読んでいたので、どきりとしました。子どもを餓死させた母親は主婦パートで、この本でたびたび警鐘が鳴らされているリスクのの究極の形だったからです。
 あらためて本を読み返すと、疲弊した主婦パートが児童虐待に走る危険性が高いこと、夫のDV被害を受けている主婦パートが実に多いこととなどが指摘されています。
 事件では、夫の日常的な暴力が、母親の児童虐待の引き金だったと報道されています。http://news.livedoor.com/article/detail/4641660/
 もしこの主婦の労働条件がもっと恵まれたものであれば、夫からDVを受けた時点で、別居や離婚という道を選べたかもしれず、となれば、死にいたるまでの児童虐待もなされれなかったかもしれない。そんなふうに思うのです。
 「夫からの扶養」を前提にした主婦パートという雇用システムがこの悲劇を生んだという文脈で、事件を振り返る意味は大きいのではないでしょうか。
 秋葉原の事件が派遣の問題抜きに語れなかったようにです。

このエントリにくっつけるのが適切ではないかもしれませんが、興味深いのをみつけたので
http://d.hatena.ne.jp/rengejibu/20090217#p1
>ビジネス誌の場合は、仕事をしながら「育児をしていること」に、いちいち説明がいる。なるべく仕事の支障にならないように、どうやって家事や育児をやりくりするか。私生活はなるべく仕事に影響させたくない、という考え方が根本にはある。

>VERYの特集に出てくるお母さんたちには、そういう暗い必死さが微塵もない。中にはベビーシッターや家政婦に育児や家事をアウトソースしてガンガン働いている人もいるのだが、そこに悲壮感はないのだ。
>生活のために働く普通の女性と、自己実現のために働く奥さんを比べても仕方ないのだけれど、「家族が一番、仕事が二番」と言い切る潔さは、正直でかっこいいと思ったのだった。

 角度によっては規制緩和原理主義者の「最賃を引き上げればセレブ専業主婦が働いて本当に困っている人が働けなくなる」説と裏表ですが、むしろ、(配偶者が正規雇用終身雇用であるという前提を抜きの)「家族が一番、仕事が二番」と言える社会への希望がこのエントリのポジティブ感なんでしょうね。

http://diamond.jp/articles/-/8271
>子持ち女性社員の優遇が許せない!
>“働きマン”な独身女性社員たち

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