フォト
2024年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

« 「ある部分は」入試の点数 | トップページ | クルーグマンの「ヨーロッパに学ぶ」 »

2010年1月12日 (火)

母乳育児と仕事の両立

JILPTの内藤忍さんが、標題のコラムを書かれています。

http://www.jil.go.jp/column/bn/colum0139.htm

>母乳育児をしたいという女性が増えているという。厚生労働省の平成17年度乳幼児栄養調査によれば、妊娠中の96.0%の女性が母乳で子どもを育てたいと答えている。しかし、彼女たちの出産後の実態は違う。同調査によれば、母乳を多少なりとも与えられている生後5カ月児は64.4%にすぎない。

理由は様々あるだろう。しかし、原因の一つに、仕事との両立の問題があるのではないだろうか。そう考えたのは、筆者自らの産後期に、母乳育児と仕事の両立に悩む多くの産後労働者に接したからであった。・・・

実は、JILPTのコラムで母乳育児が取り上げられるのは、2度目です。1度目が2008年7月の小野晶子さんの

http://www.jil.go.jp/column/bn/colum0104.htm(母乳育児と女性労働)

>昨年4月に子供が生まれた。一年間、育児休業を取得し、仕事から離れて子育てに没頭した。刻々と変わる我が子の表情、仕草を近くで見守る濃密な時間。自分の生き方についても、改めて考える機会となった。

職場に復帰したのは今年4月。今も母乳での育児を続けている。日々、あふれる幸せをかみしめているが、仕事と育児の両立は想像していた以上に大変だ。

子供ができて、迷うことなく母乳育児を選んだ。母乳だけだと他の人に預けることが出来ないと考え、一度、粉ミルクとの混合に挑戦してみたこともあったが、哺乳瓶を受け付けてくれなかった。結局、1年3ヶ月に至る現在まで母乳で育てている。

内藤さんの方は、

>搾乳する時間と場所が職場では重要だ。このニーズを理解し支援している職場がどこかにないだろうか。そう思っていたら、早稲田大学が教職員や学生のための搾乳室を設置したという。話を聞きに行った。

と、早稲田大学の搾乳室の紹介がされています。

http://www.waseda.jp/sankaku/event/pdf/room.pdf

最後は、労働法研究者らしく、こう締めくくられています。

>母乳育児は、妊娠・出産にかかわる事項である。つまり、母乳育児を行う・行わない、どれくらいの期間行うといったことは、「性・生殖に関する自己決定権」(リプロダクティブ・ライツ)に含まれる。これは国際的に認められた女性の人権なのだ。この観点から、仕事との両立にあたっては、すべての女性に職場復帰後の母乳育児の権利が付与されること、それから、職場もしくは職場に近い衛生的な場所で搾乳(授乳)できる設備が必要である。これらはILOの母性保護条約(第183号)と同勧告(第191号)でも求められている。

しかし、この視点が日本において意識されることは、悲しいことにとても少ない。もちろんILO条約も批准できていない。母乳育児を支える労働環境が改善されることがないまま、今も多くの女性労働者が不衛生なトイレで搾乳したり、職場復帰にあたって母乳育児を断念したりしている。国、自治体、企業、労使団体は、産後労働者の悩みに気付いていないのだろうか。彼女らの母乳育児に関する自己決定を阻害するものを取り除けるよう真剣に取り組んでもらいたいと思う。そして、産後労働者に知ってもらいたい。職場復帰しても母乳育児は続けられる。出産した先輩・同僚に両立のやりくりを聞いてみよう。なかなか言いにくいかもしれないが、自らの要望を会社や組合に伝えてみよう

« 「ある部分は」入試の点数 | トップページ | クルーグマンの「ヨーロッパに学ぶ」 »

コメント

濱口先生
いつもブログで勉強させていただいています。
東京法律事務所で弁護士をしている菅俊治と申します。
先日は日弁連労働法制委員会にてEU派遣指令のご講演ありがとうございました。

搾乳の記事、たいへん共感を持って拝読しました。
私の妻も、6年ほど前の話ですが職場での搾乳には苦労しているとよくこぼしていました。女性トイレの洗面台で不自然な格好で搾乳をしているところに、同僚の女性がドアを開けて入ってきて双方面食らうということが日常茶飯だったそうです。

搾乳した母乳は専用のビニールに入れて職場の冷凍庫に入れて保管して帰宅時にもって帰るのです(翌朝、妻や私が保育園にもっていき保育士に預ける訳ですが)。

ただ、妻の話を聞いたりして当時感じたのは、母乳は自然の産物なので、紙パックからコップに牛乳を注ぐように簡単に飲めるものではないという考えてみれば当たり前の事実。
赤ちゃんが吸啜(きゅうてつ)するのは原始反射だそうですが、おっぱいを吸われて母乳が分泌されるのも条件反射だそうです(男の私にはなかなか感覚として理解できませんが、吸われると「キュー」っと出るそうです)。
赤ちゃんが吸わないと母乳の出やすいスタンバイ状態にならないし、定期的に吸われることが母乳の機敏な分泌を維持するのだそうです。
逆にせっかく母乳が出るスタンバイ状態になっていても、飲んでもらえなければ(排出しなければ)、乳房に母乳が溜まり、それはあっというまに変質して、ねっとり系の「まずい」腐れ乳になるそうです。そういうまずいおっぱいは赤ちゃんは飲もうとしないで顔を背けてしまう。そうなると飲んでもらえないおっぱいがますます溜まって悪循環。母親も乳房がパンパンに硬くなって痛くてしょうがない。
職場での搾乳というのは、赤ちゃんが吸うわけではなく、無理やり搾り出す。ストックした母乳を必ず飲むとは限らないのだけれども、母乳の質を維持するために不可欠なのだそうです。
おいしいおっぱいを「生産」し「提供」するには、相応の品質管理体制がないといけないんですね。

おそらく多くの母親経験者にはそんなことは常識なんでしょうが、自分には知らないことばかりでした。
しかし、女性の多くの方でも、職場の搾乳環境についてはなんとなく我慢してしまっている場合がほとんどなんでしょうね。

ILO条約には搾乳設備のことが書かれていたとのこと。全く不勉強でした。
ありがとうございました。


コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 母乳育児と仕事の両立:

« 「ある部分は」入試の点数 | トップページ | クルーグマンの「ヨーロッパに学ぶ」 »