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2010年1月10日 (日)

戦後日本における労働者参加論の系譜

労働者参加というと「社会主義!」などと脊髄反射する低知能がはびこる今日この頃ですが、実定会社法に労働者参加が明記されているヨーロッパ諸国だけでなく、戦後日本でも会社における労働者参加に関する議論は脈々となされてきました。とりわけ、経営側では経済同友会、労働側では同盟がその主唱者的位置を占めています。

この関係について、拙著『労働法政策』の中で、簡単な歴史的記述をしていますので、以下にその部分を引用しておきます。

第Ⅴ部 労使関係法政策

第20章 労使協議制と労働者参加

第3節 労働者参加

2 労働者の経営参加

(1) 戦後の経営参加構想

 日本における経営参加構想として特筆すべきは、1947年9月に経済同友会企業民主化研究会*14が発表した「企業民主化試案-修正資本主義の構想-」*15であろう。
 これはまず企業を株主の所有とする考え方を改め、企業を以て経営、資本、労働の3者によって構成される協同体とする建前をとる。その配分帰属については、企業財産の増殖分は適当な割合で3分し、経・労・資3者それぞれの集団に帰属させる。従って企業が解散する場合、企業財産は3者間に分配される。企業利潤は3者平等の原則に基づき、3者間に公平に分配するが、企業債務も終局において経・労・資3者の共同負担とし、経営者及び労働者の責任は上記帰属分を上限とする。
 経営と資本の関係については、経営者の資本家に対する受託関係を解除し、資本に対しては監査権を認め、企業の最高意思決定機関たる企業総会に代表者を送ることを認める。この企業総会は当時盛んであった経営協議会を経・労・資3者構成の機関とし、株主総会に代わる企業の最高意思決定機関とするというもので、会社の構造を根本から転換しようとするものである。企業総会の議長は経営代表たる首席取締役である。こうなると株主総会は株主が企業総会への代表及び監査役を選出する機関に過ぎなくなり、同レベルに労働者総会及び経営者総会が新設される。
 これはある意味では労働者の経営参加を極限まで追求した構想と言えるが、他面から見れば資本家に対する経営者の独立性を強く打ち出したいわば経営者革命宣言的な面もある。経・労が協力して資本の権限を抑制するというニュアンスも感じられる。そして、その後の経過は、株主に対する経営者の権力が著しく強化されていき、このような労働者参加論は影を潜めてしまった。
 その後1950年代に入り、西ドイツにおける鉱山鉄鋼共同決定法や事業所組織法の制定の影響で全労会議や三井鉱山労連など労働側に再び経営参加の議論が起こったが、やがて尻すぼみになった。

(2) 1970年代の経営参加構想*16

 日本では1970年代半ばに、西ドイツにおける共同決定法制定やEC会社法案が紹介され、労働者の経営参加に対する関心が一時的に盛り上がったが、その後急速に冷め、現在ではほとんど動きがない状況である。
 社会経済国民会議は1975年2月、「労働組合もしくは労働者代表による経営参加について」と題する経営参加問題特別委員会の中間報告を発表した。ここでは労使協議制による経営参加について、現状では労使の協約による自主的参加制の上に産業別、企業別の協議制を積み上げることが実情に即した方式だとし、その上で将来展望としては労働組合の推薦による監査役への労働者代表の参加も一方向としている。なお、翌1976年5月の報告書は「政策参加に関する提言」であって、経営参加には言及していない。
 これより先1974年12月、労働側から同盟が「参加経済体制の実現のために」と題する経営参加対策委員会中間報告を発表している。これが経営参加論議の出発点となった。ここでは監査役会へ労働者代表を参加させることを現実性のある参加の道であるとしつつ、問題点として商法で監査役が当該会社の取締役又は支配人その他の使用人を兼ねることを禁止していること、労働組合法で労組役員が会社の役員を兼ねることができないことを挙げ、当面はその制約下で労働側選出の監査役を監査役会へ参加させるほかないが、近い将来に商法を改正して、取締役会と監査役会への労働代表参加の障壁をなくすことが必要としている。
 経営者側からは、1976年4月、経済同友会の新自由主義推進委員会経営参加小委員会が報告書を発表し、日本では労働者重役制は法的制度としては存在していないが、西欧諸国と比較して社会階層間の流動性が高く、また実質的に従業員の代表が時を経て経営陣に加わっている場合もあり、従業員の意向が経営に反映されやすくなっていること、稟議制により従業員や中間管理職も実質的に経営意思決定過程に参加しうる機会があることなどを挙げ、経営参加はかなりの普及を見ているとして、現時点でこの制度を早急に導入する必然性は見出しにくいとしている。ただ、中長期的には、労働組合の代表を、その責任・忠実義務を明確にするなどの一定の条件を付し、法的な整備を慎重に行った上で、役員に参加させることも検討する必要があろうとしている。

*14委員長:大塚万丈。
*15経済同友会企業民主化研究会編『企業民主化試案』同友社(1947年)。
*16日本労働協会編『経営参加の論理と展望』日本労働協会(1976年)。

これを政治史的に言えば、経営側では労使対決的な日経連ではなくて労使協調的な経済同友会が、労働側では同じく労使対決的な総評ではなくて労使協調的な同盟が、それぞれ労働者参加の主唱者であったということになります。

また、思想史的に言えば、市場原理主義ではなくて修正資本主義が、マルクス・レーニン主義ではなくて社会民主主義が、労働者参加に同調的であったということもできます。

同じヨーロッパでも、労使協調的な北欧諸国においては取締役会への労働者参加が実現し、労使対決的な南欧では労働者参加があまり実現せず、その間の国々では中くらいの監督役会への参加になっているのも、興味深いところです。

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コメント

労働者資本主義の可能性を追求するという立場を明確にすると労働者参加の意味や方向性が分かり易いと思います。
労働者が資本主義の主人公となっているというのはもはや世界の現実ではないでしょうか?
それを目的意識的に行うのか、それとも消極的に行うかのちがいのみではないかと思います。そしてこの違いは決定的だと思います。

旧来の左派、、また新自由主義者とのちがいを明確にするためにも労働者資本主義という方向性を明確に打ち出すべきではないでしょうか?

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