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2010年1月28日 (木)

OECD『日本の若者と雇用』ついに刊行!

Oecd 本ブログで再三にわたり予告してまいりました『日本の若者と雇用-OECD若年者雇用レビュー:日本』(明石書店)が刊行されました。

奧付によると1月30日初版第1刷発行とありますので、書店に並ぶのはもう少し後になるかも知れません。

一昨年末の2008年12月18日、原著が刊行されたその日に、わたくしは本ブログで本書の内容を紹介しておりました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-ce0b.html(日本は若者が安定した仕事につけるよう、もっとやれることがある)

>Japan could do more to help young people find stable jobs

>というわけで、まさに時宜を得たというか、時宜を得すぎているんじゃない、というぐらい絶好のタイミングで公表されておりますな。

その後、新進気鋭の研究者である中島ゆりさんの翻訳原稿を監訳するということになり、その作業がひととおり終わったところで、本ブログで宣伝させていただきました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/oecd-1901.html(OECD『日本の若者と仕事』翻訳刊行のお知らせ)

>原著が公表された昨年12月にも「まさに時宜を得たというか、時宜を得すぎているんじゃない、というぐらい絶好のタイミングで公表されておりますな」と申し上げたんですが、政権が変わって、「コンクリートから人へ」とか言っているはずなのに、その「人」作りを叩きつぶそうという動きも蠢動している今日、再び「まさに時宜を得たというか、時宜を得すぎているんじゃない、というぐらい絶好のタイミングで」翻訳出版することになるというのも、何かの巡り合わせでありましょうか・・・。

ようやく書店に並ぶところまで漕ぎ着けて、感慨ひとしおであります。

若者の雇用問題に関心をお持ちの皆様方には、是非ともお買い求めいただき、今後の政策議論に資していただければと切望いたしております。

ご参考までに、巻末につけた「監訳者あとがき」を以下に再録しておきます。なお、その前に中島ゆりさんによる詳細な訳者解説が付いていますので、そちらは是非現物でお読みください。

>監訳者あとがき

 「若者と雇用」という問題設定は、今日の日本では労働社会政策においてもっとも切実で重要なものと感じられているが、過去にはそうではなかった。長らく日本の雇用政策の中心を占めていたのは中高年問題であり、若者問題ではなかった。それを象徴するのが労働行政における組織的な扱いである。厚生労働省職業安定局に若年者雇用対策室が組織的に設置されたのは2004年のことであり、それまでは若年者雇用対策係という一係の所管であった。その係は以前は学卒係と呼ばれ、かつては主に中学校、その後は主に高校の新卒予定者の就職を担当していた。つまり、日本の雇用政策において、若者はもっぱら日本的な「学校から仕事へ」の枠組みにおいてのみ捉えられていたのである。
 これは欧州諸国の状況とはまったく異なるものであった。1970年代半ばに等しく石油ショックを被った日本と欧州諸国であったが、労働市場で不利益を被った年齢層は対照的であった。日本では人件費の高い中高年の排出が進み、中高年失業者が大きな雇用問題となったのに対して、欧州諸国では技能の低い若者が就職できないという形で失業者として滞留したのである。このため、長らく欧州諸国で雇用対策と言えば主として若年者対策であり、中高年対策中心の日本とはなかなか噛み合わなかったのである。
 この原因は両者の雇用システムの違いにある。長期雇用慣行の中でスキルのない若者を採用して職場で教育訓練を行い、年功的処遇をしていく日本型雇用システムにおいては、若者にスキルがないことは採用の障害ではなく、年功的処遇がもたらす中高年の人件費の高さが問題であり、そこに問題が集中した。それに対して職務に見合った処遇が原則の欧州諸国では、中高年の人件費はそのスキルに見合っている限り問題ではなく、スキルのない若者が採用されないという形で矛盾が現れた。それゆえ、若者の雇用促進のために高年齢者の引退促進が政策として進められたのである。
 しかしながら1990年代後半以降、両者で問題状況が変化した。欧州諸国においても年金支給年齢の引き上げとの関係で高齢者の雇用促進が重要課題とされるようになる一方、日本でも「学校から仕事へ」の移行がうまくいかなくなるにつれてフリーターやニートという形で若者の雇用問題が政策課題として意識されるようになってきた。前者では社会保障制度との関係における矛盾が雇用政策の見直しを呼び起こしたのに対し、後者は職業的意義の乏しい教育システムとの補完関係の見直しを迫るものである。OECDの雇用戦略はこの新たな状況下で進められてきた。既に日本編と総合編が明石書店から邦訳されている「高齢化と雇用政策」の国別検討は前者の反映であり、ここに日本編の邦訳を送ろうとしている「若者と雇用」の国別検討は後者の反映である。

 本書の内容やその意義については訳者解説に意を尽くした記述があり、筆者が付け加えるべきことはほとんどない。ただ、近年若者の雇用問題をテーマとする書籍や論文は多く出されるようになってきたが、本書ほど包括的に教育制度や社会保障制度などあらゆる関連分野との関係を睨みながら書かれたものはなお数少ないし、とりわけ世界のさまざまな先進諸国との比較の視点が随所にちりばめられているという点で、ややもすると国際比較といいながら特定国との比較に偏りがちな日本の研究者の業績に比べても、読まれるべき価値は高いと思われる。
 また、訳者解説でも指摘されているように、とかくこれまで日本型雇用システムの中心であった高学歴男性に偏る傾向のある日本での議論に対し、低学歴層と女性・母親の問題をきちんと位置づけている本書の意義は大きいものがある。今後の日本における若者雇用問題の議論のスタンダードテキストとしてもっともふさわしいのではなかろうか。

 派遣村村長だった湯浅誠氏が内閣府参与として緊急雇用対策に取り組むなど、若者雇用問題が国政の最重要課題の一つとなった現代日本において、この問題に関心を持つ多くの人々が本書を手に取り、熟読し、今後のあるべき政策の方向を考えていくことが、一見遠回りに見えて実は問題解決への真の近道であると信ずる。

                                                                 濱口桂一郎

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