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ステイクホルダーの所在,あるいは「構造改革イデオロギーの文明化作用」の問題

教育社会学の森直人さんが書かれている「もどきの部屋 education, sociology, history」というブログに、最近の事業仕分けをめぐるいきさつを題材に、「利害関係者」(ステークホルダー)について考察をされています。

http://d.hatena.ne.jp/morinaoto/20091129/p1

>誰もがすべての問題に通暁することなどできない「高度に複雑化した」「不透明な社会」にあっては,事業仕分け人が当該問題についてはズブの素人,っていう状況が標準なわけで,その事業仕分け人からの「攻撃」を主としたきわめて短時間での「議論」でものが決まっていくというのは,素人目にみても危なっかしいことこの上ないよな,って思ってしまうのは否定できず.

「利害関係者」っていうのは「自分に都合のよいように国民の税金からくすねて私腹を肥やす奴ら」っていう以前に,当該問題に日常的にかかわらざるを得ないが故に個別事情にもっとも通じており,それゆえに,一応それなりに(あるいは誰にも「もっともだ」と共感できるような)切実な要望をもって存在しているはずなので(それなりの,あるいは,もっともな「事情」というのはある),専門的見地からの評価と第三者的立場の(しかし支払っている税金を「使われる」立場の)目から見た評価に付されたその「要望」が,それぞれの利害得失の大小/強弱とその根拠の妥当性に応じて全体的に調整,最適化されていく,っていうプロセスが(まあ机上の空論としては)あるべき.というか,ないとめっちゃ危険.

>で,社会学っぽい話題に無理やり転換しようとすると,ここに現れているのは「利害関係者」はいかなる理由があろうとも「議論に関与すべきではない」っていう前提が支配している状況.それは必ず自分の「既得権益」を守るために(いや実際には「既得」なんかじゃないケースだって多いんだけど←注1参照)議論を歪める存在である,っていう前提.

したがって,その領域にぜんぜん利害をもたない人間(≒その領域のことをぜんぜん知らない人間)による裁定にもとづいて重要な制度設計の方向性を“選択”していこうという現状.

で、ここにわたくしの三者構成原則に関する文章が引用されまして、

>現代の日本にみられる「利害関係者」「既得権益」という言葉の磁力.

あるいは,3月に開かれた比較教育社会史研究会での小沢弘明(千葉大学)さんのご報告「新自由主義の世界史と高等教育改革」での言葉でいえば(高等教育改革に限定したご報告だったけど),「新自由主義イデオロギーの文明化作用」の問題*2.ま,いまの話題の場合,「構造改革」イデオロギーの「文明化作用」といったほうがいいか.

もちろん,ここでの「文明化作用」という語には両義的な意味合いが込められている.だからこそ,一方でそれは現在のわれわれを捉えて離さない.しかし他方で,現代日本ではこの「文明化作用」(がもたらす両義性の一面)の磁力は,他国に比しても格段に強いのではないかという印象.

あるいは高原基彰さん『現代日本の転機』(NHK出版)の言葉でいえば「蔓延する被害者意識」の問題か.

このあたり,現代日本社会論のテーマの一つが存在していることは確か

わたくしが「ステークホルダー民主主義」と称しているのはせいぜい労働問題に限られた政労使三者構成原則に毛が生えた程度の構想でしかありませんが(そのことはkihamuさんが的確に指摘されているとおりですが)、こういうさまざまな領域におけるステークホルダーがステークホルダーであるがゆえに意思決定に関わるべきというイデオロギーとステークホルダーがステークホルダーであるがゆえに意思決定に関わるべきではないというイデオロギーのせめぎ合いという観点からのマクロ社会学的な分析は大変興味深く、さらなる議論の展開を期待したいところです。

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