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日本労働研究雑誌で江口匡太さんが拙著を書評

『日本労働研究雑誌』12月号は「最低賃金」の特集ですが、とりあえずそれは後回しにして、拙著『新しい労働社会』について江口匡太さんが書評(読書ノート)していただいていますので、そちらを紹介しておきます。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2009/12/(まだ載ってません。明日にはアップされるでしょう)

江口匡太さんに拙著を書評させるというのは、なかなかに味のある人選だと思いました。というのは、江口さんは『解雇法制を考える』において、整理解雇規制の合理性を経済学的に説明する論文を書かれるなど、日本型雇用システムの経済的合理性を経済学的に主張する労働経済学者として有名な方だからです。

したがって、江口さんからすると、第1章から第4章に至る様々な具体的政策提言には親近感を感じ、それとは対照的に序章のメンバーシップとジョブ論に対しては、違和感を感じられることになります。

江口さんはそこを「この序章と後の4章との間にわずかながら断絶を感じた」と書いておられますが、実際のところは「わずかながら」というよりも、かなりの断絶感を感じられたのではないかと思います。その証拠に、序章の議論に対して、

>こうした日本の雇用システムをガラパゴス的と位置づける場合、解決策はもっと市場システムによるべきだという主張になりがちだ。

と評されています。そして、それに対して、ロバーツや小池和男の理論を引いて、ガラパゴスというよりも程度の違いに過ぎないと批判されています。

私は、そもそもガラパゴスといえども程度の違いだろうと思いますが、後の4章の議論を展開する上でもその程度の違いを明確化した方が、処方箋が何をどの程度維持し、何をどの程度変えようとしているのかをはっきりさせるという意味で、有用であろうと思っています。認識論的にはラディカルに、というのは、実践論の現実性を測るという意味もあるわけです。また、ガラパゴス論が必ずしも市場システムによる解決策を志向するというわけでもないのではないかと思います。

このあたりは、ヨーロッパの文脈でいうと、生産レジーム論と雇用レジーム論、福祉レジーム論の交錯するあたりなのですが、具体的な政策論の提示を主目的とする拙著では、あまり踏み込んでいません。

それから、江口さんは指摘しておられませんが、逆に日本の労働社会のかなりの部分(中小零細になればなるほど)は正社員といえどもメンバーシップ型になっているわけでもありません。その辺も、さらりとアリバイ的な記述を置きながら、あえて判った上で書いているところはあります。

いずれにしろ、絶妙の方向からの絶妙の書評を投げ込んでいただいた江口さんに、心から感謝申し上げたいと思います。

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