『安西愈先生古稀記念論文集 経営と労働法務の理論と実務』
『安西愈先生古稀記念論文集 経営と労働法務の理論と実務』(中央経済社)をお送りいただきました。安西先生、有り難うございます。
本書については、以前、別のエントリで、松下プラズマディスプレイ事件大阪高裁判決を批判する中山慈夫さんの論文の抜き刷りをいただいたことについて触れたことがあります。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-ae66.html(大内伸哉『最新重要判例200労働法』)
しかし、本書は、そもそも編者が山口浩一郎、菅野和夫、中島士元也、渡辺岳という錚々たる顔ぶれであるのに加え、労働法学者、労働関係弁護士の最高級の方々が顔を並べられていて、安西先生のすごさが窺われる一冊になっています。
Ⅰ 労働契約
二十的権利について 小西國友
偽装請負と黙示の労働契約 中山慈夫
転勤命令権とその限界 石井妙子
私傷病休職者の復職と負担軽減措置 鎌田耕一
経営上の理由による解雇 野川忍
Ⅱ 賃金・賞与・労働時間
賃金の支払い原則に対する素朴な疑問 井上克樹
職務給・職務等級制度をめぐる法律問題 土田道夫
賞与の支給日在籍条項をめぐる法理の再検討 山田省三
退職金制度と退職金割増に関する諸問題 外井浩志
労働時間の算定にかかる一考察 山本圭子
Ⅲ 労働条件の変更
労働条件の不利益変更における「労働者の不利益の程度」の解釈 岡芹健夫
就業規則の最低基準効と労働条件変更(賃金減額)の問題について 淺野高宏
Ⅳ 非正規労働者・雇用平等
非正規労働者に対する基本的法政策と若干の解釈 小林譲二
労基法4条と「男女同一賃金の原則」をめぐる法的問題 林弘子
アメリカにおける「仕事と家庭」の法状況 中窪裕也
Ⅴ 労災補償
労災補償における疾病の業務上認定に関する試論 山口浩一郎
ドイツの労災保険とその特徴 西村健一郎
精神障害の労災認定・訴訟の動向 黒木宣夫
シックハウス症候群研究と対策の動向 相澤好治
Ⅵ 労働組合・不当労働行為・労働協約
会社解散をめぐる不当労働行為事件と使用者 菅野和夫
労働組合法における要件事実 山川隆一
労働組合の組織変動に関する実務上の課題 徳住堅治
協約に拘束されない使用者団体メンバー(OTM) 辻村昌明
過半数代表者が締結した労使協定の効力に関する若干の考察 渡邊岳
Ⅶ 労働刑事
労働刑事事件と公訴権濫用論 渡辺直行
どれも大変興味深い論文なのですが、私の関心事項に関わってくるものとしては、上記偽装請負のもの以外には、転勤命令権、整理解雇、職務給、非正規労働者、過半数代表者に関するものが特に興味深いものでした。
さて、安西先生といえば、労働法の世界では知らぬものは居ないでしょうが、その経歴はまさに努力の人といえます。高卒で初級公務員として就職してから10年で法曹になるまでの経歴を書き抜いてみましょう。本書の717ページです。
1958年 香川県立高松商業高校卒、香川労働基準局採用(国家公務員初級)
1960年 国家公務員中級職合格
1962年 中央大学法学部法律学科卒業(通信課程)
1964年 労働基準監督官試験合格、労働省労働基準局へ
1965年 国家公務員試験上級職(甲種・法律)合格
1968年 司法試験第二次試験合格
1969年 労働省退職、司法修習生
爪の垢を煎じて飲ませたい人々が一杯いそうです。
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