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« 組合未加入の非正規労働者の処遇改善も~ 2010 春季生活闘争基本構想 | トップページ | 能開大が「ムダ」であるという思考形式の立脚点 »

2009年11月 5日 (木)

恐らく今後労働政策談義でこの濱口本を踏まえないブログ労働政策論は無視しても良いだろう

その後一々ブログ上で紹介しておりませんが、10月から11月に入っても、拙著『新しい労働社会』に対する書評は絶えることなくいろんな人々から発せられています。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/bookreviewlist.html

ここでは、まず新聞・雑誌等、次にブログその他個人ホームページ、最後にtwitter上でのつぶやきを採録しています。紹介しなかった書評にも、結構面白いものがあります。

さて、本日付の最新の拙著書評はnomurayamansukeさんによる「萬の季節」というブログですが、

http://d.hatena.ne.jp/nomurayamansuke/20091105#1257373435

わたくしの戦略を深いレベルで捉えていただいていて、著者冥利に尽きる書評となっております。

まず冒頭、

>恐らく今後労働政策談義でこの濱口本を踏まえないブログ労働政策論は、無視しても良いだろう。それくらい網羅的かつ画期的な内容になっている。

とお褒めいただいているのですが、その説明が実に深いところに手が届く議論になっているのです。

>著者が恐らくゴールとしているのは、ワーク・ライフバランスの実現である。ところが日本の労働法制は、構造的にこの理想とはほど遠い。最初の制度設計に対して、職務給実現に向けた圧力が再三かけられるが、結局メンバーシップ型が温存されたままオイルショックを迎え、日本企業はメンバーシップ型の柔軟性を活かして乗り切ってしまう。逆に言うと、これは労働者が、かなり過酷な配転や残業を受け入れることで雇用を維持することができる、という経験になってしまった。そして恐らく日本が落ちたこの十五年の経済的停滞に対しても、多くの企業で今尚この「経験」を活かした対応が為されているに違いない。そしてこの対応も限界なのだ。限界だからホワイトカラーエグゼンプションや過激な解雇規制撤廃の議論がボーガスとして出てくるのだろう。

恐らく立ち返るべきなのは1日な24時間しかないという事実と我々の命は一つしかないという単純な事実だ。スーパーマン妄想に浸って命を縮めるには人生は短かすぎる。我々は誰もがヒット一本で数百万を稼ぐ野球選手になれるわけではないのだ。

著者の提案で真っ先に目についたのは、非正規雇用に対する賃金の支払いである。読みが間違いでなければ、これは有体に言えば、高卒初任給は保障しろということだろう。地味に見えるが、これはなかなか冴えた手なのではないか。先ずは非正規雇用に高卒初任給を保障する。これは企業にとっては人件費の膨張に繋がる。人件費を精査しようとすれば正社員の働き方や給与を見直すしかない。この見直しは恐らく職務給実現への圧力として機能するだろう。そしてhamachanのロードマップ上では、同時に労働時間の制限と新しい労働政策にベストマッチする社会保障が模索されることになる(恐らく周到なhamachanはこういったメニューも既にアレンジ済みなのだろう)。そしてハローワークの機能強化といった重要なインフラ整備が整ったところで、解雇規制の緩和が図られるという感じだろうか。つまり非正規雇用に対する賃金が改革の発火点になるのだ。

拙著の全体戦略を、あえて明示しなかったことも含め、かくも明確に摘出してみせる技には舌を巻きます。

ただ、最後のところで、

>hamachanは有名なリフレ派嫌いではあるが、現実の貧困層よりも利子生活者の利益を優遇するかのような日銀の姿勢には批判的であり、日銀と同意見と見られる民主党にも批判的である。

なんだか昔の喧嘩が永遠にまつわりつく感じですが、何回も繰り返すように、わたくしは「リフレ派嫌い」ではありません。特定の「リフレ派」と称する一定の人々の(リフレ政策とは直接関係のない)言動が好きになれないというだけでありましてね。

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コメント

いつも更新を楽しみにさせていただいております。
今回の記事を読んでいて気になるところがありましたので、お尋ねしたいのですが、

>著者の提案で真っ先に目についたのは、非正規雇用に対する賃金の支払いである。読みが間違いでなければ、これは有体に言えば、高卒初任給は保障しろということだろう。地味に見えるが、これはなかなか冴えた手なのではないか。先ずは非正規雇用に高卒初任給を保障する。

と引用され、hamachan氏としてもこの戦略に関してそれほど自身の構想とズレがないと述べられています。

そこでお聞きしたいのですが、この「冴えた一手」に関しましてもこないだコメントが沢山ついた「湯浅誠氏が示した保守と中庸の感覚」で論じられていた、民主主義的プロセスで行なっていくということでよろしいのでしょうか?
それともここは最低賃金制などの「制度」的なものをこないだの言い方では速やかに「強権的(?)」に行なわれるのでしょうか?
hamachan氏の意見をお聞かせ願えればと思います。

的を得ていない質問であれば申し訳ありませんでした。

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