宮本太郎先生の時論2点
最近刊行された総合雑誌に宮本太郎先生の時論が載っていました。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/2009/ex/799.html
「大転換——新政権で何が変わるか、何を変えるか 」という特集の中で、宮本先生は「アクティベーション型保障に舵を切れ――民主党政権と生活保障の転換」という論文を書かれています。
宮本先生自らの言葉を引けば、
>本稿は、民主党政権の生活保障政策の現状についてより踏み込んだ解釈を試み、その上で新たに望まれる展開の方向性について考える。受け身のベーシックインカム型になりつつある生活保障政策を、能動的なアクティベーション型に転換するべきだというのが、本稿の主張である。
そして、例の麻生内閣による緊急人材育成・就職支援基金を、天下り団体だからと凍結を図り、結局一部凍結となった経緯を「職業訓練をめぐるジレンマ」という項で詳述し、
>アクティベーション型の生活保障のためには、現状がいかに問題含みであっても、職業訓練など公共サービスの供給体制を整備し、刷新し、活用していかなければならない。そのためにも、民主党政権はどこかのタイミングで、単なる官僚制批判から、行政の信頼を高める改革へと歩を勧める必要がある。
と喝破されています。
http://www.chuokoron.jp/newest_issue/index.html
こちらも、表紙にドドーーンと舛添前厚労相の顔が載っているように、舛添さんの手記が目玉で、特集は「年金は甦るか」ですが、こちらにも宮本太郎先生が「「ばらまき」を回避し雇用を支えよ─民主党政権と生活保障ビジョン」という論文を書かれています。
内容は上記『世界』とよく似ています。こちらでも上記緊急人材育成・就職支援基金をめぐるドタバタ劇を述べた上で、
>雇用を軸とした生活保障を刷新していくためには、良質な公共サービスが求められる。ところが、「脱官僚」の旗の下で、行政の問題点を叩き、現金給付を追求し続けるならば、良質な公共サービスの実現は遠のくばかりなのである。どこかで行政への信頼醸成へと転換を図らなければ、そもそも将来の社会保障体制の構築ができない。各種の世論調査などでは、人々は生活不安の解消のため税金が使われるならば、負担増もやむなしと考えている。ところが、行政不信が政権自らによって再生産されるならば、政府が安定した財源を確保するために増税を正面から論議するという道もまた閉ざされるのである。
ここまで堂々たる正論を、『世界』と『中央公論』という二大論壇誌が同時に載せるということに、いま求められる政策がどこにあるかがよく示されていると思います。
なお、宮本太郎先生は、来週発売される岩波新書で『生活保障-排除しない社会へ』という本を出される予定です。
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_top/newtop.html
>★宮本太郎さんの『生活保障 排除しない社会へ』
不安定な雇用、機能不全に陥った社会保障。生活の不安を取り除く「生活保障」を再構築するため、新しい社会像を打ち出します。
これも必読書です。
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いつもながら宮本さんのご意見は共感するところが多いですね。ご尊父さまは、あんまり好きじゃなかったんですが、宮本さんはいいですね。脱資本主義まではいかなくても、少なくとも脱金融資本主義の新しい市場経済のモデルを構築しなくちゃいけない時代状況だと思うんですが、そのとき良好な公共サービスの役割は重要です。政府自らが行政への不信ばかり煽っていてはだめだと思うんですが、福井さんみたいな人が事業仕分け人になってるようじゃ先が思いやられます。いづれにしても、宮本さんの今度の岩波新書も楽しみにしています。
投稿: JAMJAM | 2009年11月12日 (木) 07時11分