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湯浅誠氏が示す保守と中庸の感覚

20090608000126101 『東洋経済』最新号は、左の表紙のように「崩れる既得権 膨張する利権」で、これはこれで大変興味深いものですが、ここでは、湯浅誠氏と城繁幸氏の対談がいろんな意味で大変面白く、取り上げたいと思います。

世間的には、湯浅誠氏と言えば、左翼の活動家というイメージで、城繁幸氏と言えば、大企業人事部出身の人事コンサルで、保守的とお考えかも知れませんが、そういう表面的なレベルではなく、人間性のレベルで見ると、なかなか面白い対比が浮かび上がってきます。

>横断的な労働市場を作ることは同感です。それを妨げるものとして、中途採用に消極的な企業や企業別組合、人材育成能力のない派遣業者などの問題があることも理解できます。ただ移るには環境を整えないと無理。第2のセーフティネットもうまくいきません。

>城さんの考えでは諸悪の根源は解雇規制ということになるわけだ。私もフレクシキュリティ政策は評価しますが、それは失業しても生きていけるという状態がなければ無理ですよね。失業しても生きていける、たとえば職業訓練に対する企業のコミットメントなど外部労働市場を作ることに企業も参加してもらわないと、そう問題を立てないと実際に物事は動かなくありませんか。

社会問題がさまざまな側面が複合的に絡み合ったものであり、それゆえにある側面だけに着目して一刀両断する議論には現実性がないということを、理解しているのが「大人」であり、理解できないのが「子ども」であると考えれば、ここでの湯浅誠氏の役回りは、ききわけのない子どもをたしなめる大人のそれに見えます。

城氏の「子ども」っぷりをよく示すのが、普通の労働者のはなしにプロ野球選手を持ち出したがるところですが、湯浅氏は悠揚迫らぬ風情で、

>その考えは危険だと思います。純粋な競争原理が貫徹できるプロスポーツの世界は、社会のごく一部なんですよ。その原理ですべて成り立つとすれば、それこそ何の規制もいらないし、完全な自由放任がベストでしょうが、人生はプロスポーツではない。誰でも最低限の生活は確保されないと困ります。セーフティネットもいらないし、人がばたばた死んでも仕方がないということになりませんか。

「人生はプロスポーツではない」。

こう言われたら、まっとうな大人であれば、「いや、私は何もすべてがプロスポーツと同じだというわけではない。ただ、そういう側面を無視すべきではないといっているんだ」と、一歩退いて、攻め口を変えるところですが、城氏はかたくなに、

>私は仕事も全部プロスポーツと同じだと思っています。

と言い切ってしまうのですね。この辺が、「子ども」っぷりのいいところです。

湯浅氏の言葉に戻ると、

>十分なセーフティネットも横断的労働市場の形成もない現段階では企業から離れたら生活できなくなるんだから、既得権といわれようと、しがみつくに決まっていますよ。

>雇用の問題だけで完結する話でもありません。日本では子どもの教育費や家賃、ローン返済など住宅費の負担が急激な山形カーブを描いている事情を加味しないと。ヨーロッパが職務給でやれるのは教育費や住宅負担が少ないからです。

と、社会問題の多面性をふまえたシニアな議論を展開していくのに対して、城氏は例によって

>教育費ですが、いまの状況では私は大学にはあまり優先順位を感じません。ある程度優秀で熱意がある人しか大学に行く必要はなく、学びたい人は自分で奨学金を取ればいいと思います。

というまことに視野狭窄というか、社会性の欠落したどこぞの国の教育ヒョーロン家かと見まがうような発言です。お前が大学に優先順位を感じるかどうか聞いているんじゃねえだろ、とテレビなら突っ込みが入るところですね。自分の狭い了見を述べている割に、そこに自分自身がどこの大学を出させてもらったのか、という反省が見あたらないところも、その「子ども」性をよく示しています。

結局、この二人の「大人」性と「子ども」性は、次のやりとりで明確に浮き彫りになります。

>城さんの話は「ウルトラC」があるような感じがするんですよ。ここさえやればうまくいくんだ、という。でも私はウルトラCはないと思う。いくつものステップを踏まないと、いきなり欧州型の職務給などにはならないし、横断的労働市場も形成されない。

>私はそれでもウルトラCに賭けてみたい。

世の中の仕組みをどうするかというときに、「ステップを踏むなんてもどかしい」と「ウルトラCに賭ける」のが急進派、革命派であり、「ウルトラCなんかない」から「ステップを踏んでいくしかない」と考えるのが(反動ではない正しい意味での)保守派であり、中庸派であると考えれば、ここで湯浅氏と城氏が代表しているのは、まさしくその人間性レベルにおける対立軸であると言うことができるでしょう。

(追記)

「人間性」という言葉に妙な拒否反応を示す方が多いようです。

政治学でいう政治的性格といった方が良かったかも知れません。

同じ社会主義者といっても、経済活動を一挙に国有化すること(ウルトラC)により一気に至福の天国を実現できると思いこんで、プロレタリア革命を遂行したレーニン型のパーソナリティと、議会制民主主義の中で少しずつ労働者の権利を拡大し、福祉を拡大することによってその理想を実現しようとしたフェビアン主義者たちのパーソナリティとでは、きわめて対照的です。

上の対談でも、湯浅さんは職務給や横断的労働市場やフレクシキュリティに対しても基本的には同感しているので、理想とする社会像については考えられるほどの違いはないと思われます。ただ、湯浅さんは、「悪い奴ら」を殲滅して、一気に「正しい社会」をでっち上げるなんてことはできるはずがない、と考えているわけです。城氏はそれができるし、やるべきだと思っているわけですね。

あえて、どっちが優れているとか劣っているとかいう必要はないでしょうが、私がどっちを好んでいるかは、本ブログのいままでの記述から明らかでしょう。

わたしが興味を惹かれたのは、「活動家一丁上がり」などと言っている左翼活動家の湯浅氏がフェビアン的であり、企業の人事部に対して現実的なコンサルやアドバイスをしている(はずの)城氏がレーニン的であるという、対比の妙が面白かったからです。

東洋経済の中の人も、似たような感想を持たれたようですが。

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コメント

先生こんにちは、早速、買わなければなりません。
明日仕事の帰りにでも買って読んでみます。

 いつも思うのですが、城氏や池田氏もそうなのですけど
自分の固定的な視点しかないのですよね。この世の中に
は様々な人々がいるのに上から視点でしか見ていない。
城氏も池田氏も恵まれた家計・人生を生きてきたのだと
思います。
 だからそのような発言ができるのだと思っています。

>教育費ですが、いまの状況では私は大学にはあまり
>優先順位を感じません。ある程度優秀で熱意がある
>人しか大学に行く必要はなく、学びたい人は自分で
>奨学金を取ればいいと思います。
いま、奨学金といっても名ばかりで旧育英会でも実質借金です。
その奨学金もせいぜい授業料と教科書代にしかなりません。
また、たとえば看護師の世界ではすでに准看護師でとどまって
いてはだめで、看護師さらには大学を卒業した看護師がもとめら
れるようになってきています。介護も同じです。介護ヘルパーの
資格は過渡的な資格になりつつあり、大卒の介護福祉士が、
求められ始めました。大学の教育水準がどのような仕事でも
求められてきたと実感しています。
 今後、中卒で社会にでるという姿は完全になくなると思い
ます。最低でも高校卒。その高校でも社会にすぐ出れるのは
専門を学んだ高校を卒業した人で普通科を出た方は専門知識
を得るために専門学校・大学を出る必要がでる社会になると
思います。
 城氏の発言をみて進学をしなくてもいいと思う生徒がいたと
したらその生徒は職業人として生きていく40年で本当に大事
な時期を失うことになると思います。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51303955.html
この池田氏のブログも実際、仕事と家を失った人が現実に
いてそれにどう対処するかが問題で政府は確かに対応が
遅かったのですが対処を行なっている。
 湯浅氏の行動がなければこの問題はさらに対応が
遅くなっていたでしょう。(派遣村ではハロワ・監督署の
労働組合がかなり大きな役割を担っていたそうです。)

投稿: 地方に住む人 | 2009年11月 3日 (火) 17時33分

hamachanさんのおすすめで東洋経済買いました。

城氏はなぜ「非正社員を正社員として迎えるつもりはない」大企業を批判しないんでしょうねぇ・・・

投稿: NSR初心者 | 2009年11月 3日 (火) 22時18分

向こう側(城)からみると
湯浅さんは既得権益に利用されてるだけにしか見えないでしょう

上の世代の逃げ切りを幇助してるように見える

投稿: どらどら | 2009年11月 4日 (水) 00時05分

一夜にしてすごいはてなブックマークですね。
きっと今頃ネットもめごと好きな人たちがよそで「御注進」しているんじゃないでしょうか。

>現段階では企業から離れたら生活できなくなるんだから、既得権といわれようと、しがみつくに決まっていますよ。

この辺の洞察/想像力がいいですね。
経済学用語で言えばインセンティブというんでしょうか。

投稿: L | 2009年11月 4日 (水) 07時19分

>湯浅さんは既得権益に利用されてるだけにしか見えないでしょう
もう昔々の話ですが、第1組合、第2組合と組合同士が仲違えの内輪揉めをし、結局自身の処遇改善は遅々として進まないなんて歴史がありましが、城氏や池田氏の言い分はさながらその歴史を繰り返すための『煽り』にしか感じません。
さながら弱い物同士の罵り合いを助長し、それを上から見て楽しんでいる最悪の手合いだと。
キツイ事言いますが、もうウルトラCしかないとか希望は戦争なんてドメスティックな破壊的方法でしか自身が救われないなんて言ってる人、極端な例ではここで暴れていた読者もその一人でしょうが、そんな事して自身が救われるなんて『確証』を見出しているのかはなはだしく疑問なんですが。
確かに何かしら不満や納得いかない境遇にある人達がいるのはわかりますし、私もその一人ですがだからと言って他人の何かを搾取しそれを我が物にするのが正義だなんていうのは人としてどうかと思います。極論ですが古の魔女狩りはたまた今で言えば宗教的戒めを厳守させよとするタリバンや原理主義史観と大差無い。
人としての幸福を得たいがために、カンダタの如く同じ望みをもって蜘蛛の糸を辿ってきた同じ境遇の人間を蹴落とすような真似を是とする発想が横行すればどうなるか?を一度よく頭を冷やして考えるべきでしょう。幸せになりたいがため、人の道はずれる所業に身を委ねてどうすんの?と。

投稿: ふみたけ | 2009年11月 4日 (水) 11時06分

>極端な例ではここで暴れていた読者もその一人でしょうが、そんな事して自身が救われるなんて『確証』を見出しているのかはなはだしく疑問なんですが。

おいおい経済学的論議にのっとって反証してくれよ。なぜ解雇規制の緩和がいけないのか?自分オフ勉強を棚に上げて妄言を吐く輩が多すぎる。

投稿: 山田宏哉 | 2009年11月 4日 (水) 18時52分

専門家でも何でもありませんが、OECDも指摘している強い解雇規制(中小、外資では有名無実化しているようですが)というのは正社員にのみ与えられたものですよね?現実として非正規に関してはたいした理由もなく解雇されているわけです。

様々な議論があるのは分かりますが、ただ一点、社会正義、公平性という一番重要な視点から考えた場合、それを維持してダブルスタンダードを認めることに問題はないのでしょうか。雇用は派生需要ですから、整理解雇が行われるのは仕方のないことです。だったら、その基準はみな同じにすべきだというのが筋だと思うのですが。

その意味で、私は城繁幸氏の主張に与します。

投稿: jonias | 2009年11月 4日 (水) 19時58分

はてぶで、伊藤元重氏の意見が城氏に近いというので調べてみたのですが、


"日本の雇用制度は重要な転換点に来ている。企業だけに雇用責任を押しつけるのではなく、政府や社会が雇用を作る仕組みに転換する必要がある。北欧やオランダなどで行われているように、企業にもっと解雇の自由を認めると同時に、職を失った人の転職と所得保証を徹底的に政府が面倒を見る制度を検討する必要がある。"
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090307/biz0903070258002-n1.htm

セーフティーネットの充実を前提にしているようなので、湯浅氏の主張と重なる面もあると思います

投稿: bn2islander | 2009年11月 4日 (水) 23時02分

正規と非正規の身分差別を速やかに撤廃するには、解雇規制を緩和する以外に方法があるんですか?
正規の労働者は非正規の労働者がまず解雇されることによって自分の長期雇用が守られているという面があります。正規と非正規の労働者に利害対立がある状況からすれば「労働者全体の利益代表」を成立させる方こそウルトラCに見えますが。
雇用調整が必要なら自由経済の建前に立って公平にやるべきで、若者のみにしわ寄せするのは不公平でしょう。そういう若者の立場を「子ども」だとか「人間性が低い」だとか言って上から目線の人格非難をすることには違和感を感じます。
中高年の労働者にも生活があるでしょうが、若者だって家庭を持つとか将来の夢とかあるでしょう。
厳しくても自由経済の建前に立って生産性を基準に雇用調整し、OECDでも下位の労働生産性を上げることが、少子高齢化社会において社会保障を維持するために必要なことです(もちろんセーフティネットも必要です)。
労働生産性を上げることができなければ今後どうやって社会保障を維持するんですか?

投稿: S | 2009年11月 4日 (水) 23時49分

労働法がらみはまことしやかなデマが広がりやすいようですが,非正規労働者に対する解雇もまた規制されています。契約期間の定めのある労働者に対する期間満了前の解雇には「やむを得ない事由」があることが必要です。

現在の労働法制に異を唱える前に,現在の労働法制がどのようなものであるのかを専門書を読み理解することから始めた方が,デマに引っかからずにすむように思うのですが。

投稿: 小倉秀夫 | 2009年11月 5日 (木) 00時42分

OECDのゴールデントライアングルの話は、デンマークの
住宅政策とセットで考える必要がありますね。
福祉レジーム論を展開したイエスタ・エスピン=アンデルセンが
デンマーク出身であるのもなるほど、という感じです。
現在の「解雇規制緩和万能論」にはこの「福祉レジーム」という
観点がすっぽり抜け落ちている。「解雇規制強化論」も
その点は同様なので、両者は「にせの対立」だと言えるでしょう。

住宅政策におけるデュアリズムからユニタリズムへの転換には
時間がかかります。デンマークやスウェーデンがどれだけの
時間をかけたかを考えてみればいい。別トピックの話題ですが
「時間がかかるものはかかる」のであって、それに対して
「それでは間に合わない」と言うのは「子どもの駄々」でしかなく、
また「10年かかるなら3年に圧縮すればいい」というのは
「30年かかる住宅政策」ならば「10年」かかってよい、ということになります。

濱口さんが著書で述べられている以上に「時間のかかる」条件整備が
必要であることが、「解雇規制緩和万能論」(解雇規制緩和で労働生産性が上がる、というのも実証されているとは言い難いですしね)を持ち出す人々には、理解されていません。
いわゆるロスジェネに対し緊急避難的な包摂の必要はあるでしょうが、
それと根本的なという意味での radical な social transition とは
別に考える必要がある。社会政策においては「ラディカル」であることは
「性急」であることとはまったく別のことです。
これもまた別トピの話題ですが「ソ連やナチ」は「性急」ではあっても、
「ラディカル」ではなかったことは、歴史が示す通りです。
城さんの問題点は「性急さの過剰とラディカルさの不足」でしょう。

投稿: haruto | 2009年11月 5日 (木) 11時19分

う~ん。

いわゆる解雇規制についての一番の問題は、いわゆる整理解雇の4要件ですよね?。非正規の解雇、新規採用の抑制を行った後でなければ、正規は首にできないという。実効性がどれだけあるのかという議論は置くとして、そうした仕組みが厳然と存在するわけです。OECDの言う正規の過剰保護というのもこの部分だと思います。

で、それを早急に改めることに危険が伴うのはわかります。しかし、それは現在、安定した職につけている人からの視点であって、非正規の人や新卒の人の立場はほとんど考慮されていないわけです。特にこれから社会に出ようとする、何も既得権を持たない若者たちが就職で苦しむのは理不尽です。ならば、公平性という観点から、それを一刻も早く是正すべきだという方に理があると考えます。

自分も就職氷河期で苦労した一人なので、考え方としては城さんに近いです。

投稿: pingu | 2009年11月 5日 (木) 12時21分

追記

現在、民主党政権で負の所得税が検討されています。これは社会的セーフティネットとして機能するものですから、その導入とともに規制を緩和するというのが正しいかと思うのですが、濱口先生はいかがお考えですか?

投稿: pingu | 2009年11月 5日 (木) 12時27分

わたくしのモットーは、認識論はラディカル(根底的)に、実践論はリアリスティックに、ということですが、
ある種の人々にとっては、認識論はスーパーフィッシャル(表層的)に、実践論は性急に、というのがモットーなのかも知れません。
繰り返しますが、これは善悪を論じているのではなく、政治的パーソナリティの類型に過ぎません。そういうタイプの人の方が、大衆社会の選挙では票を集めそうではあります。ただ、わたくしにも好き嫌いはあります。

投稿: hamachan | 2009年11月 5日 (木) 13時58分

わざわざエントリを立てるほどのものでもないので、こちらにコメントしておきます。

池田信夫氏のこの言葉にはあきれた:

http://twitter.com/ikedanob/status/5520177946

>戦前の貧困を「一挙に解決」しようとして青年将校が出てきたわけです。今の日本でそういう若者が出てくるとも思えないけど、勝間氏のように「一挙解決願望」をあおるアジテーターが出てくるのは、危険な兆候ですね。

はあ?

レーニン式に「一挙解決」(ウルトラC)を絶叫しているのはどっちだよ。「ノンワーキングリッチをぶっ潰せ」などと疑似階級的憎悪をあおりながらね。

勝間和代さんについてはいろいろと意見もありますが、今回の「まずデフレを止めよ」は、「ぶっ壊せ」「ぶっ殺せ」型の最終的解決指向型の議論ではなく、「保守と中庸の感覚」をもった議論として、菅副首相へのレクとしては適切であったと思われます。

なんにせよ、「「一挙解決願望」をあおるアジテーター」である池田信夫氏本人が、こういう台詞をてらいもなく言えるということ自体が、なかなかシュールな映像と評せましょう。

投稿: hamachan | 2009年11月 8日 (日) 10時37分

「解雇規制緩和万能論」を支持する「急進派」の方々、
とくに男性、は年齢、学歴を問わず、「自己対象化能力」が
欠如していて、その結果「拙劣なコミュニケーションスキル」を
改善する機会もなく、それぞれに不遇をかこっていらっしゃるように見え、
それはここで扱われているような労働問題とは別の、精神分析も含めた
人文系の学問や認知科学系の学問で扱うべき社会変化であるように思います。
池田氏のふるまいは「個人のキャラ」というよりは「集団的かつ
社会的なパーソナリティ」の問題でしょう。

確かにこれは労働問題とまったく無関係ではなく、別トピックの「ストーカー」を
めぐるコメントで、それもまた労働問題ではないか、というご意見も
あったようですが、労働法制とは別にして専門家間で役割分担して
対応を考えるほうがいいんじゃないでしょうか。

投稿: haruto | 2009年11月 8日 (日) 14時06分

もういちど、まったく同じレベルの話ですが、

池田信夫氏のこの言葉にはまたまたあきれた:

http://twitter.com/ikedanob/status/5526027295

>「一挙に解決」の誘惑は、マルクス主義からリフレ派に至るまで絶えないが、これは複雑な問題を単純な原因で説明しようとする「陰謀史観」と表裏一体。

こういう言葉が全部自分にブーメランのごとく跳ね返ってくるということが理解できないのか、判らないふりをしているだけなのか、つまり莫迦なのか狡猾なのかはとりあえず括弧に入れておきますが・・・。

>>「一挙に解決」(ウルトラC)の誘惑は、「正社員を解雇自由にすればすべてがうまくいく」という教義に至るまで絶えないが、これは複雑な問題を単純な原因で説明しようとする「陰謀史観」と表裏一体。

という自己認識ができない人なんだろうなあ、たぶん。

投稿: hamachan | 2009年11月 9日 (月) 22時56分

言説のブーメラン効果は「解雇自由万能論」を唱えている
(といったほうが正確でしょう)男性の言説の特徴で、それは、

http://www.iff.co.jp/book/adf/a19994c/445.html

を思い出させるものですね。上記の記述の理解のために
参考になるのは、

http://www21.ocn.ne.jp/~sfreud/klein/kyogo/kyogo.htm

「自己認識ができない人」「自己対象化能力の欠如している人」は
大学の推薦入試やAO入試でもそうですが、まず面接で落とされます。
一度就職できても、今回の池田さんのようなふるまいを続けていれば、
同僚や上司を非難するばかりで自らの欠点の改善はできないと
いうことが起こると考えられ、人間関係が原因で離職、再就職できずに
アマルティア・センのいう「絶対的貧困」に陥る。ケイパビリティの充実と実現の妨げになりますから。

「言論統制」が容易なブログというメディアはある種の社会的パーソナリティの
持ち主にとっては「病膏肓に入る」ことを助長するものなのでしょうが、
twitter はさらにそれを激化させる、ということのようです。

投稿: haruto | 2009年11月10日 (火) 11時06分

規制緩和をして解雇の原則自由化を行えば本当に派遣社員と正社員の待遇は均等化するのでしょうか?確かに「論理的」にはそうでしょうが、そんなに単純なものなのでしょうか?ひとつに株主主権が確立されているのかという問題、そしてそのような雇用形態が生産性に積極的に寄与するのかどうかという問題があると思います。
そういえば以前「成果主義」賃金なんてものもありましたね。あの議論は何だったのでしょうか?結局定着しなかったのではないでしょうか?私は心情的には解雇自由化に賛成です。しかし現状を考えるにそれが必ずしも均等待遇に結びつくとは思えないので、もし均等待遇を望むならば何か別の方法を考えた方がいいという考えです。多分日本社会はとても捩れていて一般的合理性ではなかなか単純に解決出来ない構造と原因があるのだと思います。それを丁寧に解説したからこそhamachanの本が売れているのだとは思いますが。
一方私はhamachanの意見に対しても「ステークホルダーって言っても身内の談合に終始するんじゃないの?いじめとかひどくなるだけじゃん?」と疑念を持っています(元左翼の歪み?)。また緩い身分社会的な雇用構造が残存するような気もします。なので池田氏や城氏の議論はとても理解しやすいです。
ですが日本社会の現状を踏まえるならば、均等待遇と流動化の促進のために、まずはhamachanが掲げる「産業民主主義」や「ステークホルダー」などを実際に一歩進めて、その上で上記の問題を改善することが結果的には有効な気がします。今必要なのは清濁合わせて飲み込む判断とそれを可能にするコミュニケーションなのでしょう。まずは自分からhamachanの意見の清濁を飲み込もうと思います。
苦手な味(青汁のような?)ですが、無理して我慢します。次の一歩に進むために今は「大人」になる時期なのでしょう。

投稿: 素人 | 2009年11月11日 (水) 20時44分

上で小倉さんが労働法制に対する無知を指摘していますが、経済学的にも「雇用の流動化→生産性向上」というのは「風が吹けば桶屋が儲かる」レベルのお話で、前提条件も風と桶屋のあいだのお話も抜けています。

効率市場仮説にもとづいて総供給だけを考えてもダメ、ということで、別トピックのコメント欄で「子どもたちのためにもウルトラCとしての解雇自由を」なんてお話をしている城さんサポーターがいますが、そういった「与太話」が出るのも、総需要について何も考えていないからでしょう。そして「資産形成途中にある親が経済的にさらなるリスクを抱えることで、教育機会を奪われる可能性」を一番リアルに感じているのは子どもたちです。「子どもたちのため」と称して「中高年ノンワーキングリッチを一掃すること」と、
「生活給」をあてにしない経済社会システムを構築することとは、まったく別のことです。

投稿: haruto | 2009年11月11日 (水) 22時27分

はてな匿名ダイアリーというところに、こういう記述があったのを発見。

http://komachi.anond.hatelabo.jp/20091104020614

>池田信夫の表現も相変わらず無茶苦茶だけど、hamachan先生も小倉先生もちょっと素直すぎやしないか?東大院から反貧困に走るってただ人がいいだけでそうなるはずがなかろうし、実践派と言えば聞こえはいいけど、ようするに活動家でしょ。左翼のあのあたり人たちの口八丁ぶりを素直に鵜呑みしちゃいかんでしょうに。

>小倉先生は弁護士だから置いとくとして、なんで専門家のhamachan先生までコロッと行かれるのか、分からん。


いやあ、別に「コロッ」とも「ゴロッ」ともいかれていませんよ。

役に立つから褒めているだけ。

役に立たなければ褒めません。

左翼運動していたからといって食わず嫌いしていたのでは、使える人材を無駄にするだけだし、下手をすると敵に回して痛い目に遭います。そういう戦略的発想ができない「素直」なイデオロギストが一番役に立たない。

ちなみに、EUでは、欧州反貧困ネットワークが欧州委員会から補助金をもらって貧困対策の前線で活動しています。そういう芸当ができないとすると、できない方に問題がある。

投稿: hamachan | 2009年11月29日 (日) 13時32分

>教育費ですが、いまの状況では私は大学にはあまり優先順位を感じません。

ここだけは城氏に賛同。「子供手当て」というが自分に言わせればダメ親手当て。
子供をダシにその親がフトコロに入れてしまおうってのだからモラルハザードだ。
教育に関しては学校に通わずとも通信教育などで資格習得は可能なはず。
現に多くの私大文系や専門学校は定員割れを起こしており、城氏の指摘どおり、
必ずしも高い学費を払って高等教育させる必要はないものと自分もそう考える。
但し幼少時代にストリートチルドレンはいけないので、初等教育や児童養護施設は不可欠。

>誰でも最低限の生活は確保されないと困ります

最低賃上げは失業増大(池田信夫)であれば、生活保護の適用範囲を大幅に拡大する。
支給額は少なめに適用範囲は広く、こうすればモラルハザードにはならない。
(最低賃金千円以下で働けとは言わない、けれども収入UPしたいなら働いて稼げ)
そして住宅費の負担を軽減するために公営住宅の大増設を提言する。
貯金・不動産・帰る実家・社会保険の4つとも無い人から順に、あとは抽選で。

皇居は潰して、その跡地に公営住宅を大建設!
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/seiji/1255168712/

>私は仕事も全部プロスポーツと同じだと思っています。

生活かかってるのにスポーツてそりゃないだろ、おい!

投稿: 俺 | 2010年2月10日 (水) 21時48分

http://jyoshige.livedoor.biz/archives/5018564.html

”経団連、ようやく公式に「長期雇用のメリットはないです」と認める”

城繁之氏が自説を強化する発言をみつけてよろこんでおられるようです

小池先生もさぞや

投稿: 名無し | 2011年12月28日 (水) 08時51分

城さんと湯浅さんの差は、急進的か漸進的か、あるいは「コドモ」か「オトナ」かという違いよりも、社会全体をマクロに見ているか、それともミクロな個別事例から見ているかの差じゃないかと思いますね。
 確かにミクロ的/個別的に見れば、住宅ローンや教育費を抱えていて解雇されると困る中高年というのもいるでしょう。でも、そもそも自分の貢献にふさわしい給料をもらっているならば、解雇を心配する必要などないわけです。解雇を心配するということは、自分の貢献以上の給料をもらっている人(それはその分他人を犠牲にしているわけですが)ですよ。マクロ的に見れば、そういう人には会社を辞めてもらい、もっと生産性の高い人に働いてもらった方が良い。
 自分の貢献以上の給料をもらうを前提にして多額の借金をした人が存在しているのは事実でしょうが、そんな人まで会社が保護する責任はないと思いますね。それは自己責任でなんとかするべきでしょう。

投稿: CramClam | 2011年12月28日 (水) 13時17分

>自分の貢献以上の給料をもらう

歩合制でもない限りそんなこと正確に判定できるんでしょうか? スタッフ部門はどうします?働けば働くほど金がかかりますよ。

投稿: Executor | 2011年12月29日 (木) 13時28分

城繁幸氏については、橋口昌治さんのこういうつぶやきが的確でしょう。


http://twitter.com/#!/rodokoyo/status/152031608797532160

>初めまして。城さんは成果主義賃金と職務給を混同する傾向があります。


http://twitter.com/#!/rodokoyo/status/152042022897848320

>城さんの記事を読む時は用心深さが必要であり、経団連の記事にしても定期昇給の見直し、仕事・役割等級の設定が長期雇用にメリットなしという話に飛躍しています。例えばベテランの非正規労働者を大量解雇した郵便局が大混乱に陥っている話と併せて考える必要があると思います。

投稿: hamachan | 2011年12月29日 (木) 23時53分

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少し前の東洋経済で表紙にでかでかと既得権という文字のやつがあって、正社員は既得権だと書いてないかと期待して見てみたら湯浅誠と城繁幸の討論という形で出ていた。既得権とは言い切れないので外部の人間に語らせておけという感じか?前にもどこかで読んだけど湯浅誠は中高年社員の賃下げには消極的で、家のローンとか教育費が云々とか言い出す。それって企業が新卒採用を減らしたり止めた時と全く同じ論理。こっちは学校を出て内定が一つも無いまま裸で放り出されたのに。もっとも城繁幸がすべて正しいとも思わない。企業が正社員を雇わな... [続きを読む]

受信: 2009年11月16日 (月) 04時09分

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