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2009年11月 5日 (木)

日本労働弁護団の有期労働立法提言

日本労働弁護団が、10月28日付で「有期労働契約法制立法提言」を公表しています。

厚労省の有期契約研究会が佳境に入り、先日わたくしも呼ばれたように日本経団連も対応をいろいろと考えてきている中で、一つのボールが投げ込まれたというところでしょうか。

http://homepage1.nifty.com/rouben/teigen09/gen091028c.html

まず、もっとも特徴的なのはかなり厳格な入口規制です。

>第1 有期労働契約の範囲

使用者は、次の各号に定める正当な理由がなければ、期間の定めのある労働契約(以下、「有期労働契約」という)を締結することはできない。

  ① 休業又は欠勤する労働者に代替する労働者を雇い入れる場合 (*1) 

  ② 業務の性質上、臨時的又は一時的な業務に対応するために、労働者を雇い入れる場合 (*2) 

  ③ 一定の期間内に完了することが予定されている事業に使用するために労働者を雇い入れる場合 (*3) 

期間は更新と一体の話ですから、両者をまとめてみると、

>第2 契約期間

1 有期労働契約は、前条各号に定める正当な理由がある場合に必要とされる合理的期間を超えて締結してはならない。 (*4) 

2 前項の期間は、3年を上限とする。

>第7 有期労働契約の更新

1 有期労働契約は、1回に限り更新することができる (*14)。但し労働契約の全期間が3年を超えることはできない。

と、更新してもしなくても上限は3年、更新回数は1回までという規制です。

更新についてはさらに、

>2 有期労働契約の更新には正当な理由がなければならない。

3 使用者は、有期労働契約の更新に際し、労働者に対して、第3条各号に定める事項を書面により明示しなければならない。

4 使用者は有期労働契約の期間満了後、契約期間の3分の1の期間が経過しない限り、同一業務に労働者を受け入れることはできない。(*15) 

5 前4項の定めに反する有期労働契約は、期間の定めなく締結されたものとみなす。有期労働契約期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事したときも同様とする。 (*16) 

6 労働者が有期労働契約の更新の申込を行い、使用者の更新拒絶に合理的な理由があると認められない場合は、従前と同一条件(期間は1項の範囲内)で有期労働契約の更新があったものとみなす。 (*17) 

と、非常に厳しく規制されます。ちょっと戻りますが、更新の場合に限らず、一般的に、

>第4 前3条に違反する有期労働契約の効果 (*9)

前3条の定めに反する有期労働契約が締結された場合は、期間の定めのない労働契約が締結されたものとみなす。 (*10)

という規定もあります。

一つの考え方として、有期契約はよほどの場合にのみ認められる例外措置であって、通常の場合は必ず無期契約であるべきという立場に立脚するかどうか、ですが、その場合、無期契約における解雇規制のあり方を同時に議論する必要が出てくるでしょう。解雇自由論ではもちろんなく、解雇規制の平準化という問題です。

それから、次の期間満了前の解雇と退職の扱いの格差は、一般的な労使の力関係で格差で説明可能であるかどうかはかなり疑問です。

>第5 期間満了前の解雇

使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。 (*11) 

第6 期間満了前の退職

1 労働者は、合理的な理由があるときは、期間の定めにかかわらず、2週間以上の予告期間を定めて、いつでも退職の申し出をすることができる。 (*12) 

2 前項の予告期間の経過により有期労働契約は終了する。前項による退職の申し出に予告期間の定めがないときは、その申し出の後2週間の経過により有期労働契約は終了する。 (*13) 

現実の有期労働者のかなりの部分は、実際には恒常的にある仕事であるのに契約は有期で雇われているのが実情でしょうから、無期契約の場合と同じように労使の条件に格差を付けることは実態論的に正当化される面があると思いますが、この提言のように有期契約が極めて限定的になった場合においては、そのような例外的な条件下の有期契約においてかかる格差を正当化する理由はなくなるように思われます。

本当に上記第1に示された3つの場合にしか有期契約を締結できないのであれば、それらの場合には期間満了前の退職に対する拘束性があってもいいのではないでしょうか。

差別禁止については、

>第8 差別禁止

1 使用者は、有期労働契約を締結している労働者(以下、「有期契約労働者」という)につき、比較可能な条件にある期間の定めのない契約の労働者と均等な労働条件をもって処遇しなければならない。但し、異なる労働条件が客観的合理的理由による場合は、この限りではない。 (*18) 

2 前項の労働条件には、賃金、休日・休暇、福利厚生その他異なる扱いが客観的に正当化されない労働条件がすべて含まれる。 (*19) 

拙著でも述べたように、正社員内部でも職務給的な意味における同一労働同一賃金原則が成り立っていない日本社会において、何を「均等」というのかという大きな問題があるわけで、この提言もそこは語っていません。

わたしは、拙著で示したような「期間比例原則」が、とりあえず使えるものさしだろうと思っています。

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